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成長を生む技術を提案するSEMICON Japan

日本の半導体産業は、徐々に輝きを取り戻しつつある。そして、あらゆる産業に革新をもたらすIoTの利用シーンを広げるうえで、重要な役割を担うようになった。多様な応用機器の集合体であるIoT 関連市場の成長を支えるのは、多様な半導体デバイスの提供であり、多様な半導体製造技術の実現である。そして、高い技術レベルで多様な半導体デバイスを作り出すことでは、日本の右に出る国はない。SEMICON Japan 推進委員会の委員長を務めるSCREENセミコンダクターソリューションズ 代表取締役 社長執行役員の須原忠浩氏に、日本の半導体産業を取り巻く現在の状況と、そこでのSEMICON Japanの役割について聞いた。

――半導体産業の現状についてお聞かせください。

須原 忠浩氏
SCREEN セミコンダクターソリューションズ 代表取締役 社長執行役員

須原氏 2015年末から2016年春まで、残念ながら前年同期比でマイナス成長という状況でした。この状況を受けて、世界半導体市場統計(WSTS)2016年春期の予測では、世界市場は-2.4%、日本市場は-6.4%という暗い予想が出ていました。ところが現実は違いました。最近の統計によると、通年で1%もしくは2%、成長できる状況になっています。事業を通じた実感からも安定した装置需要を感じ、統計を裏付けています。思いのほか、明るい年になりました。

 予想よりも好調だった理由は、4Gのスマートフォンの高機能化が進んだことと、2015年の不調の要因となったDRAM価格が底を脱し、上昇に転じたことが挙げられます。

成長のドライバーが多様化

――2017年の見通しはいかがですか。

須原氏 2017年も、悪い要因が見当たりません。さらに成長するとみています。例えば、NANDフラッシュが設備投資のドライバーになっていますが、これから数年間はデバイス構造を2Dから3Dへと移行させる過程にあり、対応に向けた設備投資の拡大が期待できます。同時に半導体市場自体も拡大することでしょう。また、自動車での高度運転支援システム(ADAS)の普及や自動運転車、電気自動車の開発動向を見ても、半導体需要の爆発的増加が確実です。IoT活用の拡大とそれに伴うデータセンターの増強などからも、需要は増えます。

――成長要因が数多くありますね。成長を牽引する中心的な応用は。

須原氏 かつてのパソコンのように、特定の応用市場の成長が半導体産業全体を引っ張るシンプルな構図が当てはまる時代は終わり、多様な応用が牽引する時代になりました。

 あらゆる機器がネットにつながり、IoT関連の機器が、大きな半導体需要を生み出すことでしょう。ただし、従来のように特定応用機器の市況や技術トレンドだけを見て、事業戦略を考えるのは誤りです。IoTでは、さまざまな応用に向けた多種多様な機器の需要を寄せ集めることで、大きな成長を遂げるからです。

 そこで求められる半導体もまた多様です。過去は、微細加工技術が進化すると、メモリーやマイクロプロセッサーを製造する先端ラインの需要だけが集中して伸びました。ところが現在は違います。先端技術は14nm、16nmの生産が伸び、10nmへの移行が始まっていますが、28nm、40nm、90nmといった旧世代ラインも埋まっています。さらに、ウエハーの口径から見ても、300mm対応ラインだけではなく、200mm対応ラインも埋まっているのです。こうした需要の多様化が、現在の半導体産業の特徴です。

日本の半導体産業への期待は大きい

――多様な需要に、半導体産業はどのように対応するのでしょうか。

須原氏 装置や材料では、微細化のロードマップに沿って先端技術の開発を進めながら、同時に旧世代技術に新しい価値を付加した装置や材料を提案していくことが重要になります。例えば、既存の200mm対応の装置は、その当時の技術を使って作られたラインに導入する装置として開発されています。このため、現在の需要とはミスマッチがあります。最新の技術を要所に導入することで、時代が求める魅力ある製品に生まれ変わります。微細加工やウエハーの口径にかかわる部分以外でも、技術が大きく進化しているからです。半導体需要の多様化は、成長の切り口が増えたことを示し、装置や材料のメーカーにとってはチャンスだと考えています。

 製造装置メーカーには、IoTのユーザーとしての側面もあります。センサーを使って装置の稼働状況や内部の状態を監視し、予防保全や的確なメンテナンスなど価値の高いサービスにつなげることも重要な開発テーマです。

――デバイスメーカーはいかがですか。

須原氏 多様なIoTでの需要を満たす、多様なデバイスの提供は、少品種大量生産での効率を追求してきた半導体産業からすれば、大きなチャレンジです。ただし、日本の半導体産業は、極めて有利な状態にあると言えるでしょう。

 日本では、ロジックの先端ラインが45nm世代で止まってしまいました。しかし、メモリーの分野では3D NANDフラッシュの技術で東芝がリードし、投資の継続も発表しています。また、自動車やIoT機器の眼として爆発的な需要増が期待できるイメージセンサーでは、ソニーが世界一の位置にいます。さらに、IoT機器に無線機能を組み込むための電子部品では、日本企業がシェア4割と圧倒的な強さを誇っています。これからの成長市場の中で戦うための戦力は、日本に十分残されているのです。そして償却が終わった旧世代の工場をフル活用して、自動車向けやIoT機器に欠かせないパワー半導体やアナログ、センサーなど多様なデバイスを柔軟に生産できます。

 こうした日本のデバイスメーカーが持つ高レベルの多様性が1つのチームとして機能すれば、新しい時代を拓く上で、極めて強い力になり得ます。

日本の役割を世界に発信

――日本の半導体産業の役割は、ますます大きくなりそうです。そうした状況下で開催するSEMICON Japan 2016は、どのような場となるのでしょうか。

須原氏 SEMICON Japan 2016では、今の日本の半導体産業が持っている強みを世界と日本国内に広く発信できる場を目指しました。Super THEATERでは、半導体ユーザーから半導体産業に対する期待と、日本の半導体・電子部品業界の時代認識とこれからの戦略を、各界を代表するエグゼクティブが直接語ります。そこで発信するメッセージは、半導体産業の今後の方向性を指し示すことでしょう。

 展示会場では、IoT関連ビジネスの創出の場としての「WORLD OF IOT」をはじめとして、日本の半導体産業が持つ多様な技術の引き出しを披露する数々の展示が用意されています。そこでは、次の時代を開く糸口を探る、技術的な議論が半導体の作り手と使い手の間で活発に行われます。

 また、伸びゆく半導体産業を支える柱は人材ですから、若いエンジニアや学生に、もっと半導体に興味を持ってもらうためのプログラム作りに注力しました。

 SEMICON Japan40周年記念事業として、若い世代が共に学び、議論し、交流を深める場「MIRAI GAKKO」を開催します。IoTが自動車、医療、農業、エネルギーなどさまざまな産業に革新をもたらしつつあることから分かるように、あらゆる産業の成長は、半導体の成長と共にあります。半導体産業の明るい未来を、多くの若い世代に感じてもらえればと願っています。

――SEMICON Japan 2016に来場・出展する方々にメッセージをお聞かせください。

須原氏 これからの時代の中で求められる多様な要求に応える技術・製品・サービスが、SEMICON Japan 2016には数多く集まります。来場者と出展者のそれぞれの未来を拓く解を探しに、ぜひお越しください。

Profile
須原 忠浩(すはら ただひろ)氏
大日本スクリーン製造株式会社入社。米国子会社 社長を経て、専務執行役員/半導体機器カンパニー 社長。2014年 株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズが発足し代表取締役社長に就任。現在、同社 代表取締役 社長執行役員、SEAJ 副会長、SEMI Board of Directors。