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機械学習を生産現場の効率化に活用

現場データの活用によってものづくりの効率化を図りたいというニーズが高まる中、高度なデータ分析サービスを通じて製造業の改革を支援するのが、データアナリティクスに関するコンサルティングやデータ分析基盤の構築といったサービスを提供するテクノスデータサイエンス・エンジニアリングである。「Factory Annex 産業IoT実践セミナー」で登壇した同社執行役員常務の池田拓史氏は、「“どう活かせる?”製造現場における機械学習の役割と具体的な活用方法」と題して、機械学習をものづくり活用するプロセスを解説した。

池田 拓史 氏
テクノスデータサイエンス・エンジニアリング
ビジネスエンジニアリングディビジョン
コンサルティンググループ グループ長 執行役員常務

 「ビッグデータ」や「IoT(Internet of Things)」といった新しいICT(情報通信技術)の概念が普及するとともに、現場で収集したデータを活用して生産プロセスの最適化を図る取り組みを始める動きが製造業において活発化している。ここで注目を集めている技術の一つが、人間の学習能力がもたらす機能をコンピュータで実現する「機械学習」である。

 池田氏によると、機械学習の活用や適用に関する問い合わせが実際に増えているという。一方で、同氏は、「機械学習はあくまで道具(アルゴリズム)の集まりであって、何にでも自動的に答えを出してくれる万能な存在ではないことを理解しておかなければなりません」と指摘する。「まずは解くべき問題を人間が発見し、アルゴリズムの観点で定義して、定義された問題に対して適切な道具(アルゴリズムやモデル)を選択する、という三つのステップを人間がきちんと行う必要があります」(池田氏)。

 池田氏の指摘は、同社も活用する機械学習のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure Machine Learning」からも見てとれる。最適なアルゴリズムを選択する指標として用意される「機械学習アルゴリズム・チートシート」と呼ばれる画面には、「構造を発見する」、「分類を予測する」、「値を予測する」、「異常値を検知する」といった上位の選択肢と、その下に個別のアルゴリズムやモデルが示されていて、目的に応じて選択できるようになっている(図1)。

図1 「Microsoft Azure Machine Learning」で提供される「機械学習アルゴリズム・チートシート」
図1 「Microsoft Azure Machine Learning」で提供される「機械学習アルゴリズム・チートシート」
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問題の再定義から見えてくる本来の目的

 生産現場の改革に取り組む企業から同社に寄せられるさまざまな依頼は、大きく次の3種類に集約されるという。すなわち、(1)「生産設備の停止によって発生するロスを抑えたい」。(2)「トラブルによって生産設備が占有されてしまう問題を対策したい」。(3)「人手による検査量を減らしたい」、である。このうち(3)の課題の場合、機械学習の技術で解決するプロセスは以下のようになる。

 最初に、解くべき問題を定義する。「生産設備の停止」という現象には次のような複数の原因が考えられる。
(a) 設備の故障による予定外の停止。
(b) 損耗した部品交換による予定外の停止。
(c) 部品の予防交換による(ときには過剰な)計画された停止。
(d) その他のエラーによる“チョコ停(現場のオペレータが簡単に復帰させることができる設備の停止)”。

 すなわち、生産設備の停止によって発生するロスを抑えたいという表面的な問題に対して、予定外の停止を排除して正常な状態をできるだけ長く維持する操業条件を求めるのか、損耗を正確に予測して部品交換時期を無駄なくスケジューリングするのかなど、問題を再定義することで異なる目的が見えてくる(図2)。当然ながら、このために採用すべき機械学習アルゴリズムも違ったものになってくると池田氏は述べる。

 では機械学習を生産改革にどう生かしていけばいいのだろうか。

図2 表面的な問題に隠れている真の問題を再定義し、データ分析の方針を決める
図2 表面的な問題に隠れている真の問題を再定義し、データ分析の方針を決める
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