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インターシル

パワーマネジメントやビデオ信号処理、航空宇宙向けなどの分野に強みを持つ半導体メーカーであるインターシル。その日本法人にとって、2015年は「改革」の年になった。4月には、大久保喜司氏が代表取締役社長に就任。国内電子機器メーカーが注力する事業分野が民生機器から産業機器などに変化している中、それに最適化するための施策を次々に打っていった。効果はどの程度得られたのか。大久保氏に「改革」の現状について聞いた。

――代表取締役社長に就任後、まず取り組まれたことは何でしょうか。

大久保 セールス部門の組織変更です。これまではセールス担当者が2~3社の顧客企業を受け持つ「アカウントセールス制」を採用していましたが、これを「プロダクトセールス制」に変更しました。プロダクトセールス制では、セールス担当者が製品分野を受け持ちますから、その製品分野のマーケティング戦略や販売戦略の立案にセールス担当者が注力できるようになります。

――顧客企業への直接的な売り込みは、誰が担当するのでしょうか?

大久保 今回の組織変更は、販売代理店の営業/技術窓口との連携強化がセットになっています。当社のセールス担当者がマーケティング/販売戦略を立案し、それに基づいて販売代理店の担当者が顧客企業に売り込むという流れになります。

 ただし販売代理店の担当者は、当社の製品だけでなく、競合他社品も扱っています。そのため、当社の製品を必ずしも優先的に売り込んでくれるわけではありません。

 そこで3つの施策を打ちました。1つ目は、販売代理店の担当者を対象としたセミナーの開催です。既に関東と関西で開催しました。製品の特長を理解してもらい、製品戦略や製品ロードマップを共有することが目的です。2つ目は、アワードプログラムのスタートです。販売代理店の担当者の中で、目覚ましい成果を上げた人を表彰する制度です。このアワードプログラムは、私の担当している東南アジアでも10月からスタートしており、インドでは2016年初頭からスタート予定です。3つ目は、日本語のプロモーション資料の拡充です。エンジニアはとても忙しく、英語の資料やデータシートを読む時間が足りません。そこで、1ページの日本語資料を作成し、代理店の担当者が手短に利点を説明できるようにしました。

産業機器、通信インフラに注力

――注力する分野に変化はありますか。

大久保 これまで当社は、コンピューティング、ディスプレイ、車載/航空宇宙用、ゲーム機を注力分野に掲げてきました。今後も引き続き、これらの分野の販売促進に力を入れていきます。

 しかし、国内電子機器メーカーの事業戦略が変化しています。それに伴い弊社も注力分野を拡充、シフトしていきます。例えば、産業機器や通信インフラ、アミューズメント、プリンター複合機(MFP)、電源モジュール、医療、計測器などが最注力分野です。

図 インターシルの3つの事業部門
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 当社では、国内売上高の上位10社分の合計額が占める割合が減っており、上位10社以外の企業による売り上げの合計額が50%以上を占めるようになりました。いずれ上位10社の顔ぶれは変わるでしょう。今後、成長する顧客企業はどこなのか。それを的確につかむためには、国内電子機器メーカーの変化に沿った販売促進活動に注力する必要があります。

 ただ、これらの事業分野は設計サイクルが長く、採用が決まるまでに長い時間が掛かります。このため、すぐに売上高の増加に結びつきにくいのですが、採用の可能性がある案件数は7月以降急増しています。その数は、ひと月に数十件に上ります。販売促進活動の成果は確実に出ています。あとは、実ビジネスとして刈り取るだけです。

――今後国内での大きな売り上げを特に期待する製品は何でしょうか。

大久保 デジタル電源用制御ICです。これまで国内市場はアナログ電源が主流で、デジタル電源はなかなか受け入れてもらえませんでした。しかし、最近になって状況が変化しつつあります。国内の大手通信機器メーカーがデジタル電源の評価を始めており、電源モジュールメーカーの考え方も変化しつつあります。日本国内で「デジタル電源への投資を増やしていこう」という機運を感じます。現在は、第4世代のデジタル電源用制御ICを販売していますが、近々第5世代品を投入する予定です。これをキッカケに、国内のデジタル電源市場を開拓していく考えです。

 デジタル電源では、モジュール品「ISL8273M」にも期待しています。これは、第4世代のデジタル電源用制御ICに、パワーMOSFETやインダクターを1パッケージに収めたもので、最大80Aと大電流出力が可能です。

 このほか、同期整流方式採用の降圧型DC-DCコンバーター制御IC「ISL8117」やTOF(Time Of Flight)方式を採用した高精度距離センサーIC「ISL29501」、車載用途に向けたビデオ信号プロセッサー「TW8836」なども、大きな売り上げが望める製品です。

10%を超える成長率を目指す

――2016年の目標は何でしょうか。

大久保 10%を超える成長率を2017年に実現するために、2016年は顧客獲得に向けた案件の発掘に引き続き注力する考えです。

 半導体業界全体の成長率は2%程度といわれる中で、それ以上の成長率を日本で達成するのは、決して簡単ではありません。しかし、新しい案件を増やせば、それに応じて新規顧客数も増えて、売り上げが増大するはずです。

 さらに2016年には、新たな取り組みに挑戦します。それは、主要顧客と製品ロードマップを共有することです。当社と顧客のロードマップが一致しなければ、なかなか採用に至りません。そこで顧客のロードマップを早期に入手し、それに合わせて当社で製品を開発するわけです。そうすることで採用の可能性が高まります。現在、戦略パートナーを選定中で、2016年中に活動をスタートさせる予定です。

――2016年には、どのような新製品を投入する予定ですか?

大久保 当社は、2015年にパワーMOSFETメーカーのグレート ウォールセミコンダクターを買収しました。同社のパワーMOSFETは高性能で、電源回路に適用すれば効率向上やノイズ削減を実現できます。2016年には、同社の製品を搭載した電源モジュールなどが登場するでしょう。

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