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経営課題を解決するイノベーションは シミュレーションの有効活用で生まれる

ものづくり企業では、製品の性能や品質、外観デザイン、環境性能の向上、さらに設計コスト削減や工期短縮など、多くの課題を同時に解決する必要性に迫られている。こうした困難な課題の解決にはイノベーションの創出が欠かせない。そこで強力な武器になるのが、シミュレーションである。いまや、シミュレーションは製品やサービスのあるべき姿を探る技術へとその活用シーンが広がっている。オートデスクは冠者実氏が、シミュレーションの活用に関する最新技術と、ものづくりの未来への貢献を解説した。

 売り上げと利益の拡大、他社に対する優位性、品質・安全性の向上、環境対応、グローバル展開ーー。ものづくり企業には、事業を進める上で目指すべきことがたくさんある。こうした多くの目標を同時に達成することは容易ではない。

冠者 実 氏
オートデスク
技術営業本部
テクニカル セールス マネージャー

 こうした企業の経営者などを対象としてオートデスクが実施したアンケートの中で、「優先度の高い経営課題は何か」と尋ねたところ、「イノベーションの創出という答えが多数を占めました」と同社技術営業本部テクニカルセールスマネージャーの冠者 実氏はいう。多くのものづくり企業が、困難な経営目標を達成するには、従来の枠にとどまらない発想でイノベーションを生み出す必要があると感じている。

シミュレーションが革新を加速

 オートデスクは「Product InnovationPlatform(PIP)」と呼ぶコンセプトの下、ものづくりの未来の中でビジネス価値を最大化できる環境の構築を目指している(図1)。PIPの実現のカギを握っているのが、シミュレーションの活用である。同社は、「デザインする」「製造する」「使う」という、製品ライフサイクルのそれぞれのシーンでのイノベーションの創出を、PIPに基づく数々のソリューションの提供を通じて後押ししていく。

図1 オートデスクの、ものづくりの未来を支える「Product Innovation Platform(PIP)」
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 デザインでのイノベーション創出に向けて、オートデスクは「ジェネレーティブ・デザイン」の活用に注力していく。ジェネレーティブ・デザインとは、シミュレーションを繰り返しながら、指定した目標と要件を満たすデザインを自動作成する技術である。同社が、この技術を重要視している理由は3つある。

 1番目は、設計の目標を満たすデザインを短時間で導き出せること。これによって、設計者の作業負荷を軽減し、斬新なアイデアを考える時間の余裕を生み出せる。2番目は、人間では思いつかないデザインの切り口を提示できること。コンピューターが示すヒントを参考にすれば、既成概念にとらわれない閃きやイノベーションが生まれる可能性が出てくる。3 番目は、3Dプリンターなど、新しい製造手法に秘められた潜在能力を引き出せること。これまでは、どんなに優れたデザインでも、加工できなければ絵に描いた餅だった。これが、3Dプリンターならば、どのような複雑な形状でも実現できる。

 冠者氏は、オートデスクで製品投入または開発している3つのジェネレーティブ・デザインの技術を紹介した。

 まず、人間では作り出せないような合理的形状を探り出すトポロジー(位相)最適化。同社の構造解析ツール「Autodesk Nastran」に既に実装されている技術である。

 次に、「Dreamcatcher」。様々なデザイン案を、それぞれの利害や特徴と関連付けながら提示することで、設計者の意思決定を支援する技術である。現時点では、研究段階にある。

 最後は、3Dプリンター用最適化技術「Within」。3Dプリンターでなければ実現できないような複雑な格子構造を駆使して、軽量でありながら、高剛性のデザインを生み出す(図2)。

図2 オートデスクの「Within」を使って最適化したイスのデザイン
MODEL1の普通のイスを、表面は変えずに内部だけ格子構造にしたMODEL2、表面も格子構造にしたMODEL3と最適化の度合いを高めた。
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3DプリンターとIoTを徹底活用

 製造でのイノベーションの創出に向けて、オートデスクは、3Dプリンターを駆使しての製造を支える数々の技術を提供していく。

 3Dプリンターを使えば、CADデータに忠実な、これまで作れなかったような複雑な形状を作れるようになる。仏Airbus 社では、ジェネレーティブ・デザインによって、旅客機の客室内に置くパーティションを設計し、これを3Dプリンターで製造して実機に採用した。複雑な格子構造を生み出したことで、剛性を維持しながら従来品よりも45%の軽量化に成功した。

 さらに、3Dプリンターならば消費者一人ひとりに使い勝手を最適化した異なる形状の製品を作り分けることができる。例えば、イヤホンのヘッドの形状を、消費者の耳の形に合わせて作れる。

 こうした製造でのイノベーションを後押しするため、オートデスクは、3Dプリンター用の設計データを作るためのオープンソース「SPARK Platform」を公開した。そして、ボディーを3Dプリンターで作った世界初のクルマである米Local Motors社の「LM3D」や、電子回路をプリントできる3Dプリンター「Voxel 8」のような斬新な製品が登場している。

 製品を使うシーンでのイノベーションの創出では、製品がインターネットにつながり、アフターマーケットでの利用状況や製品の状態をリアルタイムで把握できる点に着目したIoTクラウドソリューション「Autodesk FusionConnect」を提供する。

 応用例としては、ネットに接続したクルマでは、定期的に制御用プログラムがアップデートされ、ドライバーのクセをセンサーで収集して、ドライバーごとに最適化した制御プログラムを提供できるようになった。ほかにも、センサーで取得したデータを境界条件として流体解析や構造解析を実施し、過去のデータと照らし合わせて分析すれば、壊れそうな部品が分かる。そうすれば、壊れる前に、計画的にメンテナンスサービスを実施できるようになる。

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