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セミナーレポート つながる時代のものづくりフォーラム

産業オープンネットワーク「CC-Link IE」の普及活動を展開するCC-Link協会(CLPA)は、2016年9月13日、「つながる時代のものづくりフォーラム」を大阪市内で開催した。IoT活用によるものづくりの生産性向上や品質改善をはかる例が増える中、広帯域のCC-Link IEでFAとITの連携がどのように実現しているのかを、講演や展示などで紹介した。

中村 直美氏
CC-Link協会 事務局長
林 要氏
GROOVE X 株式会社 CEO

 フォーラムではまずCLPAの中村直美事務局長がCC-Linkの普及状況などについて説明した。各種の産業用ネットワークの中で唯一日本生まれのCC-Linkは、日本で50%以上のシェアを占めるなど、アジアのものづくりの現場で広く採用されており、対応製品も約1600に達したという。特にEthernetベースのCC-Link IEは、他の産業用ネットワークにはない1Gbpsの広帯域性を生かし、大容量のデータ転送が求められる現場で採用が拡大中だ。

 一方でさまざまなネットワークが混在する生産現場の事情を踏まえ、他のネットワークとの接続性確保も進めている。センサネットワークのIO-Link、欧州のPROFINET、ITとの連携インタフェースOPC UAと、それぞれ接続するための標準仕様を策定中という。

 基調講演ではGROOVE XのCEO、林要氏が「未来におけるロボットと人の関係性」をテーマに講演した。人型ロボット「Pepper」の開発リーダを務めたことでも知られる林氏によると、ロボットには人の仕事を代替する機能性重視のものと、人の能力向上を支える感性重視のものがあるという。Pepperは後者にあてはまり、GROOVE Xではそのコンセプトを推し進め、人間のような会話はできないものの、自動的に人の相手をしようとする姿が人の無意識な領域に訴えかけるロボットを開発中とのこと。その領域が「今までのITが抜けていたところ」(林氏)であり、「今後のロボットはハードとソフトとクリエイティブが三位一体になることが大切」と強調した。

山本 宏氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 技術理事 グローバル・エレクトロニクス・インダストリー CTO

 続いて日本IBMのソフトウェア事業技術理事で、グローバル・エレクトロニクス・インダストリーCTOの山本宏氏が特別講演を行った。「次世代日本のものづくりへの挑戦」と題した講演では、ものづくりにとってのIoTの意義を中心に語った。山本氏は「IoTの現在の事例は、工場内に閉じたループによるものが多い」とし、「本命は企業の枠組みを超えてつながるパブリックなループであり、イノベーションはそこで起きる」と強調した。産業系の機器ではデータは社外秘になることが多いが、クラウドにユーザがデータを提供すると、ユーザは新規事業のヒントなどのリターンを得られるようにすることで、産業機器でもパブリックループの実現とそれによるイノベーションは可能という。

 このモデルを実現するために、同社はAIや機械学習をベースにした新しいコンピューティングモデル「Cognitive Computing」及びこの技術に基づく「Cognitive Manufacturing」を提唱している。人間による認知や意思決定をサポートするもので、機械学習により「プログラミングによるルールベースではなく、ラーニングベースの判断を可能にする」(山本氏)という。

小規模向けネットワークを追加

楠 和浩氏
三菱電機株式会社 名古屋製作所 e-F@ctory推進プロジェクトグループ マネージャー
大谷 浩之氏
CC-Link協会 テクニカル部会長

 山本氏らが提示したIoTの将来イメージを受けて、ものづくりをIoTで支援する各社の担当者がそれぞれのソリューションを紹介した。三菱電機名古屋製作所e-F@ctory推進プロジェクトグループ マネージャーの楠和浩氏は、FAとITを連携させる同社のソリューション「e-F@ctory」について解説した。IoTで生産現場のFA機器から生産にまつわるデータを集めることが容易になったが、楠氏は「データは、単に取ればいいというものではない。何を調べたいのか、目的が第一であり、そのためにはデータを個々のIDとひも付けする必要がある」と指摘する。

 同社のe-F@ctoryでは、現場のFAのセンサと情報を分析するIT機器の間に、情報の中間処理を行うレイヤーを設けている。そのレイヤーに置く機器でセンサから集めた情報を生産指示の情報と突き合わせたうえで、上位のIT機器に送って分析する。「センサの情報は単なる“結果”に過ぎない。分析前に中間処理を行うことで、生産指示との因果関係を明らかにできる」(楠氏)という。また生データをやり取りすることがなく、ネットワークを流れるのは処理を済ませたデータのため、「万が一の際もノウハウが流出する危険性もない」(楠氏)。

 CLPAテクニカル部会長の大谷治之氏は、そうしたIoTによるデータ活用を支えるために、CC-Link IEが備えている機能や今後の機能強化などについて説明した。1Gbpsの広帯域性が特徴のCC-Link IEは、制御用のサイクリック通信と情報用のトランジェント通信を、同じネットワーク上で混在させることができ、「データ解析ツールと組み合わせた品質管理システムを構築できる」(大谷氏)という。さらに現場の安全確保のための通信を、コントローラをまたぐ形でやり取りできるため、工程間での安全情報の通信も可能だ。

 大谷氏は、CLPAが7月に発表した新しいフィールドネットワーク「CC-Link IE フィールドネットワーク Basic」についても紹介した。1GbpsのCC-Link IEが大規模なネットワークをカバーするのに対し、CC-Link IE Field Basicは100Mbpsで主に小規模のネットワーク向けに用意する。TCP/IP通信の混在も可能だ。CLPAは今年10月末からCC-Link IE Field Basic向けの開発環境を提供するほか、Eclipseなど汎用の開発環境上で動くサンプルソースや、PC上で動く検証テストツールを用意し、対応機器を開発するベンダを支援していくという。

CC-Link IEとの連携の重要性を強調

濱田 義之氏
シスコシステムズ合同会社 執行役員 CTO 兼イノベーションセンター担当
関 行秀氏
日本電気株式会社 第一製造業ソリューション事業部 バリュークリエイション部 部長

 CC-Link IEが描く将来のものづくりに呼応する形で関連ソリューションを展開するベンダの担当者も、続いて講演した。シスコシステムズ執行役員CTOの濱田義之氏は、FAとITの間に中間処理機能を持たせる「フォグコンピューティング」のコンセプトについて語った。フォグコンピューティングは現場に近いところで情報を解析し、必要な情報だけクラウドにアップロードする点で、CC-Link IEが掲げるコンセプトに近い。この仕組みを普及させるために昨年11月に「OpenFog Consortium」を立ち上げ、ベンダ間の連携推進と新しいビジネスモデル創出に取り組んでいる。

 濱田氏はフォグコンピューティングによる中間処理で、ロボットの予知保全や工作機械の状態監視を実現した事例などを紹介した。中間処理によるセキュリティ確保も可能で、危険なアクセスをネットワーク機器が検知した場合は自動的に切断するなど、「ネットワークをセンサ化する」(濱田氏)ことができるという。

 NECの第一製造業ソリューション事業部バリュークリエイション部部長の関行秀氏は、同社のIoTソリューションを紹介する中で、CC-Link IEとの連携の重要性を強調した。同社はSDNにより異なるプロトコル間の接続やスケーラビリティ確保に取り組んでおり、堅固なネットワークを実現することでものづくりの可視化に貢献している。その可視化の部分で、CC-Link IEとのパートナーシップは重要とした。

 またFAとITの間での中間処理の重要性も認識しており、生産現場により近いところで判定や予測を行うことで「脊髄反応のように瞬時に判断できる“五感IoT”」(関氏)の実現できるという。関氏はそうしたネットワークが効果をもたらした事例として、ラインバランス改善で生産性を向上したケースや、レーザ加工機の遠隔診断でダウンタイム削減を果たしたケースなども紹介した。

 フォーラムではこれら講演に加えて、14社のCLPA会員企業がCC-Link IEをベースにしたソリューションを展示。各ブースではフォーラムの参加者が出展者と情報交換する様子が見られ、講演が訴えかけた将来のものづくりのイメージを共同で昇華させていたようだ。

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展示会場では、総勢14社がさまざまな製品/ソリューションを展示した
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