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概念設計でトポロジー最適化を活用し、 製品開発でのイノベーション創出を加速

自動車や航空機など、様々な分野の設計現場で、トポロジー最適化が活用されるようになった。コンセプト設計の段階で活用することで、経験や常識だけからは導き出せない斬新な設計案を見つけることができる。アルテアエンジニアリングの前嶋靖子氏が、「最適化技術によるコンピュテーショナル・デザインがもたらす設計プロセスの革新」と題して、トポロジー最適化の活用最前線を解説した。

前嶋 靖子 氏
アルテアエンジニアリング
solidThinking ビジネスディレクタ

 アルテアエンジニアリング(以下、アルテア)は、自動車向けのエンジニアリングサービスを提供する会社として1985年に誕生した。その後、高度な解析サービスを提供するため、先進的なCAEツールを開発し続けてきた。現在では「製品設計および意思決定の手法において、根本的な革新をもたらす」というビジョンを掲げ、独自のCAEツール群を駆使した、設計の品質と生産性の向上を支援するソリューションを提案している。

 同社が特に注力しているのが、設計者のインスピレーションを喚起し、イノベーションの創出を促す、CAEの新しい活用法である。設計後の機能検証や性能確認にCAEを使うだけではなく、コンセプト設計など設計プロセスの初期段階で、これまでにない設計の選択肢を探り出す。

実用化段階に入ったトポロジー最適化

 あらゆる製品の設計プロセスの中で、様々な最適化技術が活用されるようになってきた。中でも、トポロジー最適化は、人間の知識の範囲では思いつかない、環境に適応した生物のような形状や構造を、新たな可能性として提示してくれる。このため、コンセプト設計の段階で、設計者の発想を補う手段としての利用が始まっている。

 これまでのトポロジー最適化によって導き出された理想的な設計は、形状や構造自体の特性は優れているものの、射出成形、切削やプレスといった既存の加工技術では製造できないことが多々あった。製造の容易性を考慮することなく、純粋に優れたかたちを追究していたからだ。それでも、「アルテアは、加工技術を考慮できるトポロジー最適化技術を開発し、より実践的な方向へと着実に進歩させてきました」(前嶋氏)という。そして、6、7年前から少しずつ利用事例が出始め、現在では自動車メーカーなどで盛んに利用されるようになってきた。

ユーザーと加工法の進化で効果増大

 利用が加速するブレイクスルーになっているのが、設計者の習熟度向上と、革新的な加工技術、特に3Dプリンターの進化である(図1)。

図1.トポロジー最適化と3D プリンターの連携効果
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 トポロジー最適化の使いこなしには相応のノウハウが求められる。まず、製品に加わる荷重や振動、拘束など、製品の利用環境を表現した設計条件を、設計者が的確に指定することが重要になる。さらに、型抜きの押し出し方向やスタンピングの方向、穴を開けない部分、最少部材寸法などの製造制約も、的確に付加することが重要だ。自動車業界や航空機産業では、こうした部分でノウハウを着実に蓄積しつつあり、部品の軽量化や部品点数の削減、剛性の向上、設計期間の短縮といった目に見える形で成果を上げている。もはや、トポロジー最適化は、技術革新を生み出すうえで欠かせない武器になっている。

 ただし、制約条件を指定し過ぎると、トポロジー最適化が導き出す自由な設計のよさが失われてしまう。ここで重要なブレークスルーになるのが、3Dプリンター技術の劇的な進歩である。3Dプリンターでは、従来の加工法では実現不可能な複雑な形状を、一括成形できる。このため、設計条件を純粋に追求したトポロジー最適化ならではの尖鋭的な設計も忠実に具現化できるようになった。トポロジー最適化と3Dプリンターの相性抜群の組み合わせによって、これから数々のイノベーションが生まれることだろう。

概念設計用に特化したツールを用意

 アルテアでは、CAEソフトウエア製品群「HyperWorks」の中の1つとして、形状最適化とトポロジー最適化を一括実行できる「OptiStruct」と呼ぶツールを提供してきた。同社はさらに、設計プロセスの初期段階で、より気軽にCAEを活用できる新たなソフトウエアブランド「solidThinking」を立ち上げた。そこに、本当に必要な機能だけに絞り込んで、より簡単に利用できるようにしたトポロジー最適化による形状生成ツール「INSPIRE」を投入した。

 INSPIREは、設計者がよりよい設計案を探るうえで、気づきを得るために使うツールである。製品に一方向から荷重が加わるような単純な問題の場合ならば、設計者の経験や構造理論上の常識から、効果的な構造を導き出すことは簡単だ。しかし、3次元的な多方面からの荷重が加わる複雑な問題では、直感や理論だけでは対処できない。INSPIREはこうした複雑な条件が与えられた時に、最適な設計に近づくための視点を設計者に気づかせてくれる。

 INSPIREは、(1)トポロジー最適化、(2)静荷重・振動・座屈を基にした構造解析機能、(3)STL形式からCAD形式に変換するフィット機能、(4)ダイレクトモデリング機能、(5)直感的なユーザー・インタフェースによる簡単な操作--といった特長を備えている。STL形式のデータをなぞってCAD形式のデータを構築する「polyNURBS」と呼ぶ機能を含め、全体で3時間程度のトレーニングで使えるようになる。

 INSPIREを使うことで、軽量化、材料コストの削減、部品点数の削減、補強、共振性能の改善などが可能になり、これまで以上に設計が高品質になったり、デザインのイタレーションが半減したりという成果も出てきている。

 講演では、レーシングカーのブレーキペダルをはじめ、ドローンや人工衛星のアンテナの支柱など、数多くの設計事例が紹介され、トポロジー最適化と3Dプリンターの連携の強みがアピールされた(図2)。

図2.ユーザー事例: 地球観測衛星向けアンテナ支柱の設計
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