日経テクノロジーonline SPECIAL

村田製作所

村田製作所が好調な業績を上げそうだ。スマートフォンのLTE化や多モード化、自動車の電装化にけん引されて、1台当たりの部品点数が増加している。心配されている中国経済の先行きも、中期的には部品需要が堅調に伸びていくとみている。 注力しているオートモーティブ、エネルギー、ヘルスケア・メディカルの市場でも、通信機能や各種センサーの利用拡大によって、需要が伸びそうだ。同社 代表取締役社長の村田恒夫氏に、2015年の総括と今後の成長に向けた取り組みを聞いた。

――2015年の業績についてお聞かせください。

村田 当社を取り巻く市場環境は、スマートフォンの成長およびLTE化のさらなる進展や自動車の電装化の進展が1台当たりの部品数の増加に寄与し、電子部品の需要が好調に推移しています。2015年度は売上高1兆2000億円、営業利益2720億円の業績を予想しています。売上高、利益ともに2014年度に続き、過去最高を更新する見込みです。特にスマートフォン向けは、部品の搭載点数の多いLTE端末の普及が加速し、売り上げに寄与しています。

――中国経済の影響はいかがでしたか。

村田 中国経済の動向やエレクトロニクス市場への影響を注意して見ていく必要はあります。しかし、スマートフォン市場などはLTEの進展など、上位機種への買い替えが着実に進んでおり、1台当たりの搭載部品数も増えていることから、中期的に中華圏全体で部品需要は堅調に伸びていくとみています。LTEの中でも3モードから5モードへのシフトが進んでおり、回路が複雑かつ限られたスペースに機能を組み込むため、中国のローカルスマートフォンメーカーは超小型化の部品やモジュールを使用せざるを得ない状況になってきています。中国ローカルメーカーの中でも勝ち組・負け組がでてきていますが、幸いにも当社は市場シェアの高い部品をもっているため、双方の多くのローカルメーカーに当社の部品を使っていただいています。

――では、全体として今後の市場動向をどのようにみていますか。

村田 スマートフォン市場の成長鈍化を懸念される声も聞きますが、当社が扱っている部品需要の伸びはまだまだ期待できると思います。LTE化以外にも、先進国を中心に進んでいる技術的な変化として、キャリアアグリゲーション(通信速度を高めるために違う周波数を一度に使うサービス)によって、新しい送受信回路が必要になります。そのための部品点数の増加や部品の小型化を要求されることによるモジュール化も進んでいくことになります。現状シェアを維持するだけでなく、今後も小型化、薄型化、高機能化などの市場要求にお応えして新たな付加価値を提供していけるように、技術力の向上や安定した供給体制の確保に努めていきます。

――どのような市場に注力していますか?

村田 既に事業として実績のあるオートモーティブ市場に加え、エネルギー、ヘルスケア・メディカル分野に注力していきます。オートモーティブ市場向けの売上構成率は14%を占めますが、今後さらに電子化、電動化率が上昇し、インフォテインメント系の無線通信モジュールだけでなく、車車間、車と車外の通信やセーフティ領域の拡大が期待できます。当社としても、信頼性の高い積層セラミック・コンデンサ(MLCC)、EMIフィルタや各種センサー(MEMSジャイロ、加速度センサー、超音波センサーなど)を提供し、確実に伸ばしていきたいと思います。

図1 小型エネルギーデバイス
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 エネルギー分野では、普及が期待されるウェアラブル機器やワイヤレスセンサーネットワークのセンサーノードなどで使用される幅広い負荷に対応可能な電源として、小型・大容量シリンダータイプのエネルギーデバイスを商品化しました(図1)。この商品は、キャパシタのように使用できる小型の2次電池で、従来の2次電池に比べて高レートの充放電性能と長寿命を実現しています。今後、省エネに重点を置いたエネルギーマネジメントシステムに対して、当社の強みが生かせるセンサーや通信などの融合によるソリューションの提案や、データセンター向けに電源部品事業の強化も進めていきます。

図2 センサーモジュール(下)、センサーノード(上)
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 ヘルスケア・メディカル分野では、自動車や産業機器向けのMEMS加速度センサをヘルスケア向けに応用し、ベッドに取り付けてBCG*(心弾動)を計測するセンサーモジュールとセンサーノード(図2)、インプラント医療機器向けに使用可能な医療グレードMLCCを開発、商品化しております。

* BCG : Ballistocardiology の略。
心弾動。

――今後の成長に向けた取り組みについてお聞かせください。

村田 2016年を起点とした2018年までの中期計画を策定しています。この3カ年では引き続き成長の柱となるスマートフォンを中心とする通信分野のビジネス拡大とともに、将来にわたっての持続的な成長のために、新規注力市場でビジネス展開するための基礎固めを行っていきます。IoT(Internet of Things) 社会に対する顧客ニーズの広がりは、当社にとっても大きなビジネスチャンスとなります。市場や顧客のさまざまなニーズに対して、ハードだけでなく、ソフトを含むシステム技術を含め、当社の強みとするセンサーや通信技術を融合した新たな価値提供を行っていきます。

 当社の売上の9割は海外向けですが、海外生産比率は3割程度となっています。最先端の研究開発や高付加価値の新製品は国内生産を基本とし、コモディティ化の進んだ製品は海外で生産していますが、今後、さらにお客さまへスピーディな納入をしていくために、安定した供給体制の確保や生産性の向上、お客様の要求に応えられる品質の実現を目指し、ものづくり力を高めていきます。

 人材確保や育成も不可欠であり、新卒者のほか、即戦力となる優秀な人材の採用も継続していきます。当社では、従業員一人ひとりがお客様の声に耳を傾け、お客様に感動を与えられる価値創造を目指す「全員マーケティング」をかかげています。近年、海外での生産拡大や国内外の企業買収などで、異なった国や企業文化の中で育った従業員も増えています。グローバルで連携を密にしながら、お客さまへのサービスや提供価値を創造していくために、全員が同じ思い、目的を共有していくことが重要です。そのために、ムラタの大切な価値観、理念を共有する取り組みも継続しておこなっていきます。

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