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発見と革新が生まれる場所には常に、NIのデータ収集ソリューションがある

 ナショナルインスツルメンツ(NI)のデータ収集プラットフォームと、それをフル活用するためのエコシステムが、さまざまな応用分野にイノベーションを起こしている。その適用範囲は極めて広い。科学研究の最前線では、最先端の電波望遠鏡のシステムに組み込まれ、宇宙創世記の謎を探っている。また、最も精密で大規模な工業製品のひとつである戦闘機の開発現場でも、増大し続ける電子システムの制御ソフトウエアのテスト費用を最小化する手段として欠かせない存在になっている。

進化する電波望遠鏡で
宇宙の謎を探る

 「宇宙の夜明け」と呼ぶ最初の星や銀河が形成された時期に何が起きたのかを探査する施設が、オーストラリアの砂漠の中にある。5つの国と17の機関が共同で取り組む大規模プロジェクト、低周波電波望遠鏡「Murchison Widefield Array(MWA)」である(図1)。そこでは、NIのデータ収集プラットフォームが活用され、宇宙創世記の謎の探求を支えている。

図1 MWAでの観測画像
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エッジコンピューティングが必須

 MWAは、天空中での探索領域を、望遠鏡を機械的に動かすことなく、電気的な仕組みで狙い探査できる斬新な機構を備えている。望遠鏡全体は、128枚のタイル群として配列した、2048の分散型ダイポールアンテナで構成されている。そして、8つのタイルごとに1つの受信システムを置き、ここで受信した信号をデジタル化。総計毎秒300Gバイトのデータを光ファイバー経由でサーバーに伝送して、そこで詳細な分析をしている。

 ただし、アンテナで受信したデータのすべてをサーバーに送っているわけではない。特定の周波数の信号だけ抽出する「チャネライゼーション」と呼ぶ処理を施し、必要なデータだけを選りすぐって伝送している。いわば、IoTシステムでいうところのエッジコンピューティングを行っているのだ。この処理には極めて高い演算能力が要求される。そして、そうした高度な要求に応える受信システムを構築するのに、高い演算能力を実現できるFPGAを搭載したNIの「FlexRIO用コントローラ」が組み込まれ、活用されている。

研究者の手でシステム更新可能に

郭 峰 氏
日本ナショナルインスツルメンツ
マーケティングエンジニア

 NIのプラットフォームを採用する以前、MWAでは、受信システムの演算回路の開発を外部企業に委託していた。演算用のチップにはFPGAを利用していたものの、プログラム開発で使うVHDLやVerilogHDLなどハードウエア記述言語を扱える人材がいなかったため、内部の人材では開発できなかったからだ。信号処理技術の進化は日進月歩であり、常に受信システムを改善し続けて、最先端の電波望遠鏡であり続けたいところだ。しかし、システム開発を外部委託している限り、簡単にはシステム更新できない状態だった。

 NIのプラットフォームを採用したことで、「LabVIEW」と「LabVIEW FPGA」を開発環境として使い、プロジェクトのメンバーが簡単にシステム更新できるようになった。FlexRIO用コントローラはサイズが小さく、さらにOSも内部で動くためパソコンなしでも動作する。この特徴を生かして、パソコンと接続してプログラムを開発したら、すぐに受信システムに取り付けて利用できる。

 「NIのデータ収集ソリューションによって、MWAは、進化し続ける電波望遠鏡へと生まれ変わりました」(日本ナショナルインスツルメンツ マーケティングエンジニア 郭 峰 氏)。

航空機開発での
検証コストを劇的に削減

 自動車や航空機の機構を制御する組み込みソフトウエアの規模が、増加の一途をたどっている。それと同時に、ソフトをテストするためのテストシナリオも複雑になり、検証には莫大な費用を要するようになった。

 空飛ぶスーパーコンピューターと呼べる戦闘機の開発では、その傾向が極めて顕著である。極限の性能を、極限の信頼性とともに実現するためには、開発時の厳重な検証が欠かせない。NIのプラットフォームとエコシステムを活用することで、「厳しいテストの要求に応えながら、低コスト化に成功した例が出てきています」(郭氏)。

戦闘機の開発でもテスト費用の削減が課題

  戦闘機のソフト開発におけるテストは、試作機を用いた方法から、 HIL(Hardware in the Loop)と呼ぶシミュレーションを使って実験室内でテストする方法へ移行している(図2)。HILとはエンジンや機体など機構の挙動を数式モデルで表現し、パソコンもしくは工業用コントローラ上で再現して、検証対象となる制御ソフトをリアルタイムで動かして検証する技術である。

図2 戦闘機中の各機構を制御するソフトをHILで検証
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 近年では、自動車を制御するECUのテストなどにもHILが使われており、試作機を使ったテストよりも、数多くのケースを想定したテストを短時間かつ低コストで実施できる。ちなみに、富士重工業ではハイブリッド車「スバルXVハイブリッド」の開発で、NIのプラットフォームを利用したHILをモーター制御の開発に活用し、テスト期間を1/20に短縮した実績を挙げている。

 スウェーデンのSAAB社では、同社の第3世代の戦闘機の開発までは、HIL用ハードウエアとして自社開発したカスタム品を利用していた。そして、増大し続ける戦闘機用ソフトのテスト費用を抑えるため、「Gripen C/D」の開発から、NI社の汎用性の高いデータ収集プラットフォームをベースにしたHILへと移行した。例えば、燃料系統の制御ソフトの検証では、燃料系統の挙動をシミュレーションする部分で「LabVIEW」と「CompactRIO」を使った。カスタム品を汎用品に替えた効果から、テスト費用は大幅に低減した。

  ただし、燃料センサーの挙動については、依然としてカスタム品を開発して利用していた。それまでのNIのハードでは、航空機や自動車、重機などで扱う大電流の信号を直接入力することができなかったからだ。

HILに特化したハード製品をNIが投入

 NIは、信号のルーティング、スイッチ、負荷、信号調節を標準化するHILに特化したハード「SLSC(Switches,Loads,SignalConditioning)」を発表した。これで、例えば、大電流の信号を、小さな電流に変換して扱える、これまで欠けていた機能を実現するという。

 そしてNIはSLSCの仕様を公開し、対応ハードをサードパーティーの手で自由に開発できるようにした。「SLSC対応のハードは、基本的な機能のものに関しては、近日中に発表予定です。専門性の高い専用ハードについては、各応用分野のノウハウを持ったサードパーティーの参入を後押ししていく予定です」(郭氏)。

  SLSCを先行活用したSAAB社では、燃料センサー部分のシミュレーションも外部調達したハードの利用が可能になった。その結果、最新の世代機である「Gripen E」の開発ではテスト費用をさらに20%削減できたという。

  SLSCの投入によって、NIのプラットフォームとエコシステムを活用したHILの価値が、ますます高まったと言えよう。

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