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設計プロセス革新の処方箋セミナーレビュー

プライスウォーターハウスクーパース PRTMマネジメントコンサルタンツジャパン

グローバル製造業開発力強化のカギ
─ 製品アーキテクチャー設計革新 ─

技術で勝ってビジネスで負ける。果たしてこれは正しい認識だろうか。プライスウォーターハウスクーパース PRTMマネジメントコンサルタンツジャパンの尾崎正弘氏によれば、現代のグローバル製造企業において最も重要な技術力は「アーキテクチャー設計力」。講演で尾崎氏は開発生産性の飛躍的向上を実現するためにはアーキテクチャー設計強化が必須であることを強調した。

競争力を高める製品アーキテクチャー設計とは

プライスウォーターハウスクーパース
PRTMマネジメントコンサルタンツジャパンLLC

日本代表 パートナー
尾崎 正弘

 一部の企業を除けば、日本のものづくり企業はグローバル競争で苦戦を続けている。そうした企業に向けて、プライスウォーターハウスクーパース PRTMマネジメントコンサルタンツジャパンの尾崎正弘氏は「製品アーキテクチャー設計を強化することによってグローバル競争力を高める」という処方箋を提示した。

 製品アーキテクチャー設計は開発プロセス上では仕様策定と詳細設計の間に位置するもので、製品システム設計、構想設計、上流設計などと呼ばれることもある。尾崎氏はこれをかみ砕いて「製品をユニットやモジュールなどの下位要素にどう分けて、その要素間をどのようなインタフェースでつなぐかについての基本的な考え方」と説明する。

 講演では優れた製品アーキテクチャーの特徴として「特定機能/性能に関係する要素が集約・分離されている」「製品進化に関係ある構成要素が集約・分離されている」「製品バリエーションに関係ある構成要素が集約・分離されている」などが挙げられた。これらが実現できれば、製品の機能/性能強化や、多マーケット展開、次世代品開発などが一部の構成品の設計変更で実現できる。

 すなわち、製品アーキテクチャーとは仕向け地や製品世代を超えた複数製品を見据えて議論されるべきもので、先進企業では製品アーキテクチャーに関する議論は個別製品開発から独立して、中期計画策定時などに製品ロードマップの策定と併せてなされることが普通であるという。

「製品アーキテクチャマネジメントベストプラクティスフレームワーク」

 参考になるのが、プライスウォーターハウスクーパース PRTMが先進企業とのコラボレーションを通じてまとめ上げた「製品アーキテクチャマネジメントフレームワーク」である。同フレームワークではベストプラクティスを製品アーキテクチャー戦略、プロセス、ツール、意思決定/ガバナンス、メトリックス/KPI、という5つの軸で整理している。

 尾崎氏によると、多くの日本企業はアーキテクチャー開発の仕組みがまだまだ整っていないという。例えば、多くの企業で開発リーダー/開発チームが個別製品ごとに選任される一方で、仕向け地や製品世代をまたぐ視点での設計最適化に関する責任の所在が不明確なことが多い。その中では開発パフォーマンス評価が個別製品ごとのKPI(原価率など)で決まるため、どうしても全体最適よりも個別最適が優先されがちになる。すなわち「単一製品の原価率は若干悪くなるが、数世代先の製品まで見据えると、こういう設計にしておくべき」といった議論が生まれにくいのである。ゲートレビューやデザインレビューといった開発をガバナンスする仕組みも個別製品ごとに設定されていることが多く、意思決定においてビジネスを広く捉えた最適設計という視点が抜け落ちてしまいがちである。

 これに対してグローバル先進企業ではアーキテクチャー開発の責任が明確にされ、専門チームが結成されていることが多い。各種レビューも合意されたアーキテクチャー戦略に基づいてビジネスとしての全体最適の視点で運用されているという。

 また、尾崎氏は実プロジェクトの成果物を参照しながら、アーキテクチャー設計プロセスのベストプラクティスモデルに関しても解説した。まず、①アーキテクチャー要件を整理し、②それを踏まえて製品方式/技術を決定する。次に③全製品に適用できる基本製品構造(上位のBOM構造)を策定する。ここでは製品群間で基本構造を共通化するだけでなく、より優れた構造とすべく試行錯誤が必要となる。製品構造の最適化検討に役立つツールとして品質機能展開に似たFSM(機能構造マトリックス)ツールや製品構造チェックリストが紹介された。製品構造が固まったら、次に④モジュールとして扱う単位を決めて、最後に、⑤定義されたモジュール同士の設計依存性を解消するために適切なデザインルールを策定していく。この時役立つツールとしてDSM(設計構造マトリックス)が紹介された。

製品アーキテクチャーマネジメント強化により期待できる効果

 グローバル先進企業/勝ち組企業では、周到なアーキテクチャー開発/設計こそがビジネス成功のキーであることを理解し、開発体制/プロセスをしっかりと確立している。一方で、CADなどを使った詳細設計(メカ/エレキ/ソフト)などは誰にでもできる付加価値の少ない業務と捉えており、これらは積極的にLCC(Low Cost Country)にアウトソースしている。

 それに対して、多くの日本企業は遅れを取っているように見えるという。「マーケティングが製品仕様を決めるや否や、体系的なアーキテクチャー議論がないままに、いきなりCADに向かって詳細設計を始める、などということは珍しい話ではありません。すなわち、グローバル先進企業が低付加価値業務としてアウトソースを加速している詳細設計作業の多くを、本社の単価の高いエンジニアが担っているケースが多いのです」(尾崎氏)。

 尾崎氏は「製品アーキテクチャー設計強化により開発生産性の飛躍的向上が実現できるはず」と言う。強い製品アーキテクチャーを確立することにより設計共通化が加速し、少ないリソースで多くの製品をリリースできることに加え、社外パートナーとの設計コラボレーションも大きく進展できると指摘する。強い製品アーキテクチャーを確立することによって初めて、自社分担分と他社分担の最適な切り分け、他社への設計指示の明確化、企業間のすり合わせ作業の低減(構成要素間の設計依存性の低減)が可能となるわけだ。

 尾崎氏は「強い製品アーキテクチャー設計力を身につけ、グローバル競争を勝ち抜いてほしい」と言い添えた。

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