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加速するADASや自動運転の開発 MBDのツール強化や技術者育成で支援

自動車の開発競争の主戦場は、ADAS(先進運転支援システム)から、自動運転へと移りつつある。それに合わせて、複雑な制御システムの開発を効率化するモデルベース開発(MBD)の重要性が高まる一方だ。MBDツールの代表的なベンダーであるdSPACE Japanの宮野隆社長は、ツールのラインアップ強化を図るとともに、日本法人独自のプログラムでMBD を駆使できる技術者の裾野拡大に取り組む。

―ADASや自動運転の開発競争で、MBDに対する需要はさらに拡大していると思います。実際にベンダーの立場から見ていかがでしょうか。

宮野:当社の売り上げの約9割は、自動車分野ということもあり、おかげさまで業績は順調に伸びています。ADASや自動運転のようなシステムは、もはやMBDでなければ開発できないという認識が、業界全体で広まってきているように感じています。

―そもそもADASや自動運転の開発で、なぜMBDが注目されているのでしょうか。

宮野:やはり、実車ではもはや検証しきれないほどシステムが複雑化しているからだと思います。ADASは多数のセンサーやアクチュエーターが、場面に応じて協調しながら動作することで成り立つ機能です。テストの量はメカ中心の時代とは比べものにならないほど増え、人手では到底テストしきれません。仮に力任せにテストするとしても、それをECU(電子制御ユニット)や実車の完成を待ってから行うようでは時間がかかり過ぎで、タイムリーな市場投入など不可能でしょう。しかも自動車がADASからさらに高度な自動運転を志向するようになり、1台のクルマが搭載するセンサーやカメラの増加に拍車がかかっています。

 MBDにおけるHILS(Hardware-Inthe-Loop Simulation)は仮想環境でECUを実時間で検証する手法です。仮想環境に置き換えたことで自由に道路環境、運転環境を設定でき、自動テストも可能になり、網羅的にテストができるようになりました。HILSはもともと、航空や宇宙など、利用シーンを容易に再現できないシステムの開発を行うために生まれた手法です。自動車においてはその目的が変化し、開発の効率化、網羅的な検証によるソフトウエアの品質向上のために利用されています。ADAS の開発ではテストすべき利用シーンが膨大になったことで実機テストでは網羅できなくなっています。そこでMBD がクローズアップされるようになったのです。情報量が幾何級数的に拡大する中でも、クルマの安全性や性能を確実に担保する効果的な手法といえます。

―情報量が増え続けると、MBD のツール側も従来の機能では追いつかなくなるように思えます。どのように対応していく方針ですか。

宮野:当社はここ数年、ツール群の強化を図ってきました。2016年から販売を始めた「RTMaps」はその一例です。カメラやレーダーなどセンサーからの情報に正確なタイムスタンプを付け、多数のセンサー情報を組み合わせたアプリケーションの開発を支援するツールです。

 2018年は、さらにハードウエアの処理能力強化も進めていきます。その1つとして、モデルを実機検証するRCP(ラピッドコントロールプロトタイピング)の「MicroAutoBoxII」に、GPU搭載モデルを追加する計画です。GPUを使うモデルには、GPU用の画像処理ライブラリーも併せて搭載します。

 1台のクルマが搭載するカメラの台数が増え、それらの映像を高度に活用する機能が求められるようになると、車載マイコンだけでは処理しきれず、GPUがクルマに搭載される時代がいずれ来るでしょう。当社は、その時代に備えて、いち早くGPU搭載のRCPを提供し、GPUを活用した機能を開発するベンダーを支援していきます。

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図 高性能なセンサーデータ処理を実行する「MicroAutoBox Embedded SPU」

―MBDを開発に取り入れるベンダーが増えてくると、MBDを駆使できる技術者が不足することが懸念されます。

宮野:MBDの裾野を広げるためにも技術者の育成は重要です。当社では2017年末から、エントリーレベルの技術者を育成するプログラム「MBDエンジニア育成プログラム HILシミュレータ操作技術者(エントリーレベル)」を導入しました。1週間みっちりMBDのトレーニングを行い、MBDを取り入れる開発現場でリーダーとなり得る人材を育成します。

 実は以前から、「MBDを活用できる人材を派遣してくれ」という要望を、お客様からたびたびいただいていました。しかし残念ながら、当社はそうしたリソースを持ち合わせていません。当社ができることは、開発現場でコアとなる技術者を育成することではないか。そう考えて、MBDエンジニア育成プログラム HIL シミュレータ操作技術者(エントリーレベル)を立ち上げました。グローバルで事業展開するdSPACE Japanの中でも日本法人独自のプログラムで、まずは特にニーズの大きいHILSからスタートしたところです。

―ツールとそれを使う技術者、両方の面から拡大を図ることで、MBDの普及が一層進みそうですね。

宮野:自動車分野は、今後もユーザーは拡大すると確信しています。自動車関連のメーカー単位では、当社のMBDツールはほぼリーチしていると思います。しかし、部門単位で見るとまだまだです。MBDが行き届いていない部門は、ユーザー独自のツールを使っていることが多いのですが、1社でしか使われないツールは発展のスピードが鈍く、陳腐化が進んでしまいます。ツール自体で他社と差異化する意義は薄いと思うのです。

 一方で自動車のシステムは「AUTOSAR」など基盤部分の国際標準化が進んでおり、業界で協調することが求められています。グローバル競争を考えると国際標準に早くから対応しておくことが重要で、ツールにもその対応を踏まえたものが必要になります。自動車分野の標準化の舞台は欧州であり、その欧州に本社を置くグローバル企業の当社は、ツールにそのノウハウを詰め込んでいます。

 自動車以外のユーザー拡大も図っているところです。既に建設機械や農業機械では大きな実績も出ています。例えば農業機械では、土壌に合わせた適切な走行制御が必要になるなど、自動車同様に複雑な制御と、それを開発初期段階でシミュレーションする機能が必要です。そこで自動車分野でのMBDの実績を参考にしたメーカーが取り入れるようになったのです。

 他にもFAやロボットなど、MBDが効果を発揮できる機械は数多くあります。いずれも自動車同様に制御の複雑化が進む分野です。それぞれの分野で得た知見を当社のMBDツールに反映し、自動車分野でさらに高度なシステムの開発に挑む技術者を支援していきたいと考えています。

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