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自動車のセキュリティーリスクを統合的な対策と開発効率化で低減

自動車が外部とネットワークでつながり、自動車の制御システムもセキュリティーリスクを考慮する必要が出てきた。組み込みセキュリティーの高度なノウハウでソリューションを展開するのがイータスだ。開発データの管理などと併せて、自動車制御システムにまつわる課題解決を支援する同社の社長に2017年2月に就任した横山崇幸氏に、同社ソリューションが業界で求められている背景を聞いた。

―自動車にセキュリティー問題が浮上している理由は何でしょうか。

横山:やはりネットワークにつながるようになったことが大きな要因だと思います。ネットワーク化される以前から、物理的にケーブルをつないで車載システムに侵入するという事例はありました。しかし、無線でネットワークにつながるようになったことで、侵入の可能性が大幅に増えたのです。

 しかも自動車はADAS(先進運転支援システム)や自動運転など、コンピューターで直接車両を制御する機能の開発が盛んです。外部からの侵入でそのコンピューターを不正に操作すれば、すぐに大きな事故につながり、人命に影響が及びます。セキュリティーリスクの可能性だけでなく、影響度も大きくなっていることが、自動車のセキュリティー問題を深刻にしているのです。

 米国では自動車のセキュリティー対策を義務付ける法律の策定作業が進むなど、グローバルで共通課題として認識されるようになりました。そこで当社は、「ESCRYPT」のブランドでソリューションを展開しているのです。

―具体的にどのようなアプローチで自動車のセキュリティー対策を強化するのでしょうか。

横山:自動車のライフサイクル全般にわたってセキュリティー向上を支援しています。主なものに開発前の仕様策定支援と、車載用ファイアーウオール、侵入検知、市場投入後の監視があります。

 開発するシステムがもともとぜい弱なようでは、いくらセキュリティーを高めようと努力しても意味がありません。そこで仕様書を作る段階でセキュリティーリスクを詳細に分析し、足りない要素を補うなどのコンサルティングを行っています。また、自動車のシステムに特化したファイアーウオール「CycurGATE」、侵入検知システム「CycurIDS」を提供しています。

 開発した自動車が販売された後も、セキュリティー確保はメーカーの責務として欠かせません。そこでバックエンドで常時監視する「Security Operation Center」を、立ち上げています。あるティア1メーカーと共同で立ち上げ、既に運用中です。

自動車のデータ管理もクラウドへ

―開発段階からセキュリティーを念頭に置こうとしても、その自動車の制御システムの開発作業自体が複雑化しており、さらにセキュリティー対策も進めるとかなり大変そうです。

横山:確かにその通りです。そこで当社は開発工程全体をカバーするソリューション群を用意しています。自動車の制御システムでは、モデルベース開発(MBD)が取り入れられるようになり、テスト工数削減などで一定の効果を発揮しています。ただし、まだ改善しなければならない点は多くあります。その1つが各ツールの連携です。

 MBDでは開発のステージごとにMILS、SILS、HILSなどがあり、シミュレーションで開発効率化に寄与しています。しかしMILSは機能的なつながりを検証するのに対し、HILSはパフォーマンスまで含めた検証を行うなど、それぞれは目的が違います。そのためテストの粒度も異なり、各テストは分断されがちです。

 当社はそれらをつなぐ環境として「COSYM」を提供しています(図)。各テストをシームレスに連携させるソリューションで、開発フロー全体でテストを共通化します。自動車の制御システムがハードだけでなくソフトも複雑化する中では、シミュレーションはHILSだけでは足りません。MILSやSILSでもシミュレーションが重要になり、そこも含めて一貫したテストが求められると考えております。

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図 「COSYM」によるシミュレーション間のシームレスな連携データを共通化しながら、目的に応じたシミュレーションの使い分けが可能になる

―MILSからSILS、HILSまでシミュレーションを活用しようとすると、活用するデータも膨大になりそうです。

横山:オフィスの情報システムがデータの増大に対応するためにクラウド志向になったように、自動車の制御システムもデータの増大にはクラウド化が有効と考えています。当社はデータ管理のソリューション「EADM」で、クラウド化を提案していきます。

 EADMでは、テストや実走行で得たデータをクラウドに蓄積し、「雨天時に急ブレーキをかけたときの動作」など必要に応じて取り出し、別のテストに活用することが可能です。ビッグデータ化に備えるためにも、クラウドは有効なソリューションといえます。

次世代AUTOSARにいち早く対応

―制御システムの複雑化を受けて、共通基盤であるAUTOSARも機能強化が進んでいます。その策定が進む欧州をベースとする企業として、AUTOSARの新しい流れを受けたサービスの方針をお聞かせください。

横山:2018年にもプロトタイプが登場すると見込まれるAUTOSARの次世代規格「AUTOSAR Adaptive Platform」は、ADASや自動運転などに求められる複雑な処理に耐えるため、マイコンのマルチコア対応や高度なメモリー管理機能などが取り入れられる予定です。搭載するマイコン自体も高機能化し、ほとんどパソコンのOSのようなリッチなシステムになり、セキュリティー面も単純な組み込みシステムとは全くレベルの異なる対策が必要になるでしょう。ドイツに本社を置く当社はAUTOSARの活動にもプレミアムメンバーとして関わっており、新しいAUTOSARについてもいち早く対応したソリューションを展開していきます。

 もっとも当社は欧州がベースといっても、すべての活動が欧州に依存するような会社ではありません。私は2016年末に当社に入る以前、複数の外資系半導体企業で社長や事業本部長を務めていました。イータスには、それら企業と違って日本で完結できるコンピテンスがあることを実感しています。もちろんAUTOSARについても熟知したスタッフが豊富におり、実態としては日本のサプライヤーと変わりません。純粋な日本企業のようなフットワークで、欧州の先端的な情報を基にしたソリューションを提供し、ツールへの投資コストの何倍もの効率化を顧客にもたらしていくことが、業界の中で当社に課せられたミッションと考えております。

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