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ADLINK、COMセミナー

IoT/IIoTのエッジやゲートウェイに適しているとして、コンピュータの機能を小型フォームファクターに搭載したCOM(Computer on Modules)に注目が集まる中、台湾に本社を置く組み込み用ボードメーカーのADLINKは、「IoTとともに進化する産業用組み込みシステム開発 ~COMの最新活用術~」と題したセミナーを2016年9月12日に秋葉原UDXカンファレンスにて開催し、COMの最新トレンドと同社の取り組みを紹介した。

 ADLINK Technology, Inc.(以下、ADLINK)は「COM」(Computer on Modules)に分類される小型のコンピュータ基板をワールドワイドに提供する一社であり、COMのトレンドや同社の取り組みを紹介するセミナーを2013年から毎年日本で開催している。

200人を超える来場者で会場は満席に。IoTに対する関心の高さ、 ADLINKへの期待に溢れていた
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 COMは、プロセッサやDDRメモリなど必要最小限の機能を搭載した小型基板で、I/Oやアプリケーション固有の機能を搭載した「キャリアボード」と組み合わせて使う。アプリケーションに依存しないプロセッサ周辺の共通的な部分の設計が不要になることで開発期間を短縮できるのがメリットで、そのぶんの開発リソースを付加価値の向上に振り分けることができる。

 COMは従来は産業機器に組み込まれる使い方が一般的だったが、2015年頃からは「IoT」(モノのインターネット)や「IIoT」(インダストリアルIoT)のセンサーノードやゲートウェイに適するとしてあらためて注目が集まっており、今回のセミナーも満席で開催された。

 冒頭でADLINKジャパン代表取締役の服部幹雄氏が、「昨年を上回る人数のお客様に参加していただき、IoTやIIoT分野でのCOMの関心の高さを感じています。ADLINKは、COM製品を単なるハードウェアとしてだけではなく、『アプリケーション・レディ・プラットフォーム』として提供するようこれからも努めていきます」と挨拶して幕を開けた。

IoTサービスに適したクラウドを提供

ADLINK Technology, Inc
Executive Vice President of Global Module Computer Product Segment
Dirk Finstel氏

 セミナーではADLINKから4件の講演があった。最初に、モジュールコンピューティング部門のExecutive Vice PresidentであるDirk Finstel氏が「IIoT機器の開発を加速するCOMの最新技術」と題して講演した。

 まずCOMのフォームファクターやピン割り当てなどの規格化については、ADLINKは業界団体であるPICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)やSGET(Standardization Group for Embedded Technology)において主導的な役割を担っていると述べた。

 次に、同社のCOM製品の優位性について説明し、拡張温度試験や衝撃試験に対応した高い信頼性、業界最高レベルのMTBFに表される品質、クラスBに準拠する低エミッション、10年もの耐用期間、キャリアボードの設計サポート(「A+サービス」)などを挙げた。

 Finstel氏は、顧客がIIoTのシステムやサービスを短期間で構築できるようにソリューションを提供していくほか、COM規格の標準化にも引き続き関わっていく考えを示した。

 また同氏は、「予兆保全や遠隔監視を実現するIIoTプラットフォームの最新ソリューション」と題して、同社のCOM製品に搭載されているシステムマネージメント機能である「SEMA」(Smart Embedded Management Agent)と、SEMAのデータを集約しIoTサービスとして展開できる「SEMA Cloud」(図)についても講演した。

図. IoT/IIoTサービスに適したSEMA Cloudのアーキテクチャ
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 SEMAは同社のCOM製品に搭載されたマイコンによって実現される管理機能およびミドルウェアであり、基板の温度、CPUの動作状態、ファンの状態などのモニタや、電源シーケンスの制御などを担う。SEMAのAPIを通じてユーザーエージェントを動作させることもできる。

 一方のSEMA CloudはIoT/IIoTに特化したクラウドサービスプラットフォームで、マネージメントポータルをはじめとする種々の機能があらかじめ用意されている。SEMAでCOMからデータを収集し、SEMA Cloudで集約および分析することで、IoT/IIoTサービスを早期に立ち上げられるのがADLINKの強みのひとつであると同氏は訴求した。

PICMG COM Express Type 7のプロトタイプが登場

ADLINK Technology, Inc
Senior Director of Module Computer Product Segment
Henk van Bremen 氏

 モジュールコンピューティング部門のSenior DirectorであるHenk van Bremen 氏は、「IIoT向け組み込みボードの規格動向とロードマップ」と題して、「PICMG Type 7 & COM Express編」および「SMARC 2.0 & Qseven編」の2本の講演を担当した。

 数あるCOMのフォームファクター規格の中で、PICMGによって規定されたのが「COM Express」であり、現在はRev 2.0とRev 2.1で定められた「Type 6」および「Type 10」が主流になっている。

 さらに最新のCOM Express COM.0 Rev 3.0では、Intel® Xeon® D-1500 シリーズプロセッサなどを対象にした「Type 7」の規格化が進められていると述べた。ビデオとオーディオ関連のインタフェースを廃止する一方で、PCI Exressレーンを増やすとともに10GbのEthernetピンの新設などが主な変更点であり、メディカルなどハイエンド用途を狙う。

開演中は展示ブースも設置し、開発中の「Express-BD7」の試作品の動作デモなどが行われた

 Bremen氏によると、Type 7の仕様がPICMGから正式にリリースされるまでにはまだ数か月ほどかかる見通しだが、ADKINKは「Express-BD7」として製品を開発中であり、セミナー会場では試作品の動作デモが行われた。

 続いてBremen氏は、IoT/IIoTのエッジデバイスにも適したCOMとして、SGETが定めた「SMARC」(Smart Mobility ARChitecture)を紹介した。ボードサイズは82×52mmまたは82mm×80mmで、ローパワーのインテルアーキテクチャまたはARMプロセッサが対象である。4Wから10Wで動作し、バッテリ駆動も想定する。

 ADLINKは、最新のType 7を含むCOM Express対応製品、SMARC 2.0対応製品、および、やや古い規格ながら欧州で好まれている「Qseven」フォームファクター対応製品を今後もラインアップしていく計画だ。

SMARC 2.0のショートサイズ(82×52mm)に準拠した同社のCOM製品例

各社がエコシステムを構築

 招待講演は2件である。まず、インテルでIoTパートナー・イネーブルメントのダイレクターを務める佐藤有紀子氏が「いよいよ実現するIoTが創る新たな世界」として、IoTに対するインテルの取り組み紹介した。

 インテルは2013年からIoT事業を推進しており、プロセッサをはじめとする半導体製品を提供する一方で、モノからクラウドに至るend-to-endなソリューションを取り揃えたい考えのもと、水平展開向けのスケーラブルなビルディングブロックの提供、垂直統合向けのソリューションの提供、およびエコシステムパートナーの整備に努めているという。

 IoTのエッジデバイスから送られてくるデータを集約するゲートウェイに関しては、セキュリティや分析に関するインテルのソリューションを、ADLINKをはじめとするエコシステムパートナーに提供していく。

 また、IoTビジネスの創出を加速するために、インテルは2016年2月に「Open Connectivity Foundation(OCF)」を業界各社と立ち上げた。半導体を提供するだけではなく、業界でリーダーシップをとりながら、IoTならインテルと組みたいと考えてもらえるような仕組み作りを進めていく考えだ。

丸文 システム営業本部営業第2部 森 大実氏

 ADLINKのアライアンスパートナーである丸文からは、システム営業本部営業第2部組込ソリューション課の森 大実氏が「IIoT機器設計の落とし穴!COMExpressキャリアボード設計応用」と題して、キャリアボードの設計ポイントについて講演した。たとえば熱設計に関しては、プロセッサの規定値を超えないようにできるだけ冷やして運用することが重要と指摘。また、キャリアボードのインピーダンス設計や電源シーケンス設計に注意すべきと述べた。

 デバッグには、UEFI BIOSのコンソールリダイレクション機能やEFI Shellの活用を推奨した。あわせて、同氏が日ごろ使っているサードパーティ製のデバッグツールを紹介した。

 以上の講演ののち活発に質疑応答が行われた。セミナー会場ではADLINKおよび丸文がソリューションを展示した。

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