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TDK

TDKが好調だ。2015年度で、バランスの取れた収益構造が定着、競争力の源泉である一貫生産への回帰をなしとげつつある。2016年度は、自動車とICT、産業機器・エネルギーを重点市場に、ゼロディフェクト品質の実現に向け、TDKならではのものづくり改革「TDKインダストリー4.5」をさらに強力に推進する。同社 代表取締役社長の上釜健宏氏に好調な業績の背景や2016年度の展開方針、「TDKインダストリー4.5」の具体的な取り組み方などについて聞いた。

――2015年度の業績が好調です。

上釜 9月までの上半期の売り上げは過去最高で、営業利益も前年同期から63%増の456億円と大きく伸びました。2016年3月期は、売上高1兆1800億円、営業利益950億円を見込んでいます。最終製品の市場で見ると、スマートフォンは中国でも引き続き需要が拡大し、前年の生産水準を上回りました。自動車は米国での堅調な販売に支えられ、需要が底堅く推移した結果、生産は若干増加しました。その一方で、パソコンやハードディスクドライブ(HDD)向けの生産は、前年を下回っています。コンデンサーは、セラミックコンデンサーを中心に自動車市場向けで売り上げが増加、生産性改善により利益率も向上しました。またインダクティブデバイスは、好調なICT市場と堅調な自動車市場向けで生産が拡大。高周波部品は、北米スマートフォン向け需要を中心に、ディスクリート製品の生産が好調です。一方、HDDヘッドは、PC需要の不振で低迷、マグネットもHDD向けの生産が低調でしたが、2次電池は中国、韓国、北米向けの生産が拡大しました。

――好調の背景には何があるのでしょうか。

上釜 近年、コンデンサーを主因とした受動部品事業の収益性悪化で、HDDヘッドなど磁気応用製品事業に偏った利益構造の克服が大きな課題でした。そこで、製造拠点の最適化をはじめとする構造改革に取り組んできました。その結果、受動部品、磁気応用製品、フィルム応用製品の3事業でバランスの取れた利益構造を定着させることができました。

自動車市場に注力

――構造改革の内容を教えてください。

上釜 当社は創業以来、素材から製品に至る全工程を自社で一貫生産するものづくりが強みです。素材から手掛けるため、製品の進化を主導でき、安易な模倣も許しません。また、自社内で完結するため、生産工程や技術面でのさまざまな課題が見え、合理化も大胆に進めることができます。ところが、水平分業体制の導入で、その強みが発揮できなくなり、競争力が低下してしまいました。そこで、受動部品事業を収益の柱とする方針を定め、国内製造拠点の集約と外注工程の内製化を進めました。そして、複雑に絡み合っていたものづくりの整流化と、一貫生産への回帰を進め、固定費削減だけでなく、リードタイムの短縮、物流費の削減も実現しました。

――2016年度はどう展開していくのでしょうか。

上釜 2016年度は18年度までの新・中期経営計画の2年目に当たる重要な年です。新中計では自動車とICT、産業機器・エネルギーを重点3市場、インダクティブデバイス、高周波部品、圧電材料部品、HDD用磁気ヘッド、2次電池を重点5事業と定め、新規事業で、18年度までに売上高1000億円を目指します。その中で特に力を入れるのが自動車市場で、売上高構成比を拡大させていきます。当社は自動車分野の電装化に40年以上前から着目し、モーターを動かすマグネットから始まり、提供製品を広げてきました。受動部品、マグネット、電源など幅広い製品ポートフォリオを持ち、顧客仕様に合わせて製品を一括提供できます。その中で、特に2015年度から量産を開始した、パワーステアリングの動きを細かく制御し、燃費改善や省力化などに貢献する磁気センサーに注力します。

ものづくりを進化させた新工場起工

――ものづくりへの取り組みをお話しください。

上釜 徹底的に進化させていく考えで、成長戦略という名の下に攻めの姿勢で臨みます。海外生産の一部を国内に回帰させましたが、それは中国の人件費高騰だけが理由ではありません。今後、自動車の電装化がさらに進み、日常生活のさまざまな機能がスマートフォンに搭載され、あらゆるものの「鍵」になるでしょう。その中で、電子部品は、命に関わる領域で活用される場面も増え、必然的に、これまで以上に品質が問われるようになります。そこでゼロディフェクト品質を追求、圧倒的に競争力あるものづくりに取り組みます。

――ロケーションフリーという考え方を打ち出しています。

上釜 人件費の高さや従業員の習熟度に関係なく、世界中のどの拠点でも同じ品質の製品を製造するというものです。材料から前工程、組み立て工程、後工程に至るすべての工程を一貫生産することが必須要件です。前の工程に遡って、異常を確認する源流管理で、その場で不良原因を追究し、歩留まりの改善で利益率を向上させます。最初に具現化するのが、2016年夏に秋田県の本荘工場と稲倉工場に竣工する新しい製造棟です。この新棟は250億円をかけて建設され、カメラやセンサーによる監視システムネットワークで、製造ラインが自律的にリアルタイムで工程の問題点を感知します。そして、ビッグデータで分析して工程にフィードバックする源流管理を行い、ゼロディフェクト品質を追求、同時に在庫管理、エネルギー効率の面でも革新を進めます。

――野心的な取り組みですね。

上釜 ドイツでは産官学の連携で、「インダストリー4.0」が取り組まれています。その考え方に、TDKならではの品質へのこだわりを加えた「TDKインダストリー4.5」を新製造棟で実現していく方針です。当社は2015年12月創業80周年を迎えました。その取り組みを通して、80年にわたり蓄積してきた磁性技術を核にして、未来の生活にイノベーションを興す企業にしていく考えです。

図 TDKのものづくり改革の考え方
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