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2015年、PaaSは実践段階へ xプラットフォームサービス、DockerアプリケーションのためのPaaSに進化

OpenShiftでPaaS環境を構築するメリットは、社内のITリソースをダイナミックに最適化できることにある、と前回の記事で述べた。それにより、これまで別々の環境を構築していた開発と運用の両部門が連携・協力してシステムをアジャイル開発する“DevOps”が実行可能になる。本稿ではさらに、エンタープライズクラウドを実現する「xPaaS」、JBoss製品との連携強化、さらにOpenShiftの次期バージョンにおけるDocker連携について解説しよう。

OpenShiftとJBoss製品を融合する「xPaaS」

 DevOps環境の構築には高度なスキルが必要であり、これまでは多くの時間と人手を振り分けざるを得なかった。開発・テスト・ステージング・本番環境を別々の仮想化基盤に立ち上げ、さらに、継続的インテグレーション(CI)を実現するためにJenkinsやGitなどのサービスをそれぞれインストールしなければならなかった。それに対して、「OpenShift」はWeb管理コンソールのウィザードやコマンドラインツールを用いることで、開発者が望むDevOps環境をわずか5分程度でPaaS上に簡単に構築できる。また、OpenShiftでは、オートスケール機能やロードバランシング機能を提供しており、アプリケーション実行環境においても柔軟な基盤サービスを提供していることは、前章で述べた。

 レッドハットでは、このOpenShiftに「Red Hat JBoss Middleware」を融合させた「xPaaS」のアーキテクチャーの提供に力を入れている。このxPaaSにはいくつか種類がある。まず「Red Hat JBoss EAP」を提供する「aPaaS(Application PaaS)」、次に「Red Hat JBoss Fuse」や「JBoss A-MQ」「JBoss Data Virtualization」を利用できる「iPaaS(Integration PaaS)」、さらに「Red Hat JBoss BPM Suite」がラインアップされた「bpm PaaS」、そして、モバイルデバイスへのプッシュテクノロジーと企業のバックエンドシステムとの連携を柔軟にできる「mPaaS(Mobile PaaS)」と「MBaaS」だ。

 これらのxPaaSサービスを利用すると、例えば、各地の拠点に分散する既存のデータ資産およびプロセスの連携・統合をxPaaSに実装するクラウド基盤上で簡単に構築でき、優れたユーザーインタフェースを持つモバイル端末と連携できるようになる。次にこれらxPaaSの一端を具体的にご紹介しよう。

「xPaaS」のアーキテクチャー

M2M、IoT時代に期待されるHubサービスをクラウドに実現

 レッドハットは、2014年11月、iPaaSの製品である「JBoss Fuse for xPaaS」と「JBoss A-MQ for xPaaS」を提供開始した。

 「Red Hat JBoss Fuse」(以下、JBoss Fuse)は定評あるOSSであるApache Camelをベースとして、Apache ActiveMQおよび、Apache CXFのコンポーネントを包含した、ESB(Enterprise Service Bus)製品である。 既存のアプリケーションに組み込むことで、実践的で効率的な企業システム統合を可能にしている。150種類以上の豊富なプロトコルと通信でき、かつ、軽快な動作が特徴だ。

 レッドハットではこの「JBoss Fuse」をOpenShiftに統合することにより、これまで高度な導入作業を要するESBの導入作業をOpenShift環境から一元的に、かつ、直感的な操作で素早く完了できるようにした。

 また、「Red Hat JBoss A-MQ」(以下、JBoss A-MQ)にも注目しておきたい。「JBoss A-MQ」は実績豊富なOSSのメッセージング基盤Apache ActiveMQの拡張性および信頼性を強化し、レッドハットによる高度なサポートを加味したエンタープライズ向けのメッセージ基盤である。iPaaSとしてこれらの機能が統合されていることにより、企業のあらゆるシステム連携をあたかも一つのPaaS上のサービスとして利用できるため、企業のシステム連携、M2MやIoTのためのHubサービスの立ち上げを驚くほど簡単な操作で実現することができるようになるのである。

 導入事例を示そう。オンライントレーディング企業であるE*TRADEは、ローン商品など自社が保有するリスク資産の価値を市場金利などと照らし合わせてリアルタイムに分析・評価する計算プラットフォームに従来、商用のメッセージバスを使っていた。トランザクションの数は1日30万件。これを「JBoss A-MQ」にリプレースしたところ、「ライセンスコストの大幅削減と頻繁なアップグレードの抑制と同時に、安定性、拡張性、パフォーマンスが大きく改善された」(同社のIT部門統括者)。

 なお、「JBoss Fuse」と「JBoss A-MQ」にはMQTT(MQ Telemetry Transport)という軽量なメッセージング・プロトコルが備わっている。このプロトコルはセンサーやデバイス、途切れがちな狭帯域のネットワーク上での通信を想定して設計されたもの。M2M(マシンツーマシン)や、いわゆるIoT(モノのインターネット)における膨大なデータ通信に適している。今後、インターネットには数十億以上のIoTが接続されると予想されている。つまり、JBoss A-MQやJBoss FuseとOpenShiftを統合したxPaaSは、企業のシステム連携やIoT連携を簡単に実現するためのクラウド上にある一種のHubサービスを提供するPaaSとなるわけだ。

インテリジェントな判断サービスをPaaSとして提供
そして、DockerアプリケーションのためのPaaSへ

 レッドハットでは「xPaaS」のビジョンの下で、さらに様々なJBoss製品をOpenShiftに統合していく予定だ。

 その中で特に注目されるのが、「Red Hat JBoss BRMS」(以下、JBoss BRMS)である。BRMS(Business Rule Management System)とは、日々変化するビジネス現場のルールをシステム上で可視化し、一元管理する仕組み。リサーチ会社ITRが発行するレポートによると「JBoss BRMS」は国内BRMS市場で26.7%、大手の商用製品を抜いてシェアNo.1(※)のポジションを獲得した。2013年度には、日産自動車をはじめ、数多くの企業が導入を決めた。

 BRMSは、アプリケーションの開発生産性に大きく貢献するだけでなく、特定の担当者が行っている複雑な条件判断などをビジネスロジックとして可視化・管理できる。さらにロジックの組み合わせからなる複数のアプリケーションをシンプルに統合する。その結果、業務の標準化やコンプライアンスの強化がもたらされる。最近はCOBOLで記述されているパターンマッチングや集計処理などのバッチ処理をBRMSのルール定義やディシジョンテーブルで再実装し、生産性と保守性を大きく向上させた事例のように、IT資産のモダナイゼーションとしての適用事例も広がりを見せている。

 このBRMSがOpenShiftに統合されることで、インテリジェントな判断、推論、最適解の発見をWebサービスAPI経由でフィードバックするプラットフォームサービスをクラウド上に実現することができる。つまり、クラウド上に蓄積されたナレッジや判断ロジック、推論を各種アプリケーションは、全社で共通的なPaaSのサービスとして利用できるようになる。これまでそれぞれのアプリケーションに実装してきた判断ロジックは、すべてクラウド上に集約されるというわけだ。つまり、似たような判断ロジックが各所に実装されることで発生していた処理のミスマッチを大幅に軽減することができるようになる。

 最後に、開発現場で注目されるコンテナ技術の「Docker」とOpenShiftとの提携に関して、注目すべき動向があるため紹介しておこう。レッドハットは、2014年4月、次期OpenShiftにDockerアプリケーションが動作できるようにすることを発表した。また、同年6月、Googleが開発を進めているDockerアプリケーションの管理基盤 Kubernetes プロジェクトへの積極的な参加を表明した。そして、現在は、次期OpenShift(2015年中にリリースを予定)は、このDockerアプリケーションの開発からテスト、配備、運用管理のすべてを自動化し、かつ、Dockerアプリケーションの完全なライフサイクルをサポートするプラットフォームとしてOpenShiftを位置づける狙いだ。

 これにより、OpenShiftで開発されるアプリケーションは、必然的にDockerに対応し、DevOps環境のもとDockerアプリケーションの俊敏なアップデートを実現できる。また、Kubernetesと統合したOpenShift環境において、Dockerアプリケーションは、そのクラスタ化、スケールアウトが可能になり、さらに、バーチャルネットワーク、ソフトウェアストレージへのアクセス機能によって、あたかも実環境で動作しているようなアプリケーション環境を実現することができる。つまり、次期OpenShiftが提供するPaaS環境は、Dockerアプリケーションのアジャイル開発環境からテスト、配備、そして、本番運用環境を実現することで、Dockerアプリケーションのための完全なライフサイクルをサポートするPaaS基盤として機能するというわけだ。

 今やDockerアプリケーションは、クラウド時代におけるアプリケーションの在り方の大きなパラダイムシフトとなっている。しかし、このDockerアプリケーションの開発や運用ノウハウのために高度なスキルが必要となるため、企業アプリケーションがDockerアプリケーションを採用するには敷居が高すぎるという現状もある。レッドハットが提供を予定する次期OpenShiftは、この敷居をなくし、すべてのエンタープライズ企業が簡単にDockerアプリケーションをDevOps環境のもとで開発し、信頼のおけるプラットフォームで運用できる環境を提供するのである。これは、非常に注目すべき動向である。

 しなやかに進化し続けるOpenShift。それに追従する形で、エンタープライズの開発スタイルはいよいよDevOpsを本格的実践する段階を迎えている。

次期バージョンのOpenShiftのアーキテクチャー図

※出典:「ITR Market View:システム連携/統合ミドルウェア市場 2014」

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