日経テクノロジーonline SPECIAL

医療機器の中の山洋電気

世界的な成長産業である医療機器分野において、クーリングシステム、パワーシステム、サーボシステムの3つの事業を主力とする山洋電気が急速に存在感を高めている。同社の製品が、病院の中で利用される様々な医療機器の信頼を高め、性能を向上させているのだ。その訳は、同社の競争優位である「医療機器メーカの要望に対して、最適な製品の提案をすること」。
単にカタログから製品を選んでもらうのではなく、顧客が掲げる目標性能を達成し、さらに高い性能を極めるために最適なカスタマイズ製品を提案してきめ細かいサポートをしているのである。山洋電気の3つの事業を担うキーパーソンに話を聞いた。

医療機器の発熱量増加に伴い冷却ファンが重要な役割に
坂本 次郎 氏
営業本部 副本部長
クーリングシステムビジネス担当

 「San Ace」のブランドでビジネスを展開しているクーリングシステム事業の製品は、CTスキャンやマンモグラフィなど数多くの医療機器に採用されている。クーリングシステム事業を担当する坂本氏は、「最近の医療機器は高速かつ小型になった。そのため、発熱量が増加しており、冷却性能が高い冷却ファンの重要性が年々高まってきています」と指摘する。

 CTスキャンでは、装置内の熱を排出するために複数台の冷却ファンを使用している。例えば、造影撮影を行うガントリー部(回転部)においては、スキャン時の高速回転に耐久できる、剛性の高いファンが求められている。長寿命ファン「San Ace L」は、アルミフレームを使用しているため、遠心力に対して耐久性のある冷却ファンであり、CTスキャンなどの剛性が求められる装置に最適だ。樹脂フレームの製品に比べて放熱性や剛性に優れ、さらに連続運転20年以上の長寿命を実現している。

 「乳がんの検査を行うマンモグラフィをはじめとして、検査装置の制御基盤部から発生する熱の排熱にも、山洋電気の冷却ファンが採用されています」(坂本氏)。近年の検査装置は小型になり、基板の実装密度がさらに高くなるのに伴い、発熱量も大きくなる傾向がある。高い冷却性能はもちろん、検査室や病室などの静かな場所で使用されるため、低騒音・低振動の冷却ファンへのニーズが高まっている。

※ 図をクリックすると、山洋電気の動画サイトにアクセスできます。

 こうしたニーズに最適なのが、静音ファン「San Ace 9Sタイプ」である。フレームの剛性を強化して振動による騒音を低減している製品だ。振動や冷却ファンの回る音は騒音の原因になるが、この製品は非常に静かでありながら、高い冷却性能を備えていることが大きな特長である。

長寿命ファン
「San Ace 120」9GLタイプ

 歯科用のX線装置においても冷却ファンは不可欠な製品だ。医療機器分野のX線装置は、歯科診療所などの狭い場所に設置されていることが多く、また、短い検査時間の間に高精細な画像データを高速処理することが求められる。「装置が小型になるにつれて装置全体の発熱量や、消費電力が非常に大きくなります。やはり小型でありながら、低消費電力で排熱ができる高性能な冷却ファンが求められています」(坂本氏)。

 こうしたニーズに対しては、温度状況に応じて最適な回転速度が設定できる低消費電力ファン「San Ace 9GAタイプ」が最適だという。装置のスタンバイ時には、冷却ファンの回転速度を低速にすることで、消費電力と騒音を抑えられることが特長だ。モータを最適化することで発熱を抑え、従来より高性能にした製品が、装置に付加価値を高めることにつながっている。もちろん、コネクタの仕様変更などきめ細やかなカスタマイズが、医療機器への採用につながっているといえよう。

デジタル化した医療機器に電力を安定供給する仕組みが必須に
掛川 浩 氏
営業本部 副本部長
パワーシステムビジネス担当

 「医療機関では、突然の停電や瞬時電圧低下(瞬低)、災害時における設備や機器の故障やデータ損失のリスクを回避することが必須になっています」。パワーシステム事業を担当する掛川氏は、医療機関こそ電力の安定性を維持する必要性が高いと指摘する。

 同事業では「SANUPS」ブランドで無停電電源装置(UPS)と太陽光発電用パワーコンディショナなどの電源システムを提供している。いずれも、医療機関の設備・機器向けに貢献している製品ばかりだ。

 近年の医療機器はデジタル化が進み、電力の供給が突然ストップすると、機器を安全に停止することができず、ハードウエアの損傷やデータの消失などのトラブルが発生する。そこで、停電や瞬停が起こっても、機器を安全に停止するまでの時間や自家発電装置が起動するまでの時間に、電力を供給するUPSが必要になる。ただし、市場に出ている既製品だけで顧客のニーズが満たせるわけではないという。掛川氏は、「お客さまの環境によって最適な仕様は異なります。個別に最適な製品を提案し、サポートするのが我々の使命です」と語る。

 「パラレルプロセッシング給電方式」という最新技術を搭載したUPS製品「SANUPS E23A」と「SANUPS E33A」は、停電や瞬低、災害などが発生しても無瞬断で電力を給電することが可能な製品である。電力が供給中でも、商用電源に対して電圧補正やノイズ吸収を行うことで、電力波形が正常な高品質な電力を供給することができる。いずれも出力容量が大きく、施設全体の電源維持の用途に向いている。並列冗長タイプの「SANUPS E33A」は、1台のUPSが故障しても残りで電力給電ができる高信頼の製品だ。

※ 図をクリックすると、山洋電気の動画サイトにアクセスできます。

 CTスキャンやマンモグラフィなどデータバックアップの用途には、常時インバータ給電方式のUPS「SANUPS A11J」や「SANUPS A11K」が最適だ。「SANUPS A11J」は、「SANUPS E33A」と同様の並列冗長タイプであり、UPS自身で消費してしまう電力を極力抑えることにも成功している。

常時インバータ給電方式UPS「SANUPS A11K」

 病院の屋上施設や敷地内などに設置する太陽光発電システムには、太陽光発電用パワーコンディショナ「SANUPS P61B」「SANUPS P73K」の利用が有効だという。病院は、デジタル化された医療機器だけでなく、電子カルテや会計システムなどのIT、検査機器・手術装置・ICU(集中治療室)などの集合体である。停電時にも使用できる自立運転機能を備えるため、商用電源が停電しても太陽光発電システムが発電していれば接続された装置に安定した電力を給電することが可能である。

 また、同社製品の強みは、機器の性能だけでない。「我々の強みは、メンテナンスの体制にあります。UPSなどのパワーシステムは定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスを行うことで、信頼性のさらに高め、お客さまに安心して使用していただくことを目指しています」(掛川氏)。

モータのカスタマイズによって装置に最適な製品を提供
佐藤 良 氏
営業本部 副本部長
サーボシステムビジネス担当

 サーボシステム事業では、「SANMOTION」のブランドで、サーボシステムやステッピングシステム、クローズド・ループ・ステッピング・システム、コントローラなどの製品を展開している。医療機器では、検体検査装置やマンモグラフィ、CTスキャンなど多種多様な装置に同社の製品が組み込まれている。

 検体検査装置では装置内の搬送機構にモータが使用されている。ここでは産業機械向けなど一般のモータとは異なった性能・機能が求められる。佐藤氏は、「例えば、血液分析装置は検査薬や検体の状態が温度によって変化してしまうため、いかに装置内の温度上昇を抑え検査精度を維持しつつ、装置を小型化することが求められます」と語る。

 同社では、そのような要望に応えられる製品として、ステッピングモータ「SANMOTION F」を提案している。佐藤氏によると、発熱を抑えたいというニーズに対しては、発熱を抑えつつ安定した測定精度が得られるように、モータ内部やモータのシャフト形状や長さなどをカスタマイズすることにより、装置の部品点数の削減、機構の小型化、工数の低減などを実現している。また、薄型タイプなどがありラインアップが豊富だ。

※ 図をクリックすると、山洋電気の動画サイトにアクセスできます。

 マンモグラフィをはじめとする検査装置では、患者が極力ストレスなく受診できるように、短時間で正確に撮影するために、高精度かつ高速に動作する製品が求められる。なかでも、乳房を圧迫してX線撮影を行うマンモグラフィでは、測定に際して特に滑らかな動作が求められる。この用途では、低速時の速度変動が小さく装置の動作が滑らかなDCサーボシステム「SANMOTION T」が最適である。

ACサーボシステム
「SANMOTION R 3E Model」

 CTスキャンでは、ガントリー部(回転部)や寝台の昇降、前後移動の駆動にモータが使用される。この用途では、速度変動を抑えつつ、安定した回転精度が求められる。これに最適な製品が、ACサーボシステムの「SANMOTION R 3E Model」だ。

 CTスキャンに限らず、医療機器では、静粛性も求められる。佐藤氏は「低振動の製品のご要望が多くあります。振動が少ない装置になることで、利用者が安心して受診できるように配慮するとともに、振動は音(騒音)の原因になるためです」と語る。「SANMOTION R 3E Model」のサーボアンプは、コギングトルクを低減したサーボモータとの組み合わせにより、滑らかな運転で低振動化・低騒音化を実現できる。さまざまな医療機器に最適な製品をトータルソリューションで提案できるのが、山洋電気のサーボシステムの魅力だ。

医療分野で求められる最適な性能を
カスタマイズで実現できる山洋電気

 山洋電気製品の大きな特長は、長年培われてきた技術力やサポート力で、高い性能や信頼性を誇る製品を数多く開発しているところだ。業界トップクラスの性能にこだわり、新製品を次々に展開しているところも、信頼性の高い山洋電気ならではの姿勢だ。この理由を登場した3人のキーパーソンに聞いたところ、同じ答えが返ってきた。

 「私たちのビジネスの特長は、お客さまの要望をきめ細かく伺うことで、装置に最適でありながら、さらなる性能向上を実現できる製品を提案するところです。また、最終的にわたしたちの製品が採用された装置や設備を利用するお客さまの利便性が向上し、社会に役立つことが山洋電気の使命であると考えています」。

 社会に役立つ製品づくりを常に念頭に置いていると語る彼ら。医療機器の分野においては、シビアな製品性能や信頼性が特に重要になる。山洋電気の製品が、猛スピードで進む医療機器分野の発展において、今後さらなる可能性を見出していってくれるだろう。

お問い合わせ
  • 山洋電気株式会社
    山洋電気株式会社

    〒170-8451 東京都豊島区南大塚3-33-1

    TEL:03-5927-1035

    FAX:03-5952-1605

    URL:http://www.sanyodenki.co.jp/