日経テクノロジーonline SPECIAL

AI/IoT時代を支える基軸新デバイス

次世代を開く縦型BC-MOSFETの応用

 注目すべき報告の2つめは、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「ACCEL 」の採択を受けて取り組んでいる、「縦型BC(Body Channel)-MOSFET」と呼ぶ新型MOSFETの応用展開だ。

 縦型BC-MOSFETは、半導体の電力効率と集積度を飛躍的に向上できるとして注目を集めているデバイス技術。細長いSi柱の側面に、電極をぐるりと巻きつけた構造のMOSFETで、微細化を進めてもチャネル領域の状態を確実に制御可能なため、消費電力増大の要因となるリーク電流を封じ込めることができる。

 同様の構造のトランジスターは、NAND型フラッシュメモリーの大容量化の切り札となっている3D-NANDにも応用され、既に量産されている。3D-NANDでは同トランジスターの高速性は不要だったが、DRAMやMRAMのようなワーキングメモリー・ロジックでは、高速動作が可能な縦型BC-MOSFETの実現が不可欠になる。

 CIESでは、既にDRAM向けデバイスの技術の確立にメドをつけ、より駆動力の高いMRAM向けや、より高速なロジック向けの開発に着手している。「メモリー素子であるMTJ素子と、スイッチ素子である縦型BC-MOSFETという2つの基軸技術を適切に組み合わせることで、半導体の継続的発展の道筋が開きます」と遠藤氏はいう。

産学共創の新たなかたちに挑戦

 最後は、社会課題の解決に役立つ技術の研究開発を加速するための、新たな産学共創の取り組みである。2016年9月、JSTのプログラム「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」に、東北大学の提案が採択された。エネルギー問題と、労働力不足が顕在化している輸送システムの問題に照準を合わせ、イノベーションの創出による解決に挑むというものだ。東北大学や京都大学、山形大学が保有するコア技術を基に、ワールドクラス企業に加えて、東北地方のITおよび自動車関連の企業と協力して研究を進める。

 OPERAの枠組みで活動するIT・輸送システム産学共創コンソーシアムでは、大学が主体的に行ってきた基礎研究フェーズの課題に、理工学と社会科学の力を結集して、産学共同研究をマッチングファンド方式で行うことになるという。本OPERAでは、高度自動判断システムとハイブリッドパワー集積回路が生み出す次世代移動体システムの実現を目指して、4つの研究開発テーマを設定している。

 OPERAでは、取り組む社会課題の解決策を柔軟に探るため、研究テーマを臨機応変に変えながら技術開発の道筋をつける。そして、研究の方向性が見えた時点で、民間資金によって推進される大型産学連携研究プロジェクトとして、より社会実装に近い研究を進める。

図2:輸送システムやものづくりなどへの応用展開
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 「新しい基軸技術の登場によって、プロセス・デバイスなどの川上から、ソフトウエア・機器・システムなどの川下まで、ものづくりは大きく変わります。これは、企業にとってビジネスを拡大するチャンスです。今、重要なことは、新しい技術で何を作り、社会にどんな価値を提供していくかという“意思”とリーダーシップ。CIESは新しい基軸技術を社会につなげていくためのシナリオを産業界とともに描いていきます」と遠藤氏は会場に呼びかけ、成果報告会を締めくくった。

(日経エレクトロニクス企画チーム)