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総論

革新が進む製造業をめぐるトレンドの最先端の話題を取り上げるフォーラム「FACTORY」。2014年3月の初回から数えて7回目に当たる「FACTORY 2016 Spring」が2016年3月14日に東京で開催された。今回のテーマは、「人智五感を超えて進化する工場」。会場には、スマート工場の実現を推進するキーパーソンたちが約600名が集まり、製造業に大きな変革をもたらすIoT(Internet of things)やAI(人工知能)をめぐる最先端の技術や製品に関する講演に熱心に耳を傾けた。

 現在、ものづくりの現場が最先端技術の導入で大きな変貌を遂げようとしている。これまでもIT(情報技術)やFA(自動化)によって省力化・自動化を進めてきたが、ここにIoTやAIなどの最新技術を取り入れることで、知能化・自律化を目指す動きが加速し始めたのだ。

 これらの先進技術を活用することによって、ものづくりはどのように進化していくのか―。こうしたテーマで展開された「FACTORY 2016 Spring」をリポートする。

深層学習で生産ロボットを知能化

西川 徹氏
Preferred Networks
代表取締役社長
最高経営責任者

 基調講演には、トヨタ自動車やファナックとの協業を通じて製造業のAI活用で世界をリードするPreferred Networks(PFN)のトップである西川徹氏が登壇。「製造業でのIoT活用を加速するディープラーニング」と題して、「IoTの普及によるデバイスの進化」「人工知能の進化」「分散協調型の新しいコンピューティング」の3つによって、どのような変革が起こるのかを解説した。

 同社は、AI 技術であるディープラーニング(深層学習)を活用して、カメラで撮影した画像データの中から駐車場を認識する研究開発をパナソニックと共同で推進中だ。従来は木漏れ日のような風景画像では駐車場を認識することが困難だったが、現在は問題なく検知可能なレベルに達したという。

 西川氏は、「ディープラーニングと分散コンピューティングを機械の制御に適用することによって、さらに賢い工場が実現できる」と指摘する。その実例して、同社がファナックと共同で進めているバラ積みロボットの知能化の取り組みを紹介した。

 バラ積みロボットとは、部品が無造作に詰め込まれた箱の中から1つずつ取り出して、次工程に渡すロボットである。「制御プログラムの作成は、作業ごとに細かい調整が必要で、職人芸のような仕事です」(西川氏)。ここにディープラーニングを適用すると、細かい指示を与えなくても、つかみ方を自動的に学習するようになる。実証実験では、約8時間の学習で成功率を9割まで高められた。

 PFNは、AIを活用する環境の整備にも取り組んでいる。2015年には同社が開発したディープラーニングのフレームワーク「Chainer」をオープンソース・ソフトウエアとして公開。世界規模で技術コミュニティが形成されており、製造業を含めて現実への応用が進みつつある。

ITとOTが融合した新基盤が必要

Bryan Tantzen氏
Cisco Systems, Inc.
Senior Director, IoT Vertical Business Unit

 続いて登壇した米Cisco Systems社のBryan Tantzen氏は、工場のスマート化を実現する秘訣を語った。同氏は、IoTを利用した製造業のスマート化を支援する業務に参画し、グローバルな規模で活動している。同社は、ヤマザキマザックやファナックとの共同プロジェクトを立ち上げており、これらプロジェクトにも同氏はかかわっているという。

 同氏は、「ITとOT(Operational Technology)の融合が重要な課題」だと指摘する。両方の技術を統合した「デジタル・マニュファクチャリング・プラットフォーム」が必要だという。

 講演では、これを実現するためのプロセスも紹介した。「中長期的な戦略を策定するのも重要だが何カ月も議論していてはITの進化に追随していけなくなります。優先順位を決めてパイロットラインで素早く検証することが重要なポイント」(Tantzen氏)だと強調した。

製品のサービス化が加速する

荒木 健吉氏
ソフトバンク
法人事業開発本部
事業戦略企画室長

 フォーラムを締めくくる特別講演には、ソフトバンクの荒木健吉氏が登壇。「IT・IoTが変えていく超産業化と暮らし」と題した講演の中で、将来のサービス市場を予見するとともに、同社のビジネス戦略を披露した。

 荒木氏は、「IoT市場は2020年で13兆円。内訳はデバイスが1兆円、ネットワークが4兆円、サービスが8兆円。市場の中でもサービスの占める割合が突出している」と指摘。このため、同社もサービス市場への参入を考えているという。

 サービス市場が急増する理由は、製品の売り切りというビジネスモデルが、サービスの従量課金というモデルに変革するからだ。荒木氏はエアコンを例にとって、この変革を説明した。

 顧客がエアコンを購入する理由は、快適な空調を得たいためだ。エアコンという製品は手段であり、目的ではない。「IoTを利用すれば、快適な空調というサービスを提供して課金するビジネスモデルが生まれる可能性がある」(荒木氏)。

 ソフトバンクは、IoTのサービス市場への参入を見据えて、2014年に米GE(General Electric)と提携。予測分析ソフトとIoT/M2M(マシン・ツー・マシン)技術を組み合わせたプラットフォームの設計・開発・構築で協業し、GEが提唱する「インダストリアル・インターネット」を推進していく計画だ。

 この取り組みの中核となるのが、IoTの実現するためのソフトウエア・プラットフォーム「Predi x」である。既に同社は、Predixを活用したソリューションをLIXILグループのLIXILトータルサービスに販売。戸建て住宅向けに浴室を接地する施工員の手配の効率化に貢献しているという。

新潮流をリードする企業が続々登壇

 このほか、日本マイクロソフト、パナソニックソリューションテクノロジー、PTCジャパン/GEデジタル、ストラタシス・ジャパン、シンクロン・ジャパン、トレンドマイクロの各社が登壇し、ものづくりの世界に向けたIoTやAI、および関連製品・技術に関する最新動向を解説した(PTCジャパン/GEデジタル、シンクロン・ジャパン、トレンドマイクロの講演は、次頁以降を参照)。

 講演会場前では、アドバンテック、アラクサラネットワークス、シスコシステムズ、Coltテクノロジーサービス、gemalto(旧セーフネット)、パナソニック ソリューションテクノロジー、PTCジャパン、トレンドマイクロ、ザイリンクスが最新ソリューションを展示した。