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COBOLフォーラム2014レビュー 国内外の既存資産活用事例と最新COBOL技術

Stephen Murdoch 氏

Micro Focus International plc
COO
Stephen Murdoch

エンタープライズ・アプリケーションのモダナイゼーションを支援するマイクロフォーカスは、2014年7月4日、東京コンファレンスセンター・品川において「COBOLフォーラム2014」を開催した。

開会挨拶に登場した英マイクロフォーカス COO(最高執行責任者) Stephen Murdoch氏は、“当社のミッションは既存技術と新技術の橋渡しにより、顧客の強みの源泉であるビジネスアプリケーションの価値を最大化すること”と語り、今後ともCOBOL領域でイノベーションを追求していくことを約束した。

今回のCOBOLフォーラムでは、基調講演に日本政策金融公庫 企画管理本部 IT部門 顧問 浅原泉氏が登場、Micro Focus COBOLを適用した超大規模なレガシーマイグレーション事例について語った。また、続く三つのセッションでは、マイクロフォーカスからその企業戦略や世界および日本のCOBOLユーザー事例、開発環境・実行環境製品の最新情報などが紹介された。

基調講演

オープン/ディファクトスタンダード技術を
適用した大規模レガシーマイグレーション
大規模な情報システム全体最適化プロジェクト、
標準ソフトウエアの一つにMicro Focus COBOLを採用
四つの金融機関統合で、情報システムの重複が課題に
浅原 泉 氏

株式会社日本政策金融公庫
企画管理本部 IT部門
顧問
浅原 泉

日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の四つの金融機関が平成20年に統合されて誕生した組織である。主たる業務は政府の政策金融に基づく融資業務および信用保険業務で、総融資残高や信用保険引受残高の総合計は52兆円に上る。

同社では、4機関統合当初、4種類13セットものメインフレームや、膨大な数のオープン系サーバーを所有していた。全体としてレガシーシステム化するとともに、機関ごとにIT文化とIT環境が大きく異なっていた。かつ、業務システムの機能には重複があり、全体として運用性・保守性及び投資面で数々の問題・課題があった。

そこで、経営トップは、最新のIT技術とアーキテクチャーの適用により、TCOの削減、ベンダーロックインからの脱却、運用性・保守性の向上、事務処理の合理化・効率化を図ることを決断。大規模な情報システム全体最適化計画が立ち上がることになった。

共通基盤構築で標準ソフトウエアの一つにMicro Focus COBOLを選定

この計画の核心は、情報システム統合の相乗効果を生み出すための基盤統一である。すべてのシステムの土台となる公庫共通基盤をプライベートクラウド環境として構築することを決定。そこでアーキテクチャーの統一化、オープン/ディファクトスタンダード技術や製品の適用、開発生産性や保守性向上のための開発技法、プログラミング言語の統一、経理・人事給与などの共通業務システムの統合、業務改善・改革が実施されることになった。

このなかで、統一されたプログラミング言語の一つがJava、もう一つがCOBOLであった。同社はCOBOL開発・実行環境として、比較検討の結果「Micro Focus COBOL」を採用した。

日本政策金融公庫 企画管理本部 IT部門 顧問 浅原泉氏は、選択の理由を次のように語った。「オープンシステム環境においてディファクトスタンダードであり、当社のほぼ9割に上るCOBOL資産を大きな変更を加えることなくマイグレーションすることができると見込めた。また長期的な保守展望があり、プロトタイピングによるCOBOLコンバージョンおよびJava-COBOL連携の結果を高く評価し、これを選択することが最善であると判断した」。

大半のプロジェクトでツールによる高い変換率を実現

この計画全体は平成22年度からスタート、具体的には大小10以上のプロジェクトからなり、一部は現在も開発が継続されている。浅原氏はそのなかで、既に本稼働に入ったシステムを含めてマイグレーション事例を紹介した。

例えば、ユニシスメインフレームとクライアント/サーバーシステムで構成されていたシステムを公庫共通基盤へマイグレーションした例では、ユニシス4GL LINCをいったんユニシスCOBOL2002へ、その後Micro Focus COBOLへ変換した。規模は約350万ステップで、ツールによる95%の変換率を達成した。現在、そのシステム環境は仮想サーバー約20台、物理サーバー5台に集約されて稼働している。

また、日立メインフレームとクライアント/サーバーシステム、Webアプリケーションシステムで構成されていたシステムをマイグレーションした例では、日立COBOL85やアセンブラをMicro Focus COBOLへ変換した。規模が約450万ステップと最も大きかったため、できる限りツール変換するという方針を取った結果、ツールによる99%以上の変換率を達成。こちらは仮想サーバー20台弱、物理サーバー5台という環境に集約される。

さらに、富士通メインフレームとオープン系システムのマイグレーションで、富士通COBOL85やNet COBOLをMicro Focus COBOLへ変換した例、NECメインフレームとオープン系システムのマイグレーションで、NEC ACOS COBOL85をMicro Focus COBOLへ変換した例なども紹介された。

浅原氏は講演の最後にプロジェクトを振り返り、「オープンスタンダード/ディファクトスタンダード技術・製品を全面的に採用して構築したプライベートクラウド環境へのマイグレーションである全体最適化により、運用コストがほぼ半減するなどのTCO削減、ベンダーロックインからの脱却、運用性・保守性の向上が実現し、設定したシステム化目標に対する評価は上々だ」と締めくくった。

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セッション1

海外のMicro Focus COBOLユーザー事例
既存システムと新技術の架け橋になるのがマイクロフォーカス
リリースから4年、世界で成功を収めたMicro Focus Visual COBOL
Scot Nielsen 氏

Micro Focus International plc
COBOL Product Manager
Scot Nielsen

続いて演壇に立った英マイクロフォーカス COBOL Product Manager Scot Nielsen氏は、2012年のCOBOLフォーラムにもスピーカーとして登場した人物である。そのときの同氏の役目は、「次世代のCOBOLアプリケーション開発向け製品」としてリリースした「Micro Focus Visual COBOL」の先進性を詳しく解説することだった。現在、この製品は大きく成功を収め、全世界で数百社、数十万ユーザーに上る導入実績を達成した。「おかげでこの2年は非常に忙しかった」と、同氏は誇らしげに語った。今回、セッションで同氏が焦点を置いたのは、世界におけるMicro Focus Visual COBOL活用事例の紹介である。世界の企業はこの製品を採用して、どのような効果を享受しているのか。

開発者の生産性が30%も向上したインドの物流会社

最初にNielsen氏が挙げたのは、インドのOM Logistics社だ。この企業はインドで唯一複合輸送の機能を持つ物流会社で、会計、レポート、倉庫管理、人事・給与といった基幹システムをCOBOLで開発していた。同社の情報システム部門では、次々と現場から上がってくるシステム要望、例えばモバイルシステムの開発などに手が回らず、迅速な対応ができないという課題を有していた。従来からMicro Focus Server Expressを活用していたが、モバイルおよびクラウド開発を推進するためにMicro Focus Visual COBOLにアップグレードした。その結果、開発者の生産性が30%も向上し、そこで生まれた余力をシステムイノベーションに振り向けることもできるようになったという。

「今日、IT予算に不自由しないという企業はほとんどなく、しかもその80%は現状維持のために使われている。しかし、開発者の生産性を改善すればIT予算はリバランスできる」と、Nielsen氏は語った。

保険料比較サイト対応を契機にシステム刷新を図ったドイツの保険会社

ドイツの大手保険会社の事例も、企業をとりまくビジネス環境変化を象徴しているものだった。その会社の保険システムはメインフレーム上で稼働していたが、外部の保険料比較サイトからシステム連携と厳格なレスポンス・タイム遵守を求められ、対応できなければそのサイトに参加できないという危機に直面した。そこで同社はサービス・デリバリーの改善のためRed Hat Linux環境へ移行し、JBossとVisual COBOLに搭載されている「COBOL for JVM」を利用。その結果、ピーク時7万件/時の保険料試算を処理できるまでのシステム性能とTCO削減を実現できたという。

このほかにもスペインのフェリー会社、イタリアのSI企業、ヨーロッパの大手スポーツカー・メーカーの事例などを紹介したNielsen氏は、COBOLフォーラム参加者に次のようにメッセージを送った。「こうした事例からもお分かりのとおり、弊社の製品は既存システムと新しい技術の架け橋になり続けるものだ。世界の先進ユーザーのようにMicro Focus Visual COBOLを活用してほしい」。

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セッション2

COBOL最新テクノロジーとマイクロフォーカス製品の紹介
JavaやC#の開発者にできることはCOBOLの開発者にもできる
「COBOL=レガシー」は迷信にすぎない
小林 純一 氏

マイクロフォーカス株式会社
技術部
シニアマネジャー
小林 純一

COBOLの誕生から今年で55年。長く存在するだけに、ちまたにはCOBOL=レガシーという迷信が存在することも事実である。しかし、マイクロフォーカス 技術部 シニアマネジャー 小林純一氏は、これに対し「COBOLには生き残った理由がある」と反論する。「産業界が仕様を決めてベンダーがそれを守る唯一の言語。だから息が長い。Javaや.NETでないと、と言われるが、これらは言語というよりフレームワーク。COBOLはこれらの上で利用可能で、統合開発環境(IDE)も日々進化しているため、開発生産性でもひけをとらない」。

リホストからモダナイゼーションに入るのが
無理のない流れ

COBOLの世界ではまた、リホストとモダナイゼーションという用語がよく使われる。小林氏はこれを改めて定義した。リホストとは、メインフレームなど運用コストが高止まりする環境からよりコストの低いIT環境へ移行することで、JCL、CICSなどソフトウエア・アーキテクチャーやユーザーインタフェースは従来どおり残す。一方モダナイゼーションは、ソフトウエア・アーキテクチャーやユーザーインタフェースなどもオープンシステム標準の環境に変えていくことだ。マイクロフォーカスの提案は、まずメインフレームからオープンサーバーへ置き換えることでいったんリホストし、次にモダナイゼーションによって、仮想化技術やクラウドなど最新技術を取り入れるという2段階の進化だ。こうすれば無理なく今という時代をキャッチアップできるという。

メインフレームの保険料試算プログラムが自在に変身

セッションの後半はデモによる解説が行われた。例に挙げたのは自動車保険料試算プログラムだ。小林氏はメインフレームのCOBOLプログラムを、EclipseのIDEで稼働するMicro Focus Enterprise Developer(Visual COBOLの上位製品)で展開。プログラム全体をアウトライン表示してターゲット行へすばやくアクセスできるアウトラインビュー、不要なプログラム部分を折りたたんで表示できるフォールディング機能などを利用しながら、まるでJavaや.NETのプログラマーと同じように生産性高く開発するさまを披露した。

さらに、このシステムのモダナイゼーションのデモを担当したのは、マイクロフォーカス 技術部 光富良裕氏である。今度はMicrosoft Visual Studio 2013のIDEで稼働するMicro Focus Visual COBOLを開き、スクロールバーなど同じく利便性の高い機能を活用しながら、この自動車保険料試算プログラムを.NET上のクラスライブラリとして変身させ、タブレット端末上で動作させた。

このほかバッチ業務についても、COBOLのデータファイルを活用、.NETの世界で帳票作成アプリケーション Crystal Reportsと連携して、グラフィカルな帳票を作成する様子をデモ。小林氏は「見ていただいたとおり、JavaやC#の開発者にできることはCOBOLの開発者にもできる。製品に磨きをかけ続け、顧客の投資を守りながら、それを最新テクノロジーの中で活用できるよう努力していく」と強調した。

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セッション3

基幹システム再構築ソリューションと国内のユーザー事例
まずはリホスト、そしてモダナイゼーションで変革を
まずはリホストによるTCO削減
中野 恭秀 氏

マイクロフォーカス株式会社
営業部
シニアマネジャー
中野 恭秀

日本企業の大半はITコストのバランスが取れていない。マイクロフォーカス 営業部 シニアマネジャー 中野恭秀氏はそう指摘する。企業経営者は、コストの削減や既存資産の有効活用、さらなる競争力強化をITに望んでいるのに、肝心の現場は予算のほとんどを現状維持のために使い、コスト最適化や未来に向けた投資が困難だというのだ。

しかし、例えばコストが高いからといってすぐにメインフレームを撤去することは難しくても、開発をWindowsやLinuxの上で行うクロス開発体制なら導入しやすい。開発者一人ひとりが占有環境を持てるため、開発スピードやテスト品質の大幅な向上が図れるのもメリットだ。さらに、リホストから入れば、TCO削減という目標は容易に実現できる、道はいろいろあると中野氏は語る。災害対策という形でリホストの費用を捻出するのも一つの方法である。遠隔地での業務継続を実現する名目でダウンサイジングしたリホスト環境を構築し、その後基幹システム全体のマイグレーションを考えるのである。UNIX系システムをWindowsやLinux環境にいったんリホストし、最終的にはクラウドへ移行するというアイデアもある。

ただしゴールはあくまでもモダナイゼーション

ただし、リホストは最終ゴールではなく、あくまで過程と中野氏は語る。それを自社の例を引きながら説明した。営業担当者として日々利用する顧客管理システムが、新しいサーバーに移行するからといってうれしくはない。それよりも、システム上に地図が表示されたり、モバイル環境で外出先から使えるようになったりしてこその変革だというのである。

「リホストは目的ではありません。TCO削減は実現するものの、システムとしては旧システムのまま。時間がかかっても最終的にはモダナイゼーションまで持っていく。10数年前はJavaや.NET環境との共存など私も半信半疑だったが、今ではもう当たり前。ここまで来て、システム本来の価値が陳腐化することなく持続可能になるといえる」(中野氏)

これが具体的に実現された事例として、同氏は日本NCRの銀行向け国際業務パッケージを紹介した。メインフレーム時代から評価の高い製品で、オープンシステム環境へリホストした後、大幅に機能強化したモダナイゼーション版をリリースした。この2回の移行の双方でマイクロフォーカスのCOBOL製品を採用。同パッケージは、自社で直接運用している銀行、大手システムインテグレーター運用の共同システムを利用している銀行を合わせて30数行で採用された実績を誇る。

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腕利きのソリューションプロバイダを活用して

中野氏はマイクロフォーカスソリューションプロバイダにも言及した。制度誕生から15年、顧客企業のシステム要望は仮想化技術やクラウドの活用など高度化しているが、専門知識と豊富な経験を持つパートナー企業がそろっており「オフショアでは不安が残る複雑なケースも彼らなら安心。ぜひ相談を」とフォーラム参加者に勧めた。

最後に、マイクロフォーカスビジネスパートナーであり今回のCOBOLフォーラムの協賛企業でもある日本マイクロソフトとレッドハットからのメッセージビデオが紹介された。

●日本マイクロソフトとレッドハットからのメッセージビデオはこちら

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