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「第4次産業革命」が到来する中 アルパインとの経営統合で持続的成長への布石を打つ

近年、着実に業績を伸ばし続けるアルプス電気。スマートフォンやゲーム機など民生機器向け、車載機器向け共に販売は好調である。ただし、これにおごる気配はみじんもない。AIやビッグデータの活用、自動運転などの本格化によって産業構造が大きく変貌する中、アルパインとの経営統合で何を目指すのか。同社 代表取締役社長 栗山年弘氏に、2017年の総括と2018年以降の展望について聞いた。

―アルプス電気の2017年の事業状況はいかがですか。

栗山:現在、世の中全体の景気はバブル時代のような高揚感はありませんが、確実に好況だと感じています。実際、各社の業績は好調で人手不足に悩むほどです。

 こうした中、私たちも2018年3月期上期は計画を上回る結果になりました。連結売上高は前年同期比15.8%増、営業利益は同117.9%増でした。市場別に見ても、まんべんなく伸びました。

 民生市場では、スマートフォン向けも好調だったのですが、フォースフィードバック技術を応用した「ハプティック®リアクタ」がゲーム機向けで急成長しました。ゲーム機市場は、新しいプラットフォームが当たれば、約5年好調さが継続する可能性が高く、今後も期待できます。今期は、3年にわたる第8次中期経営計画の2年目ですが、今期中に最終期の目標に近い業績を達成できるかもしれません。

進展する市場で商機拡大

―スマホの進化に陰りが見えるという声が出ており、市場の先行きを不安視する見方もあります。今の好調さを中長期的にも維持できるのでしょうか。

栗山:長期的な動きは定かではありませんが、あと数年は高水準の需要が継続するとみています。スマホの動きについては、常に危機感を持って注視していますが、意図してスマホ向け製品の開発・生産にブレーキをかけることは考えていません。

 当社の製品をご採用いただいているお客様の下では、新しい魅力を提案するイノベーションが次々と起きています。こうした動きを見る限り、スマホはさらなる成長が期待できます。しかし、そればかりに頼ることはありません。

―車載市場は、いかがでしょうか。

栗山:自動運転をはじめとする電子化の流れが本格化することで、車両台数の伸び率以上に当社製品の売り上げを伸ばせる状況がここ数年続いています。今後も、自動運転車の普及が、センサーや通信関連部品の需要を押し上げる追い風となります。当社の付加価値の高い部品をどのくらい使っていただけるかが、今後の成長をより確かなものにする上で重要になります。単なる移動手段ではなく、高級感や楽しさを追求していく自動運転車が生まれれば、私たちのビジネスはさらに伸ばせます。

産業革命は新たなチャンス

―IoTやAI、ビッグデータの活用が本格化してきました。ものづくりの考え方や進め方への影響はありますか。

栗山:現在、アルプス電気が属する電子産業、自動車産業は大きな変化のただ中にあり、IoTやAIなどの登場により産業界全体において「第4次産業革命」の始まりが告げられています。私たちの生活が豊かに、便利になる半面、当社が手掛けているメカスイッチや静電入力の市場は衰退するかもしれません。また、現在のカーナビは淘汰され、カーシェアリングの普及で新車の販売台数も大きく減少する可能性もあります。

 これら、さまざまな脅威が予想される一方、新たなチャンスも生まれるでしょう。自動運転、シェアリング、コネクテッド、EVでは、新たなコックピットやセンサー、通信デバイスの需要が生まれます。また、IoTの普及で、すべてのモノにセンサーと通信機能が備わります。スマートフォンの進化も続き、人と人、人と社会をつなぐIoT 端末の中核としての役割が増すことでしょう。IoTやAI時代における商品の価値は、これまでのハードから、ソフトやビッグデータの「情報」へと移り変わるとみています。

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図 CEATEC JAPAN 2017で注目を集めた、スポーツ分野(野球)へのIoT活用事例

―産業構造の変化に向けた備えは。

栗山:アルプス電気では車載、スマホを含むモバイル、EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)の3つの市場でバランスよく成長を続けることが重要だと考えています。そのためにはHMI(Human Machine Interface)、センサー、コネクティビティーの3つのコア技術と製品の深耕や融合が欠かせません。特に車載製品やIoT 製品、センサー、コネクティビティーの領域においては、既存コア技術に加えてソフトウエアを含む機能モジュールを開発するなど高付加価値製品を創出し続けることが、持続的に成長していく上で必要です。ただし、第4次産業革命により技術・開発競争は激化し、1社ですべてを開発することには限界があります。このため他社との技術提携やアライアンスなども進めています。

アルパインとの経営統合で高付加価値製品を創出

―アルパインとの経営統合が発表されました。狙いをお聞かせください。

栗山:アルプス電気では、ここ数年の事業規模急拡大で経営リソースが逼迫しており、この解決が大きな経営課題であると捉えています。一方でカーナビなどを手掛けるアルパインでは、主力の車載インフォテインメント・ナビ市場において、ADASなどに対応した高機能システム製品と、スマホと連携したコモディティー製品に2極化し始めています。前者は開発難易度がさらにアップし、後者は付加価値確保が厳しくなる。このような中において、高付加価値な製品を創出し続けるためには、部品の潜在能力を引き出す高度なソフトウエアの開発・投入が欠かせなくなり、ここにアルパインのソフト開発力が生きます。また、アルプス電気が強い入力用部品と、アルパインの音と映像の出力技術を融合することで、より洗練された車載へ向けた新たな提案が行えるようになります。

 これまでもアルプス電気とアルパインは同じグループ会社として、業務提携による共同開発活動や改善活動を行ってきました。しかし、両社は独立した上場企業であり、現在の活動には制約や限界があります。経営統合後はこれらが解消され、両社の経営資源の相互活用を進めることで、開発力の強化に加えて、コストや効率の面でもさまざまなシナジーが期待できます。2018年夏ぐらいまでには海外も含めた各種審査が終わることが想定され、その後は、競争法の規制に配慮しつつ業務提携を結んで、実質的な統合に向けて動き出したいと考えています。

 アルプス電気の車載市場のお客様は、アルパインの競合も含まれています。私たちが各社への説明に回った限りでは、経営統合によってアルプス電気の製品力が高まることに期待するとの声が数多く聞かれました。

 2017年に打った布石を十分に生かし、お客様の期待に応えながら持続的に成長できる企業を目指します。

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