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多様な機器にIoT活用の道開くCPUボード 実証実験から量産化まで幅広くカバー

図1 富士通エレクトロニクスの96Boards 仕様準拠のCPUボード「F-Cue」
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IoTを活用した機能を機器に搭載させる最初のステップは、格安の小型CPUボードなどを使って、技術者が考えたロジックが有効か検証すること。しかしそうしたボードはもともと個人の電子工作用途のため、検証後にそのまま試作や量産へステップアップしていくとしても品質や供給面に無理がある。そこで富士通エレクトロニクスは、Linuxベースの小型CPUボードを核に、今までネットワークとは無縁だった機器のIoT 対応サービスを展開している。そのポイントは、実証実験から試作、量産展開まで同じプラットフォームで、カスタマイズにも対応しながら一貫した開発を可能にする点だ。


宮崎 博之 氏
テクノロジ・イノベーションセンター
SoC技術サポート部長
藤井 俊平 氏
テクノロジ・イノベーションセンター
SoC技術サポート部プロジェクトリーダー
齋藤 栄治 氏
テクノロジ・イノベーションセンター
デバイスソリューション部プロジェクト課長

 サービスの核となる名刺サイズのCPUボード「F-Cue」は、ARMコアのCPUやLinuxを搭載したもので、Wi-FiなどIoT対応に不可欠なネットワーク機能も搭載する。F-Cueの大きな特徴は、同じボードで実証実験から試作検討、量産化までカバーできる点だ。つまり実証実験の段階から、量産製品を見据えた開発を可能にする。

 量産対応まで可能な理由の一つは、同社による品質の担保だ。F-Cueは、ARM用Linuxカーネルを開発する非営利組織「Linaro」が策定したオープンプラットフォーム「96Boards」に準拠する。オープンな環境では品質保証などはユーザーの自己責任が基本だが、従来ネットワークや電子制御とは無縁だった機器の開発者にそれを求めるのは酷な話だ。

 そこでF-Cueでは同社が品質保証する。製造も富士通グループの拠点で行うため、「設計、製造から供給まで富士通グループの品質で提供する」(ソリューション技術本部テクノロジ・イノベーションセンターSoC技術サポート部長の宮崎博之氏)ことが可能だ。

 また96Boardsは開発者コミュニティが充実しており、Linaroが公開する各種ソフトウエアや96Boards用拡張ボードなど、幅広いツールが用意されている。しかし幅広い分、機器の目的を考えたときにどれを選べばよいか迷ってしまう。同社はF-Cueを活用するユーザーに対し、「機器のコンセプトに合わせて、最適なツールやソフトの組み合わせを提案できる」(ソリューション技術本部テクノロジ・イノベーションセンターSoC技術サポート部の藤井俊平プロジェクトリーダー)という。

 組み合わせの提案の中には、ボードそのもののカスタマイズも含まれる。F-Cueはさまざまな目的の試作に対応するために、大容量のメモリや、USB 3.0やIEEE802.11acなど新しい通信インタフェースを、最大公約数的に搭載しているが、実際に製品化する際にはそれらがすべて必要とは限らない。実証実験や試作は標準のF-Cueで行いながらも、実際の製品は不要な機能を省いたものを搭載できれば、小型化やコスト削減を図ることが可能になる。そうしたカスタマイズに同社は対応する。

 カスタマイズの一環として、インタフェースを増設するボードをオプションで用意する。ボードの下に、ギガビットEthernetや特定小電力無線などの機能を付けることが可能で、「ネットワーク端末で必要な機能を持たせることができる」(ソリューション技術本部テクノロジ・イノベーションセンターデバイスソリューション部プロジェクト課長の齋藤栄治氏)。

高い処理能力を生かした試作品が続々
リアルタイムの不審者検出システムも

図2 高い処理能力と豊富なインタフェースでさまざまな分野へ適用可能
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図3 ドローンに搭載した広角画像処理システム。矢印の場所にCPUボード 「F-Cue」が搭載されている。安価なWebカメラで360 度見回した画像を作 成できる
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 F-Cueが適用できる分野は、電子機器やロボット、住宅や施設管理など幅広く、同社はその開発サンプルを展示会などで披露しているが、中でも関心を集めているのがセキュリティー分野だ。その一つとして、複数のカメラの画像を組み合わせて周囲360度の広角画像を作り出す監視カメラのシステムを、試作品として公開している。

加藤 康之 氏
テクノロジ・イノベーションセンター
SoC技術サポート部プロジェクトリーダー

 周囲を見回せる画像を撮る場合、通常は魚眼カメラのような特殊なハードが必要だ。しかし同社がF-Cueを使ってサンプルとして開発したシステムでは、汎用のWebカメラを4台組み合わせることで、それを可能にしている。「4つのカメラの画像を歪みなくつなげるには、ハードウエアに高い処理能力が必要になるが、F-Cueを使えばそれが小さいボードで可能になる」(ソリューション技術本部テクノロジ・イノベーションセンターSoC技術サポート部の加藤康之プロジェクトリーダー)という。

 F-Cueの高い処理能力を示す開発サンプルには、歩行者を検知するシステムもある。カメラに映った人を検知するだけでなく、その人がどの方向に動いているかをリアルタイムで検知するシステムだ。異常行動と見られる動きをモデル化して登録しておけば、不審者にその場で警告を発するセキュリティシステムになりうる。

 同社はこうしたシステムに必要なソフトウエアのライブラリを、パートナーとともにラインアップ化し、拡充しているところだ。自社の技術だけでなくパートナーの資産もフル活用しながら、電子化と接点のなかった機器をIoTの世界に導こうとしている総合力に、同社ならではの「ワザ」が見えてくる。

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