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事例紹介 TOWA

半導体製造装置メーカーのTOWAが2016年初めに発売したFOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)対応モールド装置「CPM1080」が、「半導体・オブ・ザ・イヤー2016 」の半導体製造装置部門でグランプリを受賞した。技術のトレンドを先取りした同装置の開発では従来機をはるかに上回る高速・高精度の制御を実現するという大きな課題に直面した。

 CPM1080は、半導体デバイスの工場において半導体チップを樹脂で封止する工程で使う装置である(図1)。CSP(Chip Size Package)と呼ばれる超小型パッケージの最新技術のFOWLPに対応した最新鋭機だ。FOWLPは、従来のCSPよりも薄くできることから、電子機器業界で注目を集めている最先端のパッケージ技術である。直径300mmのウエハー(円盤状の半導体材料)、または320mm四方のパネルの表面にある多数の半導体チップを同時に樹脂で封止する。

図1 「半導体・オブ・ザ・イヤー2016」を受賞したTOWAの「CPM1080」と内部の制御システム
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 CPM1080の最大の特長は、「コンプレッション成形法」と呼ばれる加工方法を業界でいち早く採用していることだ。「トランスファ成形法」と呼ばれる従来方式では、金型の中に設けたキャビティ(凹み)にウエハーやパネルを入れて、外部から金型内に樹脂を流し込む。これに対して、コンプレッション成形法では、あらかじめキャビティ内に樹脂を投入し、その上からウエハーやパネルをプレス機で押しつける。コンプレッション成形法を採用することで、薄型化で有利とされるFOWLPでもさらにパッケージの厚みを抑えられる。しかも、樹脂の利用効率の面でも優れている。

思い切って制御システムを刷新

 このように多くの利点をユーザーに提供できることから同社は、この方式の採用を決断した。だが、市場でも先例がないことから開発は相当な困難が予想された。それでも採用に踏み切ったのは何故か。「お客様から確固たる支持を獲得するために、目先のニーズを追うのではなく、お客様がこれから必要になるものを提供することが重要です。だからこそ、敢えて新しい方式に挑むことにしました」(同社執行役員開発本部長の早坂昇氏)。

 開発の大きな焦点となったのが制御システムだ。ポイントは大きく二つ。一つは、複雑化する機構系の制御。中でも“難所”と見られていたのが、金型へ供給するための樹脂を塗布する、ディスペンサとレジンテーブルの制御だ。金型へ樹脂を搬送するために、あらかじめレジンテーブル上に樹脂をディスペンサから塗布するのだが、均一に塗布するには、レジンテーブルとディスペンサを高度な演算によって導かれる軌道に沿って動かす必要がある。しかも、樹脂の種類や特性に合わせて動きを最適化しなければならない。さらに、問題を難しくしたのが、ユーザーの要求に対応できる幅を広げるために1台の装置で液体の樹脂と顆粒状の樹脂の両方に対応することにしたことだった。「多くの要求に同時に対応するために制御システムの機能と性能を大幅に引き上げる必要があります。そこで制御システムを一から設計し直すことにしました」(同社開発本部装置開発部部長の喜多仁氏)。

 ここで役立ったのが、Ethernetベースの産業用オープンネットワーク規格「CC-Link IE」だった。CC-Link IEは、1Gbpsの高速大容量通信が可能。しかも、制御用データと情報通信用データの帯域が分かれており、制御に影響を与えずに大容量データを伝送できるのが特長だ。CPM1080では、機構系を駆動する複数のサーボアンプとコントローラの接続や、安全システムの制御にCC-Link IEを採用している。「制御のパフォーマンスが優れているだけでなく、多機能化にともなって大幅に増える装置内のデータを処理するシステムを設計する際に、高速大容量のデータを伝送できるCC-Link IEの特長が威力を発揮しました」(装置開発部課長代理の中嶋貴伸氏)。

 「高度な機能」と「シンプルで合理的な制御システム」という、相反する要求の両立にも貢献した。「CC-Link IEは安全のための通信を最優先で実行する機能を備えているので、一つのネットワークで機器の制御と安全システムの制御を同時に実現できます。この利点を生かして制御システムをシンプルにしたことで、装置の信頼性が高まりました」(中嶋氏)。

早坂 昇 氏
TOWA 執行役員
開発本部長
喜多 仁 氏
TOWA 開発本部
装置開発部 部長
中嶋 貴伸 氏
TOWA 装置開発部
課長代理

2倍以上の高速化を達成

 制御システム開発のもう一つのポイントは、キャビティ内の樹脂にウエハーやパネルを押し当てる際の圧力制御である。コンプレッション成形法では、トランスファ成形法に比べて圧力管理の精度に対する要求がぐんと厳しくなる。この要求に対応するためには、プレス機構に実装されている圧力センサの出力を制御システムにフィードバックする回路を大幅に高速化する必要がある。

 開発担当者は、フィードバック回路の刷新に踏み切った。具体的には、プレス機に実装された圧力センサが出力するアナログ信号を、プレス機構に搭載したモーターを駆動するサーボアンプに直接入力して制御するシステムを新たに採用した。センサ出力をデジタル・データに変換してからサーボアンプのコントローラに入力する従来システムに比べてフィードバックは確実に速くなる。「従来は最短でも2ミリ秒かかっていたフィードバックを、一気に短縮することができました」(装置開発部リーダー 岡本良太氏)。だが同社にとっては初めて採用するシステム。開発は難航した。「メーカーのサポートを受けながら工夫を重ねて、所望の性能を引き出すことができました」(装置開発部 北川哲也氏)。

岡本 良太 氏
TOWA 装置開発部リーダー
北川 哲也 氏
TOWA 装置開発部

挑戦が新たな可能性をもたらす

 こうした取り組みの成果は業界で高く評価された。CPM1080は2016年6月、半導体業界の発展に大きく寄与した技術や製品に与えられる「半導体・オブ・ザ・イヤー2016」(主催:電子デバイス産業新聞)で、半導体製造装置部門のグランプリを受賞した。次世代のパッケージ技術として普及が期待されているFOWLPの製造装置をいち早く実用化したこと。しかも、優れた生産性を追求していたことが受賞の背景にある。

 既存の技術にこだわらず敢えて新技術の導入に踏み切ったTOWAの開発チーム。ユーザーのニーズを重視し、困難な課題に果敢に取り組む彼らは、業界のトレンドを先取りした革新的な製品を今後も次々と生み出すに違いない。

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