産総研が聞く 明日への扉日経テクノロジーオンライン

最先端のナノスケール観察・分析技術、産総研が開放へ本腰

「溶液中」「ありのまま」「リアルタイム」で観察できるナノイメージング・ソリューションズ・プロジェクトを打ち立てる

  • 大久保 聡
  • 2016/06/24 00:00
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 産業技術総合研究所は、保有する世界最先端の観察技術や解析技術を統合する「ナノイメージング・ソリューションズ・プロジェクト(Nano-Imaging Solutions Project、以下NISP)」を打ち立てた。ナノ材料や細胞がどのような状態であるかを観るための「世界トップレベルの技術とソリューションを社会に提供」(産総研)する中核技術構築プロジェクトとしてNISPを位置付け、企業や大学、研究機関など、産総研以外に有料で開放する。それにより、産総研の技術を企業が手掛ける製品開発や大学などの研究の進展に生かすことが狙い。NISPは機能の恒久化を目指している。現在もすでに利用可能であり、一般からの評価依頼を受け付ける。

 NISPでは、高分解能誘電率顕微鏡や超解像蛍光顕微鏡、大気圧走査型電子顕微鏡といったナノスケールの観察装置、多様な可視化技術や画像処理技術、AI技術などによるデータ解析技術、さらにはこれらの技術分野において世界第一線で活躍する産総研の研究者によるコンサルティングを組み合わせる。「これまで見ることができなかったモノを可視化」(産総研)するだけでなく、可視化した“モノ”の解釈や判断を含めたソリューションを提供する。

 分析依頼を受け付ける企業や研究機関はこれまでにもあった。最先端の観察技術を利用できる場もあった。これに対しNISPは、従来の企業や研究機関が保有していなかったり、あるいは世界最先端に位置づけられたりする装置を利用でき、さらに観察から得たデータ解析にも世界第一線の研究者が関わることが特徴である。観察装置を複数備えており、企業などからの依頼内容に応じて、最適な観察技術や分析技術を割り当てることが可能とする。

 NISPの利用領域としては、医療や創薬、食品、化粧品などを想定している。さらに、既存の観察技術では把握し切れなかったナノスケールの物体の状況を解析したいと考える企業は多分野にわたることから、産総研は広い分野からの利用も受け付けたいとの考えだ。依頼内容によっては、NISPの観察技術や分析技術で現段階では明確な答えが出ない場合がある。だが、NISPが保有する観察装置などは研究中の技術であり、今後も発展していくので、仮に明確な分析結果が得られない場合には依頼企業と産総研の共同研究に発展させて対応していくとする。

 NISPの中核を成す技術は、大きく5つある。

  • (I)すでにサービスを提供可能な技術
    • 1. 分子構造解析(誘電率顕微鏡を活用)

      例えば、液中の生物試料やナノ有機材料を染色や固定化なしで、分解能10nmで観察できる。

    • 2. 分子動態解析(超解像顕微鏡技術を活用)

      ガン細胞や幹細胞の微細構造や核内のゲノムを30nm~40nmの分解能で観察できる。

    • 3. 細胞機能解析(大気圧電子顕微鏡を活用)

      細胞・組織の詳細構造など水中の複数のナノ構造体を、大気圧下でありながら分解能8nmで観察可能。

    • 4. 画像解析技術(スマートイメージングを活用)

      画像など観察した膨大なサンプルからAI技術を応用して効果的に、形態変化や動的変化といった異常部分を見出す。

  • (II)実用化に向けて検討中の技術
    • 5. 超光子素子(分光フォトンイメージング技術を活用)

      1つひとつの単一光子を、その波長を含めて高感度に測定でき、検出効率や雑音の低さは世界トップの性能を誇る。

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 産総研は、NISPに持ち込まれた観察依頼や相談に合わせて、上記の観察技術や解析技術を選定する。依頼者は観察したいモノは分かっていても、観察対象に適した観察方法を明確に把握しているとは限らないからだ。

 NISPを利用すると、具体的にどのような観察・解析ができるようになるのであろうか――。日経テクノロジーオンラインでは、NIS中核技術構築プロジェクトを打ち立てたメンバーに、NISP設立の意図や依頼者のメリット、構成する技術の詳細や将来展望、そして観察・解析の依頼方法を聞いた。