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「ライト・エンベデッド」で顧客の選択肢を拡大

機器の動作をつかさどる組み込みシステムに、安定性や耐久性などが求められるのは言うまでもない。しかしコストを考えると、すべての組み込みシステムに最高水準の品質や信頼性を適用するのは非現実的だ。こうした課題に対して産業用組み込みシステムを手掛けるエレコムグループ3社は、「ライト・エンベデッド」を掲げて様々な産業用アプリケーションニーズに柔軟に対応できるスケーラビリティの高いソリューションを提供できる体制を整えた。

 コンシューマ向けを中心としたPC周辺機器メーカーとして名の通るエレコムだが、グループ企業では産業用の組み込みシステムも手がけている。実働を担っているのは、ロジテックINAソリューションズ、ハギワラソリューションズ、日本データシステム(JDS)の3社だ。

 ロジテックINAソリューションズは産業用PC。ハギワラソリューションズはフラッシュメモリを使った産業用ストレージ機器、日本データシステムは産業用マザーボードを、それぞれ開発・販売している。いずれも生産現場の検査装置や工作機械の制御装置、駅の改札機や電車やバス車内のサイネージなどで、多くの導入実績を持っている。

 3社は、エレコムによる株式取得によりグループ入りしたという歴史的な経緯から、それぞれ別々に営業や開発の体制を設けていたが、2015年半ばから企業間の連携を強化している。その旗印が「ライト・エンベデッド」だ。

山田 真也氏
ロジテックINAソリューションズ
ビジネスソリューション部 部長

 「3社がハードウエアを供給して関わってきたアプリケーションは、いずれもFAコンピュータをはじめ高い信頼性や長期供給が必須のハイレベルな産業用アプリケーションが中心でした。そこで、それぞれが蓄積した技術やノウハウを結集したうえで、市場のニーズに速やかに対応できる効率的な体制を整え、幅広い領域に向けた組み込みソリューションを提供することにしました」(ロジテックINAソリューションズの山田真也ビジネスソリューション部長)。つまり親会社のエレコムは、製品サイクルが短いコンシューマ向け市場で実績を重ねている。グループ会社3社はハイエンドの産業用アプリケーションで多くに実績がある。3社が提供するソリューションが網羅する範囲を広げ、コンシューマ向けとハイエンドの産業用途の間にあるアプリケーションを網羅することで、グループ全体であらゆる用途のニーズに対応できる体制が整う。

品質とコストを用途に合わせる

 新たに手を広げるアプリケーション領域を3社は、「ライト・エンベデッド」と呼んでいる。この領域に手を広げることで、ハイエンドのアプリケーション以外の要求にも柔軟に対応できる広範囲のアプリケーションを網羅する。「産業機器の組み込みシステムは用途があまりにも広いため、顧客のニーズも千差万別です。信頼性に対する要求レベルにも幅があります。こうした広範囲の要求に柔軟に対応できるソリューションを提供する考えです」(山田氏)。

 例えば製造装置や工作機械は、10年~20年もの間、使い続けるユーザーが多い。生活や産業のインフラとして日夜動くシステムなので、頻繁にリプレースしたり、リニューアルしたりすることはできないからだ。こうした機器では、長期間にわたって高い信頼性を維持することが求められる。このため、この用途に向けた組み込みシステムでは、長期安定稼働を支えるために極めて高い信頼性を追求するとともに、同じシステムを長期間にわたって継続的に供給することを前提に実装するデバイスやソフトウエアを選択する。

 だが、すべての産業機器において、このレベルの対応が必須とは限らない。使用環境や求められる品質が機器や用途によって異なるからだ。もちろん用途が何であれ品質は高いに越したことはないが、必要以上に高い品質を追求すると、コストが上がってしまい価格競争力を失うことになりかねない。そこで個々の用途や製品の要件に応じて最適化した、“適材適所”の組み込みシステムを実現する必要がある。こうしたニーズに対応できる体制を3社は強化しているわけだ。

Light Embeddedのカバー範囲
グループ3社がこれまで提供してきたハイエンド領域、エレコムがカバーしてきた汎用領域はもちろんのこと、これからはライトなエンベデッドの強化にグループを上げて取り組む。
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品質テストを3社で共通化

楠 拓也氏
日本データシステム 取締役 技術部長

 「ライト・エンベデッド」を推進するための3社の連携強化は、着実に進行中だ。開発部門では、技術リソースの共有化を加速。すでに大きな効果を発揮し始めている。具体的には、ハギワラソリューションズが持つ暗号技術搭載ストレージを、JDSが開発する組み込みボードに実装。セキュリティ対策が必要なシステム向けて提供している。このほか製品に実装するLSIなどデバイスの開発を委託するパートナーに関する情報の共有も進めている。こうして、3社の技術リソースをマージすることで、開発効率を高めると同時に、提供するソリューションの柔軟性を高めている。

 3社の技術リソースを融合する取り組みは、ユーザーの負担軽減にもつながる。「3社が提供した技術はトータルで動作が保証されているからです。技術間で、いわゆる“相性の問題”は発生しません」(JDS 楠拓也取締役技術部長)。さらに品質管理体制の統合にも取り組んでいる。ロジテックINAソリューションズが長野県伊那市に持つ自社工場内に、3社共通の品質テスト拠点を開設。2016年4月から運用を開始した。

鈴木 浩之氏
ハギワラ ソリューションズ
取締役 営業本部長

 3社は採用活動を一本化するなど開発部門における人的リソースの共有化を図る取り組みも進めている。「必要な技術の窓口を広げることで、多様な技術者が応募できるようになりました」(ハギワラソリューションズの鈴木浩之取締役営業本部長)。技術者の採用は積極的に続ける方針で、2016年内に3社の技術者を現在の3倍に拡大する計画だ。

エレコムの営業部門とも連携

 開発部門だけでなく営業部門の連携も着々と進めている。3社の営業部門の拠点統一化や定例での合同会議、3社のうち唯一海外にチャネルを持つハギワラソリューションズの販路の共同活用などはその例だ。3社の連携体制は、親会社であるエレコムも巻き込みながら着実に広がっている。

 こうした取り組みの成果は、2016年5月に東京都内で行われる「組込みシステム開発技術展」(ESEC)で見ることができる。3社で共同ブースを構えて出展。エレコムのネットワークカメラをロジテックINAソリューションズのコントローラと合わせた監視システムや、JDSのボードとハギワラソリューションズのストレージをベースにしたEtherCATボードなどを展示する。

 あらゆる分野の市場で製品の多様化が加速している。これとともに組み込みシステムに対する要求はますます多様化するはずだ。エレコムグループ3社の取り組みは、こうした動きにいち早く対応したものだと言えよう。「ライト・エンベデッド」と呼んで3社が積極的に展開するソリューションに対する市場の関心は、ますます高まるに違いない。

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  • エレコム株式会社
    エレコム株式会社

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