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事例:産業IoTを活用したビジネス創出

産業IoTの有力なアプリケーションの一つが、機器や設備の状態を別の場所からモニタリングする遠隔監視である。「Factory Annex産業用IoT実践セミナー」で登壇した日立ソリューションズの江角忠士氏は「モノからコトへ、加速するIoTと製造業の保守メンテナンス業務改革 - 保守メンテナンス業務改善事例と Connected FieldService -」と題して、産業IoTを活用した遠隔監視サービスを利用して実現可能な保守サービス事業について講演した。

江角 忠士 氏
日立ソリューションズ
産業イノベーション事業部 産業ソリューション本部
第4部主任技師

 「機器や設備の稼動監視にIoTを活用すれば、保守サービス業務を、従来のコストセンターから新たにプロフィットセンターへと転換できる可能性があります」。こう提案するのは、日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 産業ソリューション本部 第4部主任技師の江角忠士氏である。

 この提案の背景には、サービスやものづくりのビジネスモデルが大きく変化する中で、工場は「スマートファクトリー」へと進化。一律的な大量生産の時代から「マスカスタマイゼーション(個別仕様の大量生産)」の時代へと移行する動きがでてきたことがある。

 保守サービスにおいても最新技術を活用してアフターマーケットビジネスの強化とサービス型ビジネスモデルへの転換を図り、いわゆる「サービタイゼーション(servitization)」を進めるべきと同氏は述べる。その過程で中心的な役割を果たすのがIoTである(図1)。

図1  製造業におけるビジネスモデルの変革とサービタイゼーション
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サービス員の派遣や作業指示もシステムで支援

 保守サービスにIoTを応用した好例が、CRMとERPを統合した「Microsoft Dynamics 365」とクラウドプラットフォームの「Microsoft Azure」サービスで構成されるMicrosoftの「Connected Field Service」である(図2)。

 Connected Field Serviceでは、製品や機器のセンサーから、振動、温度、稼動累積時間などのデータを、ネットワークを通じて収集。機械学習によって予防保守タイミングを予測。さらに熟練者の知見や経験などを組み込んだビジネスインテリジェンスと組み合わせて、ユーザーに部品交換や買い替えを提案する。

 ここまでならば、IoTと機械学習とを組み合わせたソリューションである。同様のソリューションは、ほかにもある。さらにCRM基盤を活用して保守サービス員に対する作業指示などの機能を統合的に搭載しているのがConnected Field Serviceの特徴である。 「プロアクティブな保守サービスを実現するだけではなく、適切なスキルを持つサービス要員をタイムリーに派遣することが、保守のサービタイゼーションでは重要です」(江角氏)。

図2  Connected Field Serviceの概略構成の例
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建機メーカーが実際にサービス事業を強化

 Connected Field Serviceの導入先の一社が、スウェーデンに本社を置き、切削工具や鉱山・建設機械をグローバルに取り扱うSandvik(サンドビック)社である。

 Sandvikが顧客に納入した機器や建機から、温度、荷重、振動などのセンシングデータをIoTプラットフォームである「Microsoft Azure IoT Suite」上に収集。合わせて、Sandvikがこれまで蓄積してきた製品や保守に関するさまざまなデータから、工具の発注時期や交換時期のほかトラブルの回避方法などの情報を提供する機能を搭載した。

 Sandvik社におけるConnected Field Serviceの運用の概要と、冒頭で述べた保守サービス業務のプロフィットセンター化(サービタイゼーション)については次の通りだ。