日経テクノロジーonline SPECIAL

設計プロセス革新の処方箋セミナーレビュー

経営共創基盤(IGPI)ものづくり戦略カンパニー

設計の“段階”とプロセスの“節目”をひも付け
深刻化するすり合わせ問題を解決

設計・開発期間の短縮を図ったところ、全く短縮されず、むしろ現場が混乱した──。こうした失敗を防ぐには、設計が仕上がるまでの道筋を解明し、それに配慮した設計プロセスの定義が肝要だ。そのプロセスの可視化・再構築手法として経営共創基盤(IGPI)ものづくり戦略カンパニーが提唱するのが「プロジェクトロードマップ」。これによりすり合わせが効率化され、設計・開発期間が短縮できるという。

期間短縮などのプレッシャーですり合わせ問題が深刻化

株式会社 経営共創基盤(IGPI)
ものづくり戦略カンパニー
プリンシパル
大泉 圭一

 「過去10年、多くの業界で開発期間は半分程度となり、より多様な機能を取り込むために設計は複雑化、一方でコスト競争は一層激化した」。経営共創基盤(IGPI)ものづくり戦略カンパニーの大泉圭一氏は、日本のものづくりが置かれた状況をこう総括する。そうしたプレッシャーによって「すり合わせ問題」が深刻化している、というのが大泉氏の見方だ。このすり合わせ問題には2つの型がある。1つは「設計フェーズ受け渡し問題」、もう1つは「機能間すり合わせ問題」だ。

 設計フェーズ受け渡し問題とは、あるフェーズから次のフェーズに移る段階で検討不足や誤りなどの不適合が発覚し、その後始末で時間を取られることだ。開発期間を無理に短縮して余裕が失われた結果、発生頻度が高まり、設計遅延のケースも増加傾向にあるという。機能間すり合わせ問題とは、同時並行に進む機能群、例えばメカ・エレキ・ソフトの間で不適合が発生することである。この場合も機能間で整合性を図るための余分な時間が必要になり、設計期間は確実に長くなる。さらに、このような問題が頻発するとコスト増や品質低下を軽視する土壌が生まれやすい。どうしても当面の対策が最優先になってしまうからだ。「1プロジェクトの遅延よりもそうした“悪弊”の方が設計の組織能力低下という観点では深刻」というのが大泉氏の考えだ。

 これらの問題を解決するには、「設計の品質やコスト、納期を決定付ける『幹』のような検討(グローバル検討)と、それを補助する多くの『枝』のような検討(ローカル検討)の違いを理解し、『幹』の検討を遅延なく進めることを最重要視する組織的な取り組みが不可欠」と大泉氏は説いた。「幹」の検討とは、それが確定しないと設計が進捗したと言えない検討事項で、多くの場合一度では確定できずに段階を踏む。一方、「枝」の検討は「幹」の周りにまとわりつくように進行しながらその確定のために必要な情報を提供する。

「幹」の検討への配慮の欠如と“節目”の存在が不適合を発生

 この2つのすり合わせ問題に立ち向かう上で、それらがどのような仕組みで起こるかを理解することは極めて重要である。

 まず、「幹」となる検討を見いだせておらず、さらにメカ・エレキなどの機能間で何を、いつまでに、どの程度まで整合しなければならないかが整理されていない。この状態ですり合わせを行っても、検討の遅れている方に引っ張られて期待した成果は得られず、後に不適合が発覚する。「幹」という道筋が見えていないので設計は修正を繰り返し、「枝」の検討はやり直しを強いられる。「幹」の検討を最優先すべきなのに、それが見えないので見えている「枝」の検討に注力する──。「枝」にいくら時間をかけても「幹」が進まなければ無駄なのだ。この幹への認識・配慮不足が機能間すり合わせ問題の原因である。

 次に、その組織独自のフェーズ分けやマイルストーンが時間的な“節目”を生じ、設計を仕上げる努力を阻んでいる。「客先レビュー」や「長納期部材の手配」などのマイルストーンはやり直しがきかないため、設計に対して潜在的に大きなインパクトを持つ。各イベントに必要な検討をやり尽くして臨むべきであるができていない。比較的大きなプロジェクトではイベントに責任を持つ部門とそうではない部門との“本気度”にギャップがある。これが部分的に検討不足を生じて「幹」の検討に瑕疵を与え、イベント後の大改造を招く。この“節目”の存在が設計フェーズ受け渡し問題の背景だ。

「幹」と「枝」を見える化してプロジェクトロードマップを活用

 すり合わせ問題が発生する仕組みが明らかになると、その解決策もおのずと見えてくる。大泉氏は「まず『幹』の検討を見いだし、時間軸の“節目”と統合することによって進捗遅れの予知と回避が可能になる」と結論付けた上で、自らが関わったコンサルティング事例を基に説明を加えていった。解決へのアプローチは以下の3ステップである。

ステップ1:設計情報ネットワークの整理

 まず行うのは、「幹」の検討を見いだすこと。設計業務を、「設計に必要な情報の依存関係」の観点で分解することで、「幹」となる検討が浮き彫りになり、同時に、各「幹」の検討に必要な「枝」の検討も整理される。

ステップ2:「幹」と“節目”の統合

 次に、「幹」の検討と“節目”を統合する、言い換えると重要なすり合わせ検討要素と時間的な制約、すなわちマイルストーンを連携させる。この「幹」と“節目”を統合して図示したものが、大泉氏が提唱する「プロジェクトロードマップ」である。

ステップ3:プロジェクトロードマップによる可視化

 「プロジェクトロードマップ」では設計の進捗を意味する「幹」の検討が中央に連なり、その周りに必要な「枝」の検討が描かれている。ガントチャートは検討タスクの遅れを表現しても、全体進捗への影響把握が限定され、遅延解消のアクションがタイムリーにできないという制約がある。一方、「プロジェクトロードマップ」では遅れは「幹」の遅れであり、その対策は必要な「枝」を完了させることと明確にできる。そのため遅延予測・対応の精度を高める可視化を実現する。

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