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多様化が加速するスマートデバイス、進化を先取りしたテスト環境が必須に

家電製品や自動車など、一般消費者が購入して利用する民生機器の多くが、ネットにつないで利用するスマートデバイスへと姿を変えつつある。スマートデバイスの開発では、民生機器の特徴である多品種化への対応と、情報機器の特徴であるネットへの確実な接続と接続時の確かな動作の確認が、同時に求められる。ナショナルインスツルメンツ(NI)社は、多種多様なスマートデバイスに盛り込む、一見雑多に見える機能を3つに整理。これを組み合わせて構成するシステムの開発で効果を発揮する理想のテスト環境を提供する。

 ネットに接続する機器やシステムが、爆発的な勢いでその数と種類を増やしつつある。スマートウォッチなど常に身につけるウエアラブルデバイス、エアコンや洗濯機のような白物家電、そして自動車まで、ネットを介して操作や管理ができるようになってきた。近い将来、星の数ほどのスマートデバイスがネットにつながり、それらの間で、人々の生活やビジネス、社会活動などに直結する、さまざまな情報をやりとりするようになるだろう。大手調査会社のGartner社は、2020年には500億台のスマートデバイスが、ネットにつながると予測している。膨大な数の、多種多様なスマートデバイスがネットを介してつながり、1つの大きな情報システムとして機能するようになる。

民生機器であり同時に情報機器

久保 法晴 氏
日本ナショナルインスツルメンツ株式会社 APACマーケティングマネージャー テスト&RF担当

 スマートデバイスは、一般消費者が購入して使う民生機器であり、同時にクラウドとデータをやりとりしながら連携動作する情報機器でもある。

 民生機器の開発では、消費者一人ひとりの好みに合った製品を提供することが重要になる。このため、多く製品ラインアップを開発して、豊富な選択肢を提示することが求められる。一方で、ネットに接続して使う情報機器の開発では、大規模な情報システムに組み込まれたとき、思い通りの機能・性能が実現できることをキッチリと確認しておく必要がある。この点は、機器単独での動作確認だけに注力できた、過去の民生機器開発との大きな違いになる。

 ところが、民生機器や自動車など一般消費者が購入する製品の特徴である多品種開発。情報機器の特徴である大きなシステムの中での機能や動作の確認。これら2つを両立させることは難しい。

 例えば、自動車メーカーは、アクチュエーターの制御システムのような、機械的な機構にかかわる部分のテストに関しては、他業界を圧倒する高度な知見とノウハウ、実績を持っている。しかし、自動車がスマートデバイスになることで組み込まれることになる通信機能や情報処理機能による、通信インフラとの相互接続やクラウドとの相互連携のテストに関しては、IT業界のエンジニアほど慣れているとは言えない。そもそも、試作車を数多く開発し、テストを繰り返すことで、じっくりと時間を掛けて安心・安全を作り込んできたこれまでの自動車開発と、システムに投入する技術が日進月歩し、同時に通信インフラやクラウド上の機器がどんどん進化するIT分野の機器開発では、開発形態事態が大きく異なる。こうした状況は、白物家電などの開発でも同様である。

 しかも、多品種展開が当たり前のスマートデバイスの開発において、製品ラインアップとして取りそろえる多くのデバイスそれぞれに、搭載する機能や想定する利用シーンに合ったテスト環境を用意し、きっちりと品質保証することは難しい。加えて、スマートデバイスで利用されている無線通信のプロトコルや、そこに搭載するセンサーは多種多様である。これまでは、システムに組み込む機能やそこで利用する技術の標準に合わせて、テストの分野ごとに別のテスト環境を構築しなければならなかった。同様の方法でテスト環境を整備していたら、投資対効果が悪化し、高品質の製品を低コストで消費者に提供することが難しくなってしまう。

雑多なテスト項目は3つに集約

 こうした問題を解決するのが、NI社が提供しているテスト環境である。「顧客のニーズにあわせ多機能化が求められるスマートデバイスにおいて、開発時間の短縮を実現するためには、特定のデバイスに特化したテストシステムではなく、ソフトウェアによって柔軟にどのようなデバイスにも対応できる、いわばスマートテストシステムが必要不可欠です。」(日本ナショナルインスツルメンツ APACマーケティングマネージャー テスト&RF担当 久保 法晴 氏)。

 前述したように、スマートデバイスの開発では、多品種化によって数が急増する被測定デバイスそれぞれに合わせてテスト環境を整備しようとすると、手がつけられない状態になる。NI社は、スマートデバイスの製品ラインナップの多くに共通して組み込まれるコア機能を抽出し、それを「バッテリー」「センサー」「無線通信」の3つに集約(図1)。これら3つの機能が連動して動くスマートデバイスに向けたテスト環境を提供している。

図1 スマートデバイスのコア機能を3つに集約してテスト環境を定義
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 NI社が提供するテスト環境は、いわば「スマートテスト」と呼べる柔軟性に富んだものだ。同社は、それぞれのコア機能に対応するテストモジュールを用意。それらを計測/オートメーションシステム用のPCベースプラットフォーム「PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)」に統合することで、各テストモジュールを相互に連動させてテストできる環境を構築可能だ。そして、システム開発ソフトウエア「LabVIEW」でテスト項目や測定条件などをプログラミングすることで、さまざまなテストに対応できる。個別の機能のテストに、個別の測定器を用意する必要は一切ない。1つのアーキテクチャーのテスト環境で、市場に出回っている8割のスマートデバイスの開発で求められるテストをカバーできるという。

テスト環境を迅速かつ低コストで構築

 先進的なスマートデバイスを開発しているエンジニアは、既にNI社のテスト環境を生かして、効果的かつ効率的なテストを実施している。Nest社のスマートデバイスを例として取り上げ、最後にIntel社の事例を紹介しよう。

 Nest社の「Smart Thermostat」は、部屋の中の温度をモニタリングし、住人のライフスタイルを把握しながら、住宅設備や家電製品を自動的に制御するホームオートメーションで扱うハブとなるデバイスである。Google社が傘下に収めたことでも有名になった技術だ。Smart Thermostatを分解すると、そこには「バッテリー」「センサー」「無線通信」にかかわる部品が数多く組み込まれていることが分かる(図2)。逆に、その他の機能に向けた部品が見当たらないくらいだ。それでは、このデバイスをどのようにテストできるか考察してみよう。

図2 Nest社の「Smart Thermostat」と搭載される機能をテストする環境
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 まず、「バッテリー」のテスト。ここでは、電源を取り込んでその挙動を把握したり、任意の電力を供給したりできる「SMU(Souse Measure Unit)」と呼ぶモジュールを選択する。このモジュールでは、スマートデバイス内の「バッテリー」を充放電させながら、その挙動をテストできる。次に「センサー」のテスト。ここでは、データ収集デバイス「DAQ(Data Acquisition)」が活用できる。アナログ出力とデジタル出力、いずれにも対応可能なモジュールであり、さまざまなセンサーの動作を確認できる。最後に「無線通信」のテスト。ここでは、「VST(Vector Signal Transceiver)」と呼ぶRF計測器が最適だ。RF信号発生器と信号アナライザを1台に統合した計測器で、ZigbeeやWi-Fi、セルラーなど6GHz帯までの無線通信技術を対象にした送受信テストができる。

 これらのテストモジュールを、PXIを介して相互連携させることで、システムとしての挙動をテストする環境を迅速かつ低コストで構築することができる。NI社によると、ここで挙げた3つのテストモジュールの他にも、PXI対応のCAN通信モジュールなども用意しており、これを組み合わせたテスト環境も簡単に構築できるという。自動車向けシステムの開発での、メカトロニクス系テストで効果を発揮することだろう。

スマートデバイスのテスト環境を標準化

 Intel社もNI社のスマートテストを採用している一社だ。スイスの著名な高級時計ブランドが、Intel社のプロセッサー「Atom」を搭載したスマートウォッチを発売するなど、同社はスマートデバイス関連のビジネスに注力している。そして、近い将来のウエアラブルデバイスへの搭載に向けて、必要な機能をボタン大に集約した情報処理モジュール「Curie」も発表。多種多様なスマートデバイスへの組み込みを後押ししていく予定である(図3)。

図3 スマートデバイスの機能を集積したIntel 社の「Curie」と多用化する応用機器のテスト項目
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 Curieを搭載するようなスマートデバイスでは、さまざまな通信規格やセンサーの中から、製品企画にあったものを選んで搭載することになる。また、同じ加速度センサーやジャイロセンサーを搭載していたとしても、取得したデータを処理するソフト次第で、ディスプレイの表示切り替えに使ったり、活動量計として使ったりと、機能が変わってくる。スマートデバイスを普及させるためには、多様な製品企画と技術仕様の組み合わせに対応できるテスト環境を用意する必要がある。こうした複雑な要件に応えるテストのことを、Intel社は「ハイミックステスト」と呼んでいる。

 同社Vice President(製造、オペレーション、品質担当)Mino Taoyama氏は、「人気のある製品の場合、1つの製造ラインで年に数千種もの異なるモデルを製造することがあります。多品種を取り扱うには、さまざまな製品のテストが可能なテストシステムが必要です。また、製品に応じてテスト環境を短時間で変更できる高い柔軟性も欠かせません。こうした要請に応えるため、当社は、さまざまな無線規格やミックスドシグナルのテストに対応できるテストシステムの構築を進めています」という。Intel社は、NI社のテスト環境を採用し、テスト管理ソフトウエアとして標準化している。

 NI社が提供する柔軟なテスト環境は、スマートデバイスの進歩と普及に大いに貢献するに違いない。

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