日経テクノロジーonline SPECIAL

日本アイ・ディー・ティー

機器同士、機器中のデバイスの間をいかにつなぐかは、ITシステムを確実かつ高速に動かす上で鍵となる部分だ。電子機器中のクロック系のデバイスやPCI Express(PCIe)、RapidIOなどインターコネクト、メモリーインターフェースなど、つなぐ技術で圧倒的な強さを誇るのが米Integrated Device Technology, Inc.(IDT)である。日本アイ・ディー・ティー社長の迫間幸介氏に注力事業の状況とこれから開拓していく応用について聞いた。

――事業状況をお聞かせください。

迫間 2014年第3四半期から2016年第2四半期まで、売上高は8四半期連続で伸びています。地域別に見ると、日本を除いたアジア太平洋地域での売り上げが78%と大部分を占め、特に韓国でのメモリーインターフェース製品の売り上げが好調です。DDR4向けでは、世界市場で高いシェアを維持しています。

 応用別に見ると、データセンターとハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)が43%、4G基地局など通信インフラが42%を占めています。いずれも安定感のある市場であり、これが継続的に成長できている要因です。民生分野は15%にすぎないのですが、ワイヤレス給電のような将来が楽しみな応用が出てきました。

――2015年には、ドイツのZMDI社を買収しました。

迫間 ZMDI社は、アナログ、ミックスドシグナルの技術に強いことで定評があり、自動車用半導体のメーカーとしても有名です。加えて、大出力のデジタルパワー制御技術の分野でも高度な技術と製品を持っています。同社を買収したことで、IDTは、低出力から高出力までカバーするパワー制御製品を提供できるようになりました。

注力する分野と製品の軸足を移す

――現在、どのような技術・製品に注力しているのですか。

迫間 モバイル機器や通信インフラ、データセンターなどでやり取りするデータの量が急増しています。IDTは、こうした応用市場のトレンドを最大限に生かす戦略の下、この2年でフォーカスする分野や製品を大きく変えました。直近の好業績は、その成果です。SRAMやFIFOなど過去のIDTを支えた製品もキッチリと供給しますが、タイミング、PCI Express(PCIe)などシリアル・インターコネクト、メモリーインターフェース、パワー制御、RFなどに関連した製品に軸足を移しています。

――データセンターやHPC向け市場での注力点をお聞かせください。

迫間 メモリーインターフェースやPCIeなどインターコネクト、タイミング、パワー制御などに向けた製品などを提供しています。IDTは、プロセッサーやメモリーなど、コンピューターの主要機能を担う製品は扱いません。それら主要チップをつなぐ部分に使うチップに注力します。

 特にDDR4対応製品では、スピード、消費電力、密度の面で他社製品を圧倒。さらに、パワー制御でも、システム構成に応じて最適な電源回路を柔軟に作り上げる「Distributed Power Unit(DPU)」と呼ぶ強力な製品を提供しています。

 こうした技術の強みが評価され、2015年には、日本でもSSD関連の応用で大きな成果を得ることができました。PCIeのリピーターやスイッチなどは、産業機器やプリンターなどを作る日本のお客様にも多く使われています。

――通信インフラはいかがですか。

迫間 メッシュ型ネットワークを構築して、リアルタイム性の高いシステムを構築できるSerial RapidIO(SRIO)に向けたスイッチやブリッジが、世界中の4G基地局に使われています。これはIDTだけが提供できる製品です。また、無線インフラのRF部に使うアッテネータでは、従来のGaAsベースではなく、コスト、信頼性、サイズで勝るSiベースのチップを供給しています。

 この他、IEEE1588に準拠したタイミング製品も提供しています。機器設計の中ではクロック系の設計は後回しになり、対症療法的にクロック系の部品を選択する場合がほとんどです。IDTは、クロックに関連したあらゆるニーズに応える製品を用意しています。他社には絶対負けません。クロックで課題を抱えたときには、まずIDTに声を掛けていただければと思います。

電子業界以外の企業にも技術提案

――ワイヤレス給電では、どのような強みを持っているのでしょうか。

迫間 ワイヤレス給電には、電磁誘導方式と磁界共鳴方式という2つの方式がありますが、IDTはその両方の技術を保有しています。電磁誘導方式の規格のひとつ「Qi」と磁界共鳴方式の規格「Rezence」の両方に対応するデュアルモード、さらに電磁誘導方式のもう一つの規格「PMA」にも対応したトリプルモードの製品を提供しています。このうちデュアルモードの製品は、既に海外市場向けの多くの携帯電話に搭載されています。海外のカフェには、ワイヤレス給電での充電機能を備えたテーブルを置くところが増えており、かなり普及してきました。日本での本格普及はこれからですが、国内携帯電話メーカーへの販売では手応えを感じています。

 ワイヤレス給電の応用は、携帯電話だけにとどまりません。医療系の機器や介護用機器など、充電用電極がぬれる可能性がある応用で、安全性確保の観点から注目されています。民生分野では、さまざまな携帯機器、おもちゃや家具などにも搭載されるでしょう。既に家具販売店のIKEAが、私たちの製品を組み込んだワイヤレス充電器を商品化しています。

――電子業界以外にも広がるのですね。

迫間 私たちは、電子機器メーカー以外の企業が簡単にワイヤレス給電機能を持った製品を作れるようにリファレンスキットを用意し、提案型の営業を展開しています。さらに、ワイヤレス給電に少しでも興味がある企業が、まずIDTに相談していただけるような存在になりたいと考えています。

 IDTは、機器中のデバイスが、そしてシステムを構成する機器が、お互いに協調しながら動作するために欠かせない、つなぐ技術に特化した半導体メーカーです。つなぐことに関して、課題を抱えたときには、まずIDTに相談していただきたいと思っています。

図 IDTが提供するワイヤレス給電のリファレンスキット
[画像のクリックで拡大表示]
お問い合わせ
  • 日本アイ・ディー・ティー合同会社
    日本アイ・ディー・ティー合同会社

    〒105-0012 東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル6階

    TEL:03-6453-3010

    URL:http://www.IDT.co.jp/