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継続的成長の鍵は、IoTによる多様化への対応 そこで日本の半導体産業が果たす役割は大きい

あらゆる産業でスマート化が進み、半導体産業に史上空前の好景気をもたらした。ただし、リーマンショックの記憶が鮮明に残る半導体産業の各社に、浮かれた様子は見えない。好況と成長を継続するため、未来に向けた打ち手を冷静に考えている。本格的なIoT時代が到来し、半導体の需要は多様化している。そこで求められる技術・製品を供給していくうえで、日本企業が果たすべき役割は大きい。SEMICON Japan 推進委員会の委員長を務める日立ハイテクノロジーズ 執行役専務 電子デバイスシステム事業統括本部長の木村勝高氏に、日本の半導体産業を取り巻く状況とSEMICON Japanの役割について聞いた。

木村 勝高 氏
SEMICON Japan 推進委員会 委員長

――2017年の半導体業界の状況は。

木村 2016年から半導体の市況が回復し、2017年は予想をはるかに超える急成長を遂げました。世界半導体市場統計(WSTS)の2017年春季半導体市場予想では、前年比での伸びを11.5%と予想していました。これが8月には17%に上方修正されました。伸びている分野は、センサー、アナログ、メモリーなど多岐にわたり、全方位で活況を呈しています。特にメモリーの伸びが大きく、出荷個数が急増し、同時に価格も高水準にあります。地域的に見ても、米国、欧州、日本、アジア・太平洋地域、全ての地域で好調です。

 半導体製造装置市場も絶好調です。SEMIが2017年9月に発表した第2四半期の販売額は、141億米ドルと四半期別の販売額として過去最高を達成しました。特にメモリー関係での設備投資が増大し、生産の稼働率が逼迫しており、製造装置各社はうれしい悲鳴を上げています。

――非の打ち所がない状況ですね。好況の要因をどう分析していますか。

木村 半導体の用途が、これまでになかったような分野にも拡大していることが最大の要因です。金融・社会活動・医療・農業など、様々な産業分野でスマート化が進んでいます。世の中の出来事をデジタル化し、それを情報として扱い新たな価値を生み出す動きです。

 アナログの現象をデジタル情報に変える時、デジタル化した情報を処理・蓄積する時、機器間で情報をやり取りする時、そして機械などを制御する時、それぞれの場面で半導体が必要になります。スマート化が進む限り、半導体の需要が枯れることはありません。

――2018年は、どう見ていますか。

木村 成長が続くとみています。スマート化の動きは衰える気配がありません。特に、ビッグデータ解析や人工知能(AI )処理などを担うサーバーの能力増強に向けた動きが活発です。蓄積媒体が、ハードディスク装置からフラッシュメモリーを使ったSSD へと急速に移行しています。同時に、一時記憶向けDRAMの需要も増大していきます。

IoTによる多様化への対応が急務

――絶好調の半導体業界ですが、今、何に挑戦すべき時期だと思われますか。

木村 スマート化は、あらゆる業種で進んでいます。応用がかつてないほど多様化しており、半導体にもさらなる多様化が求められています。現在の好況と成長を継続的なものにするため、多様化に対応できる技術や生産体制、ビジネスモデルの確立に挑戦すべきだと考えています。

 これまでは、パソコン、スマートフォンと、半導体の需要を強力に牽引する応用がありました。半導体業界は、チップ開発も、生産体制の整備もこうした応用の動きを注視すれば適切な対応ができました。しかし、これから半導体の需要を牽引するIoTは、多様な応用の集合体です。そこで使われる半導体も、プロセッサー、メモリー、センサー、通信、アナログと多岐にわたります。多様な応用、多様な品種の発展に貢献していくには、製造技術や生産体制にも多様化が欠かせません。最先端ライン向け製造装置だけではなく、小口径ライン向け高性能装置も、最先端半導体向け材料だけではなく、特徴のある機能・特性を持つ材料も必要です。

――市場の動きを察知するマーケティング力が重要になりますね。

木村 求められている技術と製品は何か。正しく知ることが、将来のビジネの成功の鍵を握ります。かつては、国際半導体技術マップ(ITRS)に沿っていれば、時代が求める技術と製品を先行開発できました。これからは、世の中の応用や顧客の動きを正確に見定める必要があるでしょう。また、自社の専門性と強みを正確に見極めることも重要になります。情報の発信源としてのSEMICON Japanの役割は、重要性を増しています。

多様性こそ、日本の強み

――日本の半導体産業は、世界の中でどのような役割を求められますか。

木村 日本は、IoT時代に求められる多種多様な半導体を開発・生産できる力を持っています。サーバーやスマートフォンなど、既存の応用に向けた半導体の大量生産からは手を引いていますが、MEMSセンサーやアナログチップ、車載プロセッサー、パワー半導体など、IoT時代の伸びしろとなる半導体では世界をリードしています。

 また、製造装置は世界の1/3を、材料に至っては約半分を日本企業が作っています。半導体のサプライチェーンの中では、日本企業の貢献は極めて大きいと言えます。多様化にしっかりと対応できるか否かは、日本企業のがんばりに掛かっているのです。

――SEMICON Japanは、未来の半導体産業を映す大切な場になりそうです。

木村 SEMIのグローバルテーマは「CONNECT」です。これは、IoT時代を端的に表す言葉であり、人、技術、会社、地域・国、そして現在と未来をつなぐという意味が含まれています。そして、今回のSEMICON Japanは「マジックが起きる。」をテーマにしました。多様な発想や価値観、技術をつないで新しい価値を生み出したい思いを言葉にしたものです。

 SEMICON Japanには、様々な業種の企業が、様々な知恵や技術を携えて参画してくれています。新たな気づきに満ちた場です。SEMICON Japanの出展社と来場者が、異質な知恵や技術に触れて、次の成長につながるきっかけをつかむマジックが起きる場になるように、多くの仕掛けを用意しました。

この活気を若い人材に伝えたい

――SEMICON Japanは、異質な知恵を組み合わせて新しい価値を生む、化学反応を起こすフラスコのようです。

木村 はい。とても刺激的で活気ある場になると思います。こうした日本の半導体産業のダイナミズムを、ぜひ若い世代にも感じてもらいたいと願っています。人材は産業の肝です。半導体産業は、疑う余地のない世界の中核産業であり、成長産業です。その中で日本企業は、デバイス、製造装置、材料など広範な分野で極めて重要かつ強いポジションを取っています。SEMICON Japanに足を運べば、そのことを肌で感じていただけることでしょう。

――来場者と出展社にメッセージをお聞かせください。

木村 SEMICON Japanには、思わぬ出会いや発見がある場です。来場者と出展社の方々は、会場内をくまなく歩き回ることで、視野を大いに広げることができると確信しています。そこで得たこと、出会った人とのつながりを生かし、次の成長を開く場にしてもらえればと願っています。

Profile
木村勝高(きむら かつたか)氏
株式会社日立製作所入社
中央研究所ソリューションLSI研究センタ長
日立研究所材料研究所長
生産技術研究所長
株式会社日立ハイテクノロジーズ 執行役常務
2015年4月から執行役専務(現任)
2016年4月からCTO兼電子デバイスシステム事
業統括本部長(現任)