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電子機器設計の新たな潮流 これは、革新の始まりだ

電子機器設計を熟知する専門家とアルプス電気の技術陣の討論を通じて、新発想の圧接コンタクト(micro clip)は、プリント配線基板の高速化や高信頼性化、小型化を推し進める上での強力な武器になる可能性を秘めていることが分かった。討論レポートの後編となる今回は、圧接コンタクト(micro clip)の進化の余地を探った。基板や電子部品の間をつなぐコンタクトやコネクタは、長い間進化が停滞してきた分野だ。電子機器の設計者は、おなじみの既存技術の中から条件に合った技術を選択し、機器設計に利用している。圧接コンタクト(micro clip)の登場によって、停滞は破られ、新機軸でのコンタクトの進化が始まった。今後の電子機器設計に、どのような潮流を生み出していくのか。圧接コンタクト(micro clip)の将来展望について徹底討論した。

伊藤 これまでの議論で、圧接コンタクト(micro clip)は、プリント配線基板のさらなる高速化、高信頼性化、小型化を後押しする可能性を秘めていることが分かった。ただし、市場投入されている圧接コンタクト(micro clip)が、現在使われている全てのコンタクトやコネクタをすぐに置き換えてしまうとは思えない。ここからは、今後の進化の余地について議論したい。

低背から高背へと製品を拡充

久保寺 発売されている製品は、初期高さが1.2mm、圧接時の高さが0.7mmである。プリント配線基板を重ねて接続する場合、その間隔は、この高さに準じる。これでは低すぎて、基板上に搭載できる電子部品が限定される。圧接コンタクト(micro clip)の潜在能力を考えれば、もっと背の高い部品を搭載した基板にも需要があるのではないか。

川端 初期高さが1.2mmの製品以外にも、高さの違うバラエティを数種開発している。ただし、スマートフォンなど“軽薄短小”に価値がある機器では、圧接コンタクト(micro clip)の特長がより際立つと考え、低背を優先して製品化したのは確かだ。指摘のとおり、5mm、6mmといった背の高い製品も欲しいという声が、既にお客様からも寄せられている。より高背の製品は、ニーズを見ながら検討する。

さらなる小型化は当然、追求する

久保寺 現状は、フットプリントが1. 4mm角のみである。もっと小さく1mm角以下にして欲しい。そうすれば、重ねた基板間の任意の場所(グラウンドなど)で自由にコンタクトが取れるようになるだろう。とてつもない量を使うに違いない。ノイズの観点でいえば、それぞれの基板のグラウンド電位は、できるだけ同じレベルにしておきたい。かなり狭いスペースに設置したいと感じるケースも多い。圧接コンタクト(micro clip)がさらに小さくなれば、配置の自由度が高くなり、こうした場合での利用に最適だと思われる。

田辺 さらなる小型化は、当然チャレンジすべき進化の方向性である。圧接コンタクト(micro clip)で実現した新しい価値の源泉は、振動や衝撃を吸収する独自構造によって、安定した信頼性の高い接点を実現するというコンセプトにある。それを実現するのが、3次元的なフローティング状態を生み出す、2重のらせん状バネで接点を支える構造だ。今後、小型化を推し進めるときにも、この基本線ははずせない。現在の1.4mm角の製品で、そのコンセプトで思い通りの効果が得られることが実証できた。もう一段小型化できれば、基板間接続のほとんどのニーズに適用できるのではないか。

高周波対応で設計者の自由度が大きく広がる

「正方形形状ゆえ、アレイ状配置に適したコンタクトだ」(田辺氏)

久保寺 圧接コンタクト(micro clip)で高周波信号も伝送できるだろうか。例えば無線LANとUSBなどでは、同じ周波数帯域で動作する回路が相互干渉して異常動作することがある。簡単な対策として、加害側の回路を別基板に分離する方法がある。しかし、最近ではかなりの高周波領域までLSI内部に組み込まれているため、高周波信号のまま基板間を伝送させる場合もあろう。また、パソコンなどでは、高周波回路、CPUやメモリー、I/O、オーディオ回路などを1枚のプリント配線基板に詰め込むため、回路間で干渉しやすい。簡単に基板を分離できれば、設計の自由度はかなり広がる。

伊藤 基板間で高周波信号をやりとりできると、何が可能になるのか。

久保寺 基板を分離すると、一見、コスト高になるように感じる。しかし、無理に1枚で収めれば、高多層基板の採用が必須になる可能性がある。むしろ素直に分離した方が、低コスト化できるだろう。また、従来のハイブリッドICやマルチチップ・モジュール(MCM)などでわずらわしさを感じていたコネクタが、圧接コンタクト(micro clip)では不要。いいことずくめだ。これらの実現には、高周波信号を含めたあらゆる信号のやり取りを基板間で行う必要がある。このようなことが本当に可能なのだろうか。

田辺 細線同軸コネクタなど、高周波信号を伝送するためのコネクタは既に発売されているが、信頼性や大きさ、使い勝手を考えると簡単に使えるものではない。小型でレイアウトの自由度が高い圧接コンタクト(micro clip)を上手く使って、信号・グラウンドを配置できれば高周波信号対応も可能性があるのではないか。

圧接コンタクト(micro clip)の登場が拓いた電子機器設計の未来を議論
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防水などへの適用について

柏尾 圧接コンタクト(micro clip)で基板間をつなぐ場合、何ピンぐらいの配線をターゲットにしているのか。現状のスマートフォンでは、近距離無線通信(NFC)向け回路などを搭載したフレキシブル基板をつなぐ部分に、8ピンの圧接コンタクトが使われている。現時点では、これが最もピン数が多い圧接コンタクトの利用事例である。

「特長が効果的に生きる応用は数多くあることだろう」(久保寺氏)

田辺 現状の製品で10ピンまで、対応できるだろう。基板同士以外の組み合わせの接続としては、防水機能を持ったスマートフォンなどでの利用が想定される。防水性を持った電子機器では、イヤホンジャックなどを基板にハンダ付けして筐体にくくりつけることはできない。筐体側にイヤホンジャックなどコネクタを取り付け、そこからフレキシブル基板などを介して基板とつなぐ必要がある。筐体側のコネクタと基板をハンダ付けできないからだ。ここに圧接コンタクト(micro clip)を使えば、すっきりした構成になると思う。

久保寺 半導体パッケージの主流であるBGAは実装時の接触不良の発生場所が分からない。ボールの代わりに圧接コンタクト(micro chip)を使えば、取り付け、取り外しが簡単になり、試作段階での効率的な評価ができる。BGAに限らず、着脱したい部品すべてに応用できる。

田辺 多ピン化やBGAの代替を狙うには、圧接コンタクト(micro clip)のアレイ状配置が必要になってくる。圧接コンタクト(micro clip)は正方形形状ゆえ、アレイ状配置にも適したコンタクトだと考えている。

大電流化と放熱への応用

柏尾 Apple社は、ノート型パソコン「MacBook」の給電ポートに、給電容量が最大5Aの「USB3.1 TypeC」を採用した。現在の「iPhone」は、給電容量が最大3Aの「Lightning」を採用しているが、将来的にはMacBookと同じポートを採用するとみている。利便性の高い急速充電が可能になる大電流化は、今後対応すべき開発項目になるだろう。こうした大電流化が起こった時、バッテリーと基板の接続部などに圧接コンタクト(micro clip)を使えるようになるのか。

川端 現在の製品の定格電流は3Aである。電流容量の増加も今後のトレンドとしてとらえている。

伊藤 熱対策の専門家である国峯尚樹氏から、「3Aを流したとき、温度上昇はどの程度になるのか」という質問が寄せられている。

「現在のスマートフォンの中にも圧接コンタクト(micro clip)の特長を生かせる部分は多い」
(柏尾氏)

高岡 社内で評価した結果では、15℃だった。この程度の温度上昇ならば、支障がないと考えている。

伊藤 また、「温度が上昇した状態で圧接荷重が加わっても、高温クリープによる破壊が起きない工夫があるのか」という質問も出ている。

横田  破壊に至るような温度上昇はしないように設計面での工夫をしているとともに、高温に対しても強い材料を選定している。

田辺 圧接コンタクト(micro clip)を、電気的な接続ではなく、発生した熱を逃がす経路として使うという利用法もあるのではないか。半導体や電子部品が発する熱が、ヒートシンクなどを使っても放熱しにくい状況になっている。圧接コンタクト(micro clip)をたくさん並べれば、自由に放熱経路を作ることができる。

高度な加工技術で大量消費に対応

柏尾 開発者の説明を聞いて、コンタクトやコネクタは、今後大きな進化が期待できる分野であることが分かった。今後、分解して調査する多くの機器の中で、圧接コンタクト(micro clip)が見られるようになることを願う。

久保寺 圧接コンタクト(micro clip)の特長が効果的に生きる応用は数多くあることだろう。後は、大量に利用できるようにするためのコスト削減が課題になるのでは。

田辺 圧接コンタクト(micro clip)は、一枚板からプレス加工だけで作り上げる。このため、見た目の複雑さで感じる印象ほど、高価な部品にはならない。ただし、何度もプレス加工を繰り返して精度の高い製品に仕上げるためには、極めて高度な加工技術が要求される。プレス加工が得意なアルプス電気ならではの部品だと言える。

伊藤 圧接コンタクト(micro clip)は、現在発売している製品が完成形なのではなく、今後も進化し続けていく伸びしろのある技術であることがよく分かった。既に発売されている製品を起点に、多種多様な品種が生まれることだろう。電子機器設計者の期待に応える技術へと成長し、応用の一層の広がりが期待できそうだ。

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