産総研が開く、明日への扉日経テクノロジーオンライン

産総研、国際基準の計測サービスで企業の製品開発を支援

従来の計測分析サービスで測れないモノを測りたい、より高い精度や信頼性を確保したいなど様々な要望に対応

  • 大久保 聡
  • 2016/09/23 16:00
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正しく評価していますか? リチウムイオン電池の性能

――これまでにも計測技術を指導したことは?

石川氏 これまで産総研が無償で対応できる範囲では、計測を受託したり、正しい計測を実現する技術を指導したりするための制度が完備されているわけではありませんでした。そのため無償の範囲では、企業側が産総研に依頼しにくいという事態が多々あったことがこの1年の経験で分かりました。今回、有償の技術コンサルティングという制度が整うことで、企業側が産総研に依頼しやすくなったと考えています。我々は保有する技術を社会に還元できる機会を待ち望んでいましたので、依頼者が増えることを大いに期待しています。

――有償の技術コンサルティングの方が、企業側にとっては助かるのですか?

石川氏 そうなんです。我々は当初、有償のサービスへ切り替えることでクレームが寄せられるかもしれないと考えていました。しかし、そのようなことはありませんでした。無償で対応できる範囲のサービスに対し、依頼する側は大きな期待を抱くことはないからだと思います。

 計測サービスでは得られた結果に対する責任の所在は重要です。無償の場合、その問題の解決まで責任を持って対応してもらえるか、曖昧に捉えられてしまいます。企業側からは「有償化によってサービスの確実性・継続性が確保されればありがたい」という声も寄せられていました。費用を払ってでも、きちんとしたサービスを得られる方が、依頼する側にとって重要であるといえるでしょう。

――計測技術によるコンサルティングでは、どのような依頼を受け付けるのでしょうか。

石川氏 さまざまな計測を利用可能です。計測装置の認証に関する技術コンサルティングや振動校正の信頼性評価、熱量の計量技術など、産業界の方々に話をうかがうと要望も多岐にわたっています。

 例えば、「現在開発中の製品の性能が本当に高いのか、正しく計測できないので助けてほしい」という依頼も寄せられます。海外から計測装置を導入したいので力になってほしいという依頼もありました。計測装置導入にあたっての技術的なアドバイスなどを、依頼主と一緒に海外に出向いてコンサルティングしてもらえないかというものです。さらには、企業間で取引する際に、ある測定値について双方で違いが生じ、正しい測定値は何かを求めて産総研に計測を依頼されたこともあります。産総研で対応できるものであれば、広く依頼を引き受ける考えです。

リニアック(基準放射光発生装置)
この装置から発生される正確な強度のX線により、電離箱などの放射線測定器を校正する。正確な放射線(X線)強度の計測や発生は、ガンの放射線治療の最適化に必要不可欠。
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――産総研には世界トップクラスの計測技術があると聞きます。そうした“産総研ならでは”の装置を使いたいという要望も多いのでしょうか。

石川氏 例えば、計測用X線CTスキャナーで計測してほしいという要望はよくあります。X線CTというと医療用と思われるかもしれませんが、ここでは医療用ではありません。工業製品などの内部の複雑な3次元形状を非破壊で計測する用途に使います。産総研の計測技術では、世界トップレベルの測定精度を実現しています。

精密な寸法測定ができるX線CT装置
通常のX線CT装置では、内部構造の観察はできてもその寸法を正確に測定することはできない。しかし産総研が開発したX線CT装置では、X線源、被観察物、およびX線撮像素子の位置を厳密に設定・維持することにより観察された内部構造の拡大率が厳密に定まるので、その寸法を非破壊で精密に測定することができる。
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 “産総研ならでは”という計測技術を欲する案件としては、最近、リチウムイオン電池の劣化を早くかつ正確に測ってほしいという要望が目立ちます。産総研はインピーダンスを極めて高精度に測る技術を保有しており、この計測技術を使うことで劣化を素早くかつ正確に測ることが可能です。

 この他、第5世代の移動通信システム、いわゆる5Gで用いられるミリ波領域のアンテナ開発に必要な測定・評価を行ってほしいという声もあります。

電気光学効果を利用したホーン型ミリ波アンテナの近接場電界強度分布の測定
通常、電界強度分布測定に用いる良導体の金属アンテナは周囲の電界分布に影響を与えるため、特にミリ波アンテナ近傍の狭い空間で電界強度分布の正しい測定が難しかった。産総研では、この電界強度分布測定に絶縁体の電気光学素子をアンテナへ用いること、また電解強度信号の取り出しに絶縁体である石英光ファイバを用いることで、測定系による電界分布への影響は大幅に低減し、正確な電界強度分布測定を実現している。
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