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「見栄え」をシミュレーションで検証する、光を知り尽くしたCAEが設計を左右

3D CADやシミュレーションの活用により、設計の妥当性や製造性をデジタル環境で検証することは可能になったが、人間の視覚や聴覚にかかわる検証はまだ実機に頼る部分が大きい。この感覚的な部分もデジタル環境でのシミュレーションを可能にしたのがOPTISだ。光の差し込み方なども加味したシミュレーションで、実機の作成前に、より現実に即した見栄えをユーザー目線で確認できるようになった。

芳村 貴正 氏
OPTIS Japan 代表取締役社長

「ものづくりにおいて『光と音は、モノを作らないと分からない』と言われてきた」とOPTIS Japan代表取締役社長の芳村貴正氏は言う。モノの形状など具体的に特徴が数値化されている情報は、3D CADなどを使えばデジタル環境に展開することは可能だ。しかし、光や音といった視覚や聴覚が織りなす利用体験は、人間が感性でとらえる部分であり、客観的な数値化が難しい。そのため具体的なモノを試作してからでないと、見栄えや聞こえ方を検証することができなかった。

 OPTISはその感性という検証が難しい要素に対し、解決策を提示している。光の見え方に影響する要素を勘案し、単なるCGでは表現できないような実際の見栄えをデジタル環境で再現する。

映り込み防止で安全性向上に貢献

 モノの見栄えを左右するのは、モノ自体の色や光沢だけではない。太陽光や照明などの光源、モノの光反射特性や透過特性、見る人の目の特性など、様々な要素が見え方を左右する。太陽光という光源一つをとっても、季節や天候、時間ごとの照射角度、緯度経度によっても変わり、目の特性もその人の年齢などが影響してくる。

 OPTISのソリューションは、こうした要素をパラメーターとして取り込み、実際の見え方として反映する点が大きな特長だ。OPTISの光学解析CAE「SPEOS」は、各種の光源や目の特性、対象となるモノの素材の情報などをライブラリとして持ち、NXやCATIAなどで表現した3Dモデルにおいてその実際の見栄えを計算。その結果をモデル上に再現する。具体的な利用シーンに基づいた見栄えのシミュレーションが可能なため、試作後に問題が見つかるようなことが少なくなり、開発の手戻りを防げる(図1)。

図1 OPTISのコア技術は、光に関連したパラメーターを多く持ち、見え方を正確に再現すること
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 例えば自動車の内装設計では、ドライバーがコックピットに座ったときに、昼間に太陽光を外から受けた時や、夜間に車内照明に照らされた時などで、内装部品がそれぞれどのように見えてどんな質感を醸し出すかを検証可能だ。光を受けた時の見栄えにはインパネの形状なども反映している(図2)。

図2 「SPEOS 」を使えば、自動車内に光が差し込んだ様子をリアルに再現できる
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 自動車の内装設計で特にSPEOSが効果を発揮するのは、安全運転に支障が出るような映り込みの防止だ。ダッシュボードの色を検討する際、色によっては太陽光がダッシュボードに当たってフロントガラスに反射したときに、前方が見えなくなるような映り込みが起こることもある。SPEOS上で太陽光の角度を変更しながらシミュレーションすることで、映り込みの起こらない色を決めることが可能だ。メーターパネルやセンターコンソールについても、映り込みの少ない適切な角度を見つけて可読性を確保し、安全性に寄与できるという。

 設計の形状から見栄えを再現する技術にはCGもあるが、SPEOSでは光に関連した多数のパラメーターを基に計算して、物理的に正しい見栄えを再現している点に大きな違いがある。見栄えを左右する輝度値や色度値を計算し、より実物に近い見え方でモデルを確認できるため、「光にまつわる測光値や材料特性のスペック決めなどに活用できる」(芳村氏)という。

 同じ光源と光度でも、光を伝達させる仕組みによって実際の見え方が変わることもある。SPEOSではその仕組みの部分も考慮に入れた見栄えを再現可能な点も、単に一律の色を表示するCGとの違いだ。ライトガイドの設計が不十分で光源からの光が均等に広がらないなどの不具合も、実機を作ることなくシミュレーションで発見し、開発の手戻りを防止できる。

実際に聞こえる走行音を再現

 同社は2015年、音響のシミュレーション技術を持つGENESISを傘下に収め、音をCAEで検証するシステムも提供するようになった。音を収集し、分解や合成などを施したうえで実際に再生して検証するものだ。

 芳村氏は音を検証する場面の一つとして、自動車走行中の音の例を挙げた。ドライバーの耳に入ってくる走行中のエンジン音は、実際は風切り音やロードノイズなども混じっている。同社のツールではそれらの音とエンジンそのものの音を分離。エンジン音を新しい音や電気自動車のモータ音と入れ替えて組み合わせることで、「車のイメージに合った音になるかを検証できる」(芳村氏)という。

 また、ドライバーへの視覚的な情報を音と連動させ、ドライバーの反応速度を高めるシステムの開発にも参画している。具体的には、車載カメラが後ろから自転車が近づいていることを検知した場合、映像によるアラートだけでなく自転車のベル音も同時に鳴らす。「自動運転の環境でドライバーに注意を促すのに有効」(芳村氏)としている。

 さらに同社は、ヘッドアップディスプレイを使ってドライバーからの見え方を検証するソリューションや、輝度や色度を正確に再現する大型のディスプレイなども用意。光と音のシミュレーション環境のさらなる強化に取り組んでいるところだ。

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