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未来を拓くイノベーション創出を目指しアナログ×AIで社会の難題解決に取り組む

自動運転の実用化が一気に加速

―具体的なアプリケーションについてうかがいます。自動運転に関してはいかがでしょう。

馬渡:自動運転に関してアナログ・デバイセズが主に取り組んでいるのは、クルマの周囲360°を対象にしたセンシングの部分です。76GHzから81GHzをカバーするレーダーソリューション、赤外線レーザーを使うLiDARソリューション、そしてクルマの挙動や傾きを検知する慣性MEMSセンサーソリューションから構成される「Drive360™」というプラットフォームを提供しています。これらのセンサーにAIプロセッサーを組み合わせることで、自動運転のレベル3以上が実現できると考えています。

 もう1つが電源周りです。クルマは意外と電源事情が厳しく、また、イグニッションキーをオンにした瞬間などに電圧が大きく低下することもあり、センサーECUや画像認識ECUなどの回路に安定した電力を供給するには、高精度で、低ノイズ、高速過渡応答ができるなど極めて高度な電源技術が必要になります。この領域での私たちの技術やソリューションは、業界でもナンバーワンだと自負しています。

大崎:NVIDIAはGPUを核に自動運転に取り組んでいます。自動運転は技術的に難しく、しかも安全要求がきわめてシビアですから、お客様に貢献するためにも自社での開発も進めていて、2018年度中にレベル3、2019年度中にはレベル4の技術を完成させる予定です。

 実際に、レベル3に対応するAI車載コンピューティング・プラットフォーム「DRIVE PX 2」や、高性能なAIプロセッサー「Xavier(エグゼビア)」を搭載し、レベル4ないしレベル5の実現を見据えたAIコンピューターボード「DRIVE PX Pegasus」などを発表済みです。現在225社が「DRIVE PX」で研究開発を行っています。自動車メーカー、ティア1などのサプライヤー、ソリューションプロバイダー、スタートアップなどとパートナーシップを結んで、自動運転の実用化に向けた取り組みを進めています。既に、トヨタ自動車での採用が決まっています。

―自動運転の完成形があるとしたら、今はどれぐらいの地点にいると捉えていますか。

大崎:難しい質問ですが、これから先も技術の進化が落ち着くということはないと思います。ディープラーニングに関していえば、従来長い時間を要していた処理にGPUを使うことで、極めて短時間で終えられるようになりました。しかし、より多くのデータを高速に処理したいというのが業界共通のニーズです。計算資源はまだまだ足りないと言われています。人類が経験したことのないような産業革命あるいは技術革命がまさに進行している状況で、私たちもイノベーションをさらに加速していかなければならないでしょう。

馬渡:自動運転のレベル3が実用化されれば新たな課題が見えてきて、レベル4が実用化されたらまた違った課題が見えてくる。そういったことを繰り返しながら、センシング技術やAI技術がさらに進化していくと思っています。例えば、味覚センサーや嗅覚センサーは既に実用化されていますが、五感だけでは足りないからと、いずれは人間が持つ第六感的なセンシングも実現されるかもしれません。

機械や設備の自律化が進む

―もう1つの注力分野である産業機器はいかがでしょうか。

馬渡:この分野ではスマートファクトリーの実現に向けた取り組みが各社で活発化していて、生産や品質の向上に加えて、工場や設備を止めないためのしくみ作りが盛んです。

 アナログ・デバイセズが得意とするのは、センシングの部分です。機器や設備から良質なデータを取得し、クラウドに上げていく役割を担います。クルマよりもさらに厳しい工場の環境に対応すると共に、長期供給、品質、信頼性、堅牢性などの要件を満たすソリューションを提供していきます。

 また、先ほど挙げた「Drive360」は、ロボットや搬送機にも応用できます。元々はオートモーティブ向けに開発したテクノロジーですが、産業機器などのさまざまなマーケットにも展開していきます。さらに、サーバーセキュリティーの米Sypris Electronics社を2016年に買収しましたが、デバイスレベルでセキュリティー機能を入れ込む取り組みも進めていきます。

大崎:産業機器に関しては、ファナックが未来の工場作りを目指して、当社との提携を発表するなど、日本のお客様を含めてさまざまな協業を進めています。お客様のニーズは多様ですが、工場の機械や設備がAIによって自律し、相互に情報を交換して教えあうシステムの実現が、共通したビジョンとして挙げられます。

 NVIDIAは市場ごとにGPU製品を展開していますが、ゲーム用も科学技術計算用も自動運転用も産業機器用もすべてアーキテクチャーが同じです。ゲームのグラフィクス開発を担当していたエンジニアが、ディープラーニングを利用したスマートファクトリーのプロジェクトに入ることもできるわけです。そうした「One-Architecture」を基盤に、産業機器の世界でもイノベーションを起こしていきます。

―先ほどの注力分野にはメディカルも挙がりました。

馬渡:X線、CT、超音波などのメディカルイメージング機器向けにアナログ・フロントエンド(センサーなどの信号検出デバイスと、マイコンなどのデジタル信号処理デバイスを結ぶアナログ回路)を提供しています。例えば、画像にノイズが重畳してしまうと重要な病巣を見落としかねません。このため、センサーも、アナログ・フロントエンドも、基本性能が非常に重要になります。さらに今後は、AIが分析に使われるようになるでしょうし、ヘルスケアの分野でもバイタルサイン・モニターが集めたデータをAIで分析して病気の兆候を検知することが普通に行われるようになると見ています。体内インプラントによって遺伝子レベルの解析が行われるようになるかもしれません。そうした未来でも、アナログ技術とAIプロセッサーの組み合わせが活躍すると思います。

大崎:ディープラーニングは、画像認識によって微小なガンも高精度に見つけたり、長い年月が掛かっている新薬の開発で圧倒的なイノベーションを起こしていくだろうと期待されています。NVIDIAも引き続き医療機関や研究機関などを支援していきます。

アナログ技術とAIで社会に貢献

―最後に、今後の展望をお話しください。

大崎:ディープラーニングの歴史を紐解くと、今までのように大きな企業から技術が生まれてきたわけではなくて、クラウドベンダーがAIの基盤を提供して、そのうえでスタートアップ企業や研究機関がアルゴリズムを開発し進化してきました。NVIDIAは、先ほど述べたような人材育成を含めて、クラウドとスタートアップの両方を支援していきます。さらに、AIのエキスパートの方々がGPUを意識することなく開発できるフレームワークを提供していきます。新たな市場を創り上げて、広く社会の課題を解決するというところにフォーカスしていきたいと考えています。

馬渡:当社のCEO であるVincent Rocheは、お客様の抱える最も難しい技術課題、そして社会の課題に挑戦しろといつも言っています。それがアナログ・デバイセズのビジョンとなっていますし、そのために毎年売り上げの約2割を研究開発に投資しているのです。50億米ドル規模の会社となった今、年間1000億円の投資ができるということです。我々としてはその中で日本のお客様、日本の社会に貢献する部分を増やしたい。大崎代表からとても興味深いお話をうかがいましたが、NVIDIAがAIプロセッサーやディープラーニング技術を通じて社会の発展に貢献していこうとしているように、アナログ分野で社会に貢献していくというのが私たちのスタンスです。今回紹介した高精度なセンシングや安定した電源供給なども、お客様の課題を解決するための取り組みです。それが最終的には社会へとつながっていく。そこはこれからもしっかりやっていきたいと思っています。

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