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鈴鹿医療科学大学、情報基盤クラウド化の軌跡(後編)

鈴鹿医療科学大学のBCP対策のためにNTT西日本が提案したクラウドは、将来幅広く活用され、同大学の活動にさらに貢献することが期待されている。NTT西日本グループの提供するクラウドサービスの強みはどんなところにあり、今後、教育機関に対してどのような提案活動を行っていくのか。NTT西日本の、鈴鹿医療科学大学のクラウド導入プロジェクト担当者に、同大学へのアプローチから、今後の展開まで話を聞いた。

前編 BCP対策として導入したクラウドを基盤に戦略的なデータ活用の道を切り拓く 後編 高い信頼性とSINET4との親和性を武器に大学情報基盤のクラウド化を推進する

鈴鹿医療科学大学のBCP対策のためにNTT西日本が提案したクラウドは、将来幅広く活用され、同大学の活動にさらに貢献することが期待されている。NTT西日本グループの提供するクラウドサービスの強みはどんなところにあり、今後、教育機関に対してどのような提案活動を行っていくのか。NTT西日本の、鈴鹿医療科学大学のクラウド導入プロジェクト担当者に、同大学へのアプローチから、今後の展開まで話を聞いた。

鈴鹿医療科学大学の課題にクラウド化で対応

桜井 秀樹氏

西日本電信電話株式会社
三重支店 ビジネス営業部
SE部門 SE担当 主査
桜井 秀樹

NTT西日本と鈴鹿医療科学大学との密接な関係が始まったのは、同大学の薬学部が新設された2008年頃のこと。新キャンパスの学内LANや電話設備など情報通信インフラの構築を提案し、受注した同社は、さらに老朽化していた教務系システムについてもパッケージの導入を提案し、システム構築を担当していた。

その教務系システムの更改から5年目が近づき、リプレースの時期が迫った頃、東日本大震災が発生した。三重県はもともと東海、東南海地震の影響が大きいと見られている地域。同大学の千代崎キャンパスは伊勢湾の海岸から近く、海抜も低い。危機感を持った同大学はサーバーの設置場所を含めて、リプレースに向けた具体策を検討し始めた。

「教務系システムのサーバーは、一階のサーバールームに設置されていましたが、より高度なセキュリティ対策も必要で、耐震性の問題もありました」と同社の三重支店のビジネス営業部 SE部門 SE担当で、同大学を担当する桜井 秀樹氏は当時の状況を振り返る。教務系システムを構築した同社にも、当然のようにこれらの対応策の提案が求められた。

同大学の場合、教務系システムを主管するのは、情報センターではなく、大学事務局の教務課。それだけに重要視されたのは、システムの技術面や性能面ではなく、大事な学生のデータをどう守るかだった。そこで同社はクラウドの活用を提案する。「現行のシステムをIaaS(※1)上に移行することで、大学側の様々な要望に応えられると判断しました」と教育機関向けのクラウドビジネスを担当する高木 真氏は、提案の背景を語る。

当初はクラウドに対して明確なイメージを持っていなかった大学だが、最終的には同社の提案が受け入れられた。桜井氏は「クラウドサービスを利用する料金は発生するが、クラウドへの移行にあたっては、教務系システムのアプリケーションの保守延長とデータの移行の作業費用のみで、システムは今のまま使えるという提案がわかりやすかったのでは」と振り返る。これまでのネットワーク構築等で培ってきた総合的なブランド力も効果を発揮したようだ。

クラウドか、自社サーバーなのかという検討を経て、最終的に同大学は教務系システムをクラウドに移行することを決定する。移行作業はわずか1.5日という短い期間で完了し、パフォーマンステストに基づくきめ細やかなチューニングによりレスポンスタイムの改善を図り、現在は大きなトラブルもなく運用されている。

大学側にメリットが大きいSINET4との接続サービス

駒田 雅朗氏

西日本電信電話株式会社
三重支店 ビジネス営業部
SE担当課長
駒田 雅朗

同社が提案したクラウドは、NTT西日本グループが昨年12月からサービス提供を開始したIaaSサービス。データセンター内のサーバー群をVMwareによって仮想化し、顧客専用の仮想化サーバーを提供するものだ。

サービスとしての特徴は大きく2つ。データセンター自体の堅牢性と仮想化技術を駆使した冗長性だ。三重支店ビジネス営業部のSE担当課長である駒田 雅朗氏は、「NTTグループの通信ビルの耐震性と多重化による回線の耐障害性の高さはお客様から高い評価をいただいています」と語る。また、サーバーに障害が起きた際には、別の仮想サーバーに切り替わる仕組みを備えており、データのバックアップも取っている。

大学などの教育機関にとっては、もう一つ別の特徴も注目される。日本全国の大学や研究機関の学術情報ネットワーク、SINET4との接続性の良さだ。西日本のSINET4のノードが設置されているデータセンターのほとんどに、NTT西日本のデータセンターが利用されており、IaaSとSINET4を接続したサービスを利用することができる。高速なデータのやりとりもでき、信頼性も高く、安定している。

鈴鹿医療科学大学でもNTT西日本グループのクラウドを選択した理由として、「データセンターの信頼性の高さ」と「SINET4と接続されたサービス」を挙げている。「国立情報学研究所(NII)のL2VPNサービスを利用することで、直接つながれたIaaS上のシステムは、あたかも学内のLAN上にあるかのように利用することができます。これは大学にとっては大きなメリットです」と高木氏は強調する。

「南海トラフ地震の懸念もあり、もともと西日本エリアはBCPへの関心が高い地域です。さらに昨年10月の津波予測の見直しもあって、BCPへの意識はますます高まっています」と駒田氏は、レベルの差こそあれ、各大学でもBCPの検討は進んでいると話す。
 高木氏は「最近はデータのバックアップだけでなく、万が一の場合でも事業を継続できるようにするために、システム全体でどんな対策が必要なのかという視点からBCPに対する総合的な検討が進んでいます」と変化を指摘する。

情報基盤のクラウド化と学生向けサービスの拡充を

高木 真氏

西日本電信電話株式会社
ビジネス営業本部クラウドソリューション部
地域ICT推進グループ 文教担当 大学チーム 主査
高木 真

今回、鈴鹿医療科学大学のクラウド利用は、教務系システムという限定された領域に限られる。「今後は、業務システムや基幹系システムに対しても、クラウド利用を提案していきたい」と桜井氏は意欲を見せる。一部にはハウジング(※2)を利用するなど、ハイブリッド型での構成も視野に入れているようだ。

SINET4との接続サービスというアドバンテージを持ち、実際にクラウドの利用がスムーズに滑り出した今、NTT西日本グループが提供するクラウドサービスの利用範囲が広がる可能性は大きい。駒田氏も「SINET4という仕組みを背景に、大学間の連携を意識した提案など、クラウドならではの発展性も考えたい」と語る。

高木氏も「一般企業ではネットワークは単独で構築していますが、大学はSINET4という共通のネットワークを使っています。この違いは大きい」と指摘する。SINETは大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構である国立情報学研究所が構築、運用している情報通信ネットワークであり、大学分野としては「SINETありきという意識」(高木氏)がある。

しかも、共通の認証方式が取り入れられ、上位レイヤーでのサービスを支援するインタフェースやサービス共通プラットフォームも整備されている。SINETのサービスを使って、SINETのネットワーク上に閉じられた仮想組織を作ることもできる。「こうしたSINETの活用ノウハウを持ち合わせている」(高木氏)のもNTT西日本の強みである。

NTT西日本では今後も大学の情報基盤としてクラウドの普及を推進するとともに、コンビニでの各種証明書発行システムやインターネットによる出願システム、学費納入受付システムなど、受験から卒業後、社会人、保護者、地域住民まで大学と関わりを持つ人々をカバーするコンテンツやアプリケーションを提供し、大学向けサービスの充実を図っていく「大学ライフサイクルマネジメント」が必要であると考えている。国内の大学におけるエンロールメント・マネジメント実現も含め、NTT西日本の今後の活動に期待したい。

※1 Infrastructure as a Service:情報システムを構築するためのハードウェア、OSなどの基盤を、インターネットや閉域網などを通じたサービスとして提供する形態

※2 データセンターの利用形態の一つ。自社のサーバーやネットワーク機器をデータセンターに持ち込み、データセンター事業者から設置場所と電力、回線を提供してもらう

SINET4(L2VPN)と接続可能なNTT西日本グループのIaaSサービス
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[審査13-2228-1]

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