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鈴鹿医療科学大学、情報基盤クラウド化の軌跡(前編)

1991年に日本で初めての4年制医療系大学として創設された鈴鹿医療科学大学は、順次学部学科を増設して、4学部8学科を持つ医療・福祉系の総合大学へと発展し、来年4月には看護学部の開設も予定されている。同大学の成長を支える基幹システムとして位置づけられてきた学生情報管理システムと学生・職員向けポータルサイトは、現在、NTT西日本グループの提供するクラウドサービス上で稼働している。同大学がシステム基盤をクラウドに移行した狙いはどこにあるのだろうか。

前編 BCP対策として導入したクラウドを基盤に戦略的なデータ活用の道を切り拓く 後編 高い信頼性とSINET4との親和性を武器に大学情報基盤のクラウド化を推進する

1991年に日本で初めての4年制医療系大学として創設された鈴鹿医療科学大学は、順次学部学科を増設して、4学部8学科を持つ医療・福祉系の総合大学へと発展し、来年4月には看護学部の開設も予定されている。同大学の成長を支える基幹システムとして位置づけられてきた学生情報管理システムと学生・職員向けポータルサイトは、現在、NTT西日本グループの提供するクラウドサービス上で稼働している。同大学がシステム基盤をクラウドに移行した狙いはどこにあるのだろうか。

大切な学生のデータだからこそ信頼できるクラウドで守りたい

村田 尚久氏

鈴鹿医療科学大学
大学事務局長
村田 尚久

チーム医療に対応できる高度な医療系人材を育てたい――日本放射線技師会会長を長年務めた中村 實氏の強い想いによって誕生した鈴鹿医療科学大学は、現在、三重県鈴鹿市に2つのキャンパスを持つ。保健衛生学部、医用工学部、鍼灸学部がある千代崎キャンパスと薬学部がある白子キャンパスだ。本部機能は千代崎キャンパスに置かれており、教務系システムと言われる学生情報管理システムと学生・職員向けポータルサイトが稼働するサーバーもそこにあった。

同大学がサーバーの移行について検討する直接のきっかけとなったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。「ニュースを見て他人事ではないと思いました。千代崎キャンパスは、伊勢湾の海岸からわずか2キロ。しかも、海抜は6メートルしかありません。三重県の津波予想では安全な場所だと言われていますが、万が一、教務系システムが被害を受ければ、大学の活動に及ぼす影響は大きい。事業継続計画(BCP)の観点から強い危機感を覚えました」と大学事務局長の村田 尚久氏は語る。

しかも、当時サーバーを設置していたサーバールームは、管理棟の1階にある普通の部屋を改造して作られたもので、決して堅牢なものではなかった。大学事務局教務課課長の松永 ひとみ氏は「ちょうど教務系システム用のサーバーがリプレースを迎える時期でもあったので、サーバーの設置場所も含めて見直すことになったのです」と経緯を説明する。

当初は白子キャンパスにサーバーを移転することも検討された。「白子キャンパスは海抜13メートルのところにあり、安全性は高まります。しかし、リスクがゼロではないし、保守運用など、メンテナンスの負荷は変わりません」と村田氏。そのタイミングでクラウドへの移行がNTT西日本から提案された。他社からも提案を受けたが、最終的に現行の教務系システムを納入し、信頼度も高いNTT西日本が選定された。SINET4という各大学が利用する学術情報ネットワークとの接続における親和性の高さも評価された。

松永 ひとみ氏

鈴鹿医療科学大学
大学事務局 教務課 課長
松永 ひとみ

「今まで使っていた教務系システムがそのまま移行できると聞いていたので、システム面では不安はありませんでした。気になったのはレスポンスのことくらい。費用面では自前でサーバーを持つのと5年スパンで見てほぼ同じでした。ただ、電気代も不要で、資産計上の必要なく、トラブルもなさそうだったので、クラウドで行きたいという思いは強かったですね」(松永氏)。

最終的にクラウドを選択する判断を下した理事長の髙木 純一氏は「学生の情報は大学にとって大変重要な資産。それだけに安全性が最優先されます。クラウドなら自前で持つより安心できますし、NTT西日本には大きな信頼をおいています。他にどこがあるのか、という感じでした」と話す。

戦略的な大学経営の鍵となるデータの高度利用を視野に

髙木 純一氏

鈴鹿医療科学大学
理事長
髙木 純一

クラウドへの移行は思った以上に順調に進んだようだ。松永氏によれば「気が付かないうちにクラウド上で稼働していた」という感じだったという。既存のアプリケーションをクラウドに移行するのにかかった時間は、約1.5日。土日を使っての作業だった。移行後、レスポンスにやや遅れが発生したが、チューニングすることで問題は解決された。

「クラウドに移行することで、サーバーへの不安やリスクが解消され、そこにかかる職員の労力も一切なくなりました。今まで以上にデータを安心して活用でき、そこにパワーを割くことができます」と村田氏は安心して利用でき、信頼できるインフラ基盤を手に入れた意義を語る。実は同大学にとって、データの活用は経営戦略を左右する重要なファクターになりつつある。

髙木氏は「ここ10年、大学経営のキーワードとして注目されているのが、エンロールメント・マネジメント。学生が志願した時点から、合格、入学、在学、卒業、そしてそのあとまで一貫してサポートしていこうという考え方です。これを実現するためには、多くのデータを収集し、活用することが必要になります」とデータの重要性を指摘する。

すでに同大学では履修状況はもちろん、出席率、成績、予習時間、復習時間などのデータを分析して、課題解決に活用している。松永氏は「休学や退学につながる負の流れを断ち切るには、こうしたデータに基づいた対策が必要です」と語る。村田氏も「データで可視化することで、職員も教育方法について説得力のある意見が言えるようになってきました」と語る。データが教育の現場を変えつつあるのだ。

現在、同大学では「医療人底力教育」というカリキュラム改革に取り組んでいる。一年生を対象に学部学科を超えた混合チームによる共通科目を設け、医療人としての基礎教育を徹底するとともに、チーム医療を体験的に学ぶという画期的な教育システムである。幅広い学部学科を持つ同大学の特色を活かすことができ、「他の医療・福祉系大学との差別化を図る」(髙木氏)鍵とされる。来年度から実施される予定だ。

こうした教育改革を実施するためには、当然、企画を推進する教務スタッフには大きな負担がかかる。「クラウドに移行することで運用・管理にかかる余分な負担を減らせたことで、スタッフのパワーをより重要なところに振り向けることができた」と村田氏は、クラウドへ移行したことで、より本業に注力することが可能になったと話す。これもクラウド移行の成果の一つだと言えるだろう。

クラウドに期待される将来に向けた幅広い活用

稼働を開始したばかりのクラウドだが、今後の発展への期待は高まりつつある。教務としては学生サービスの向上のために、クラウドだからこそ実現できるサービスに期待をする。松永氏は「早々に実現してもらいたいのが、成績証明書のような各種証明書をコンビニで受け取ることができる仕組みです。クラウドならではのサービスだと思いますね」と期待する。

また、エンロールメント・マネジメントのデータ基盤としてもクラウドに期待がかかる。「先般、あらゆるデータを収集して大学に役立てるIR(Institutional Research)の専門部署を立ち上げました。学長の直轄組織として情報活用のイニシアチブをとっていきますが、活動の基盤にクラウドを活用していく可能性もあります」と村田氏。先の展開が読めない領域にも適用できるのがクラウドの強みでもある。

髙木氏は「来年度から看護学部も開設され、現在2,200名の学生数は、4年後には2,700名になります。今後もデータはますます増加していきます。それらのデータを活用するには、分散しているデータもまとめていかなければなりません。まさにビッグデータの時代なのです。それだけに負担が少なく、信頼性も高い、柔軟性に富むクラウドへの期待は大きいですね」と語る。同大学の発展にクラウドが貢献できる範囲は広い。今後の展開が楽しみである。

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[審査13-2228-1]

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