日経テクノロジーonline SPECIAL

イマジネーションテクノロジーズ

MIPSプロセッサー、マルチメディア・グラフィックスIPコア「PowerVR」とコネクティビティIPコア「Ensigma」など多彩な展開をする英イマジネーションテクノロジーズ。デジタル家電やモバイル機器といった従来のアプリケーションに加えて、IoT(Internet of Things)やADAS(先進運転支援システム)などの新しい分野でも存在感を増している。日本でも多くの採用実績を誇る同社の最新の取り組みを、最高経営責任者(CEO)を務めるHossein Yassaie氏に聞いた。

――2015年を振り返ってください。

ヤサイ 当社は、「PowerVR」ブランドのマルチメディア・グラフィックス事業、2013年に買収したMIPSアーキテクチャのプロセッサー事業、および、「Ensigma」ブランドのコネクティビティー事業をビジネスの大きな柱としています。

 2015年も2014年に引き続き、モバイル分野を筆頭にエレクトロニクス市場全体が成長したこともあって、いずれのビジネスも順調に推移。2015年だけで前年を上回る100件以上の新たなライセンス契約を獲得できました。そのうち40%を占めるのがMIPSプロセッサーのライセンスです。Ensigmaブランドのコネクティビティー事業も高い成長が続いています。

――2016年の注力分野は。

ヤサイ アプリケーション分野としてはIoTに注力します。2015年6月に米Amazon社が人工知能スピーカー「Echo」を発表しました。この製品のようにディスプレイもキーボードも持たずに音声や画像でユーザーとつながるデバイスが、今後は数多く登場してくるでしょう。身近なモノがインターネットにつながる時代がいよいよやってきます。

 実際に患者の生体情報を24時間モニタリングする使い捨てパッチの開発案件が、ある企業との間で進んでいます。個人向けから業務向けへと応用範囲が拡大すると見込んでいます。

 IoTでは、当社が持つ低消費電力のMIPSプロセッサー技術やEnsigmaのワイヤレスコネクティビティーの価値が生かせます。その強みを今後は訴求する考えです。

 もう1つの注力分野がSoCのセキュリティです。現在、さまざまなプロセッサーやOSがアプリケーションを保護する仕組みを実装しています。しかし、多くはプロセッサーだけを対象に、安全な領域と安全ではない領域を分けた二元的な管理でしかありません。例えば、同じ領域に決済とゲームのアプリケーションが同居できてしまうわけです。

 当社が開発した「OmniShield」は、SoCを構成するプロセッサー、グラフィックス、コネクティビティーのすべてを対象に、真にセキュアーなマルチドメイン環境を実現する技術です。既に当社の一部のソリューションには実装済みで、今後はサポート範囲を拡大するとともに、他のベンダーにも呼びかけながらエコシステムの構築を進めます。

MIPSコアを全方位で展開

――MIPSプロセッサー事業の取り組みについて教えてください。

ヤサイ MIPSプロセッサーがターゲットとしているネットワークやデジタルホームの分野は引き続き堅調です。これらに加えて、IoT、ウエアラブル、ADASといった新しい分野での引き合いが増えています。例えば、ADASであれば、イスラエルに開発拠点を持つオランダのMobileye社が「EyeQ」というADAS用画像認識ソリューションにMIPSプロセッサーを採用し、世界中の自動車メーカーに供給しています。

 MIPSコアは最先端の技術開発にも貢献します。MIMD(Multiple Instruction stream, Multiple Data stream)プロセッサーを開発するベンチャー企業のPEZY Computing社が、2016年末の完成を目指して開発を進めている次世代プロセッサー「PEZY-SC2」に「MIPS Warrior シリーズ」のコアを採用することになりました。

 ユーザーに複数の選択肢があるのが健全な市場だと考えます。そこで、すべてのセグメントにMIPSプロセッサーを展開し、選択肢の1つとして認知していただけるようにするつもりです。そのために、64ビット・アーキテクチャも備えた最新の「MIPS Series5 Warrior」コアのほか、リアルタイム向けの「MIPS Aptiv」コア、および、従来からの「MIPS Classic」コアまで、ラインアップを広くそろえる戦略を展開しています。

――他の事業の取り組みは。

ヤサイ コネクティビティーの分野では、フル・サラウンドのWi-Fiアプリケーションなど、真のホームワイヤレスが2016年に実現すると見込んでいます。当社のEnsigmaはWi-FiやBluetoothだけではなく、マルチルーム・オーディオを実現する「Bluetooth Caskeid」にも対応しています。Ensigmaをベースにした最終製品が数多く登場することを期待しています。

 また当社は、IPコアを提供するのが主な役割ですが、お客様が短期間で製品やサービスを展開できるように、IoTやコンテンツ配信に最適なクラウドサービス「FlowCloud」など、バリューチェーンの中でもう1つ上のレベルのサービスにも取り組んでいます。今後こうした投資を積極的に進めていきます。

図 イマジネーションテクノロジーズのソリューション
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プラットフォーム戦略への転換を

――日本市場に期待していることは。

ヤサイ 日本市場はとても重要です。毎月のように日本を訪れてメーカーの皆様と接していますが、技術に優れるとともに豊富な人材を擁しているといつも感じます。一方で、国内市場では元気でも、海外市場では苦戦を強いられている企業も少なくありません。

 将来のトレンドを見据えて先行的にプラットフォームを開発し、ソリューション展開する時代に移っています。今までのように顧客のニーズを聞いて市場の見込みができてから製品を開発していては、時間がかかりすぎて、気が付けば海外勢にマーケットを握られているように思います。

 日本企業の強みである優れた人材を生かしながら、たとえ成果や市場が確実ではなくても積極的な投資を行ってトレンドの変化に対応すべきです。

※所属・肩書は取材当時のものです

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