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エスアイアイ・セミコンダクタ

セイコーインスツル(SII)と日本政策投資銀行(DBJ)は、SIIの半導体事業を母体とした新会社「エスアイアイ・セミコンダクタ」を設立し、2016年1月から営業を開始する。「私たちは、先進コアテクノロジを駆使した“Small Smart Simple”なアナログ半導体ソリューションでお客様に感動を提供し続けます。」をビジョンに掲げ、世界のトップ5 に入るアナログ半導体メーカーを目指す。新会社設立の狙いと今後の戦略について代表取締役会長の藤井美英氏に聞いた。

――エスアイアイ・セミコンダクタを設立した経緯をお聞かせください。

藤井 ビッグデータの活用が本格化し、データを吸い上げるIoT 機器が大量に置かれる時代が到来しつつあります。この動きは、センサー用ICやバッテリー駆動IC の技術に強みを持つ私たちにとって、紛れもない順風です。今回の分社化は、この千載一遇の機会を確実につかみとるため、的確な施策を迅速に打つことができる体制を整えることが狙いです。半導体事業の成功は、的確なタイミングでの投資にかかっています。DBJの強力なバックボーンを得たことで、適切な投資をしていく上での自由度が高まりました。

アナログ半導体のトップ5を目指す

――具体的にどのように自由度が高まるのですか。

藤井 まず、高度な製造プロセスの開発投資と生産能力の増強に向けた設備投資に振り向ける資金の余裕を得ることができます。また、商品設計の面では、優秀な人材の獲得やM&Aによる技術の獲得など、設計リソースの増強ができるようになります。来るべきビッグデータ時代に求められる商品を設計するためには、より広範な技術も取り入れていく必要があると考えています。さらに、販売網を、現在の地盤である国内とアジア圏から、欧州、米国へと拡大強化できるようになります。5年後、10年後を戦うための体制は整いました。これからは、それを生かした具体的な施策が重要になると考えています。

――新会社は、どのような半導体メーカーを目指しているのでしょうか。

藤井 何より、新しいものを作ることの喜びと誇りを感じながら、喜々として仕事に取り組める会社にしたいと考えています。そのためには、まず、アナログ半導体の中でもセンサー用ICやバッテリー駆動向け電源ICなど特定領域で世界一を目指し、社会や産業界の中で常に頼られる存在になることが大切です。そうしたポジションを得ることができれば、5年以内に年間1000億円程度の売り上げ、アナログ半導体のトップ5企業入りを果たせるでしょう。

――アナログ半導体に注力していくのはなぜですか。

藤井 ビッグデータは、アナログ情報が満ちた現実世界からデータを集めて出来上がります。その本格活用が始まれば、現実世界と仮想世界の接点であるアナログ半導体の需要が爆発的に増えます。ビッグデータの処理能力の飛躍的な向上と歩調を合わせた、IoTを支えるアナログ半導体の進化と、必要な量の供給が私たちの役割です。また、バッテリー駆動機器の普及で、高品質な電源ICのニーズが高まっています。電源配線が不要なエネルギーハーベスティングに向けた電力マネジメント技術も利用が広がることでしょう。「私たちは、先進コアテクノロジを駆使した“Small Smart Simple”なアナログ半導体ソリューションでお客様に感動を提供し続けます。」という新会社のビジョンの下、こうした応用で貢献できる商品を提供していきます。

時計の低電力、高品質をIoTに注ぐ

――他社には負けない技術の強みを教えてください。

藤井 圧倒的な低消費電力で電子回路を駆動する技術と、工程管理技術を生かした高品質化技術では負けません。私たちのDNAには、最も小さく、同時に高い品質が求められる工業製品である時計、それもクオーツ時計の先駆者であるセイコーブランドを支えてきた技術とノウハウが刻み込まれています。これらは、時代の要請に応える技術であると確信しています。IoT機器には、当然極めて高度な低消費電力化が要求されます。また、高品質な電源を搭載しないとシステム全体の信頼性を確保することができません。数年にわたって正確な時を刻むセイコーの時計と同様の超低消費電力と高品質が求められることでしょう。

――重点開拓する分野をお聞かせください。

藤井 生体センシングや携帯型医療機器など「メディカル」、スマートハウスやIndustry4.0に関連した産業機器など「エネルギー」、介護や見守りなどに向けた「ロボット」、先進運転支援システム(ADAS)やバッテリー管理システム(BMS)など「自動車」、非接触給電やスマートカードなど「コミュニケーション」の5つの分野(MERC2)の開拓に注力します(図)。

図 エスアイアイ・セミコンダクタが今後展開するマーケット「MERC2
※MERC2= Medical、Energy、Robot、Car、Communicationの略
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 特に直近では、車載製品のさらなる拡大を目指します。品質と信頼性の高さが強みのEEPROM、低電圧・低消費・高精度でありながら多様な電圧に対応する製品を用意している電源用IC、センサー用ICをラインアップしています。また、自動車用製品を水平展開し、同様の高品質が求められるメディカル、ロボット向け市場にも参入していきます。

――想定する応用市場に向けて、どのような技術を開発してくのでしょうか。

藤井 応用市場の動きは激しく、その中で使われる技術も常に変わり続けます。これからの時代を担う若い人たちが感性を磨き、お客様と社会が求めている商品を開発していかなければならないと考えています。既に面白い技術が生まれています。赤ちゃんのおしっこで発電し、おむつが濡れたときに知らせる電池不要のセンサーシステムを、立命館大学と共同で開発しました。こうしたシステムの価値は、子育て世代だからこそ気がつくものです。

 お客様と社会の求めに応える技術を分かりやすいかたちで提案していくためには、私たちが持っているペリフェラルと呼ばれるアナログ半導体に加えて、プロセッサーやDSPのインターフェース技術も取得していく必要があるでしょう。こうした技術を持つ半導体メーカーとの連携を強め、機能をモジュール化し、最適なソリューションを提供して、お客様に感動を与え続けていきます。

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  • エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
    エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社

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    URL:www.sii-ic.com