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【日亜化学工業株式会社】青色LED、白色LEDを世に送り出した技術力 人々の生活を支える新たな「光」の創出を目指す

スマートフォンから信号機まで様々な「光」のニーズに対応

 1993年、「今世紀中は困難」と言われた高輝度青色LEDの開発を成し遂げた日亜化学工業。1996年には、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDの商品化も実現し、LED技術の進展に大きく貢献してきた。同社の製品はスマートフォンの液晶バックライト、自動車のヘッドライト、道路や鉄道の信号機など様々な分野で利用され、生活に欠かせないものとなっている。

 同社の強みは、光源となるLEDチップ、光の色をコントロールする蛍光体を社内で開発・製造できる点にある。LEDチップの発光効率を上げるにはどうすればよいか、そのためにどんな蛍光体が必要かをあらゆる角度から検討し、製造までを一気通貫で行うことで、「明るさ」「色」の両面で市場ニーズに応えるLED開発を実現しているのだ。

「明るさ」と「色」の両面からLEDの性能向上を追求

 LEDの「明るさ」向上に挑戦するエンジニアの1人が榊原 友士氏だ。「私が担当しているのは、LEDを構成する半導体の薄膜設計開発です。明るいLEDほど少ない電力で効率よく発光し、スマートフォンなどのバッテリー消費を抑えることができるのですが、薄膜設計は、そのLEDの明るさに大きく関わる工程。それだけに大きなやりがいを感じます」と榊原氏は説明する。

 入社当初は、クリーンルーム内での薄膜の結晶成長作業などに従事していた榊原氏だが、入社3年目には社内のジョブローテーション制度によって、8人ほどのメンバーを束ねるプロジェクトリーダーに抜擢された。

 「それまでは1つのプロセスに集中していればよかったのが、一気に複数のプロセス、他部署で扱う技術への理解が必要になりました。ここで学んだのが『分からないことは遠慮せず聞く』ことの大切さ。文献などで調べることも大切ですが、余計なプライドを捨て、詳しい人に教えを乞えば、仕事のスピードも上がります。今では社内に知り合いも増え、業務で壁に当たった時は誰に相談すればよいのか、すぐに分かるようになりました。エンジニア人生の大きな転機だったと感じます」(榊原氏)

 一方、光の「色」と向き合うエンジニアもいる。液晶ディスプレイのバックライト用LED開発を担当する山下 良平氏も、その1人である。

 「今、注力しているのは、より現実に忠実な色再現です。例えばネット通販などで、ディスプレイで見た色と、実際に届いた商品の色が違うということがあります。これを回避するカギとなる、色純度の高いLED開発が当面の目標です。さらに色純度を上げると、3D機器なしでも映像に立体感が生まれるので、実現すれば多くの方に喜んでもらえるはずです」(山下氏)

 このように日々、技術の研鑽に努める以外にも、エンジニアには大切なことがあると山下氏は指摘する。「例えばある開発案件では、急な要件変更によって3カ月間で新製品を開発することが求められました。3カ月間というと、量産用の金型製作すらギリギリ間に合うかどうかです。他部署とも調整を重ね、なんとか納期には間に合いましたが、こうした時に大切なのが、他部署で必要な部材の確保などにも、依頼元のこちらが気を配ること。自分の専門分野だけを見ていては、お客様の要望に応える一人前のエンジニアにはなれないのです」(山下氏)。

 苦労の末になんとか納期に間に合ったLEDは、その後、納品先で製品に組み込まれ、大ヒット商品となったという。「自分が携わった製品が採用された商品を店頭などで目にすると、技術者として非常にうれしく思います。だから、どんなに苦労しても、またがんばろうと思えるのでしょうね」と山下氏は語る。

エンジニアの自主性を重んじ10年先を見据えた開発にも注力

 同社は、既存技術の改良に取り組むだけでなく、全く新しい視点から光技術を進化させることにも注力している。そのために設立したのが「先進技術開発部」という部署だ。榊原氏、山下氏が主に1~2年後の商品化を目指した開発に取り組むのに対し、この先進技術開発部では、5年先・10年先を見据えた新技術の開発を担っている。

 「例えばLEDの発光効率の限界というのは理論的に決まっていて、青色ダイスとYAG蛍光体を組み合わせる現在の白色LEDでは260lm/W程度が理論限界値です。しかし、新しい材料や構成を取り入れることで、この限界を超えられるかもしれない。そのために様々なアプローチをテストするのがこの部署の役割です」と、同部署に所属する岡 祐太氏は語る。

 これまで既に30以上の特許を出願してきた岡氏だが、特に印象に残っているのは、競合他社が「世界トップクラスの発光効率を持つLED」を開発したことを受けてスタートさせた社内プロジェクトだという。

 他社より小さなLEDチップで、より明るいLEDを目指したが、なかなか結果が出ず苦しむ時期が続いた。しかし粘り強く試行錯誤を続けた結果、1年後には競合製品より10%以上も発光効率を高めたLEDを開発できたという。「まだ量産化には至っていませんが、このLEDの発光効率を超える製品は現状、他社から発売されていません。これは、否定も強要もせず、納得いくまで挑戦させてくれた上司や周囲のおかげだと思っています」と岡氏は感謝を述べる。

 一方、課長職として後進の育成に当たる山下氏も、若いエンジニアの挑戦を後押しする体制が、日亜化学工業にはあると語る。「『少し道を逸れているな』と感じても、部下には最後までやらせるようにしています。自分で考え、挑戦した結果の“失敗”は、何物にも替えがたい成長の糧になるからです。もし分からないことがあっても、先輩社員に相談すれば、きっと真摯に向き合ってくれるはずです。今は世界の第一線で活躍するエンジニアも、過去にはそうやって周囲に助けられ、成長してきたことを忘れずに覚えていますから。こうした先輩たちから得られる知識は、エンジニアとしての貴重な財産になるはずです」。

 徳島から、世界を席巻する技術を発信し続ける日亜化学工業。そのたゆまぬ進化は、時代の一歩先を見つめ、挑戦を続けるエンジニアたちが支えている。

豊かな自然に囲まれた本社社屋。天気の良い日には北に淡路島、東に紀伊半島を望むことができ、気分のリセットを図れる
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会社情報
【資本金】 520億2,644万1千円
【社員数】 グループ合計 8,600名(2015年4月現在)
【設立】 1956年12月
【事業内容】 LED、電池材料(正極材料)、レーザーダイオード、蛍光体、化合物半導体、高純度金属、磁性材料、触媒、真空蒸着材料などの研究開発、製造、販売。
採用情報
【採用職種】 技術系スタッフ、事務系スタッフ、営業系スタッフ、製造スタッフ
【勤務地】 技術系スタッフ:徳島、神奈川、長野
事務系スタッフ:徳島
営業系スタッフ:東京、大阪、名古屋、海外
製造スタッフ:徳島
【2016年入社予定数】 200名
【初任給】 ※2015年4月実績
修士了 227,000円~189,000円
大学卒 212,000円~177,000円
高専卒 180,000円~167,000円
お問い合わせ
  • 日亜化学工業株式会社
    日亜化学工業株式会社

    〒774-8601 徳島県阿南市上中町岡491番地

    TEL:(0884)22-2311

    URL:http://www.nichia.co.jp/