ITpro Special
週間WEEKLY ITpro Special ITpro

Windowsからオープンなクラウドへ転換 大きな可能性を持つ「OSSファースト」

Windows Server 2003のサポート終了を契機に自社のビジネス基盤であるIT環境を見直し、次期OSとしてオープンソースソフトウエア(OSS)のLinuxを検討する企業は少なくない。だが、単にLinux上にシステムを置き換えるだけでなく、OSSの持つ大きな可能性に注目したい。今やビジネスに欠かせないクラウドやビッグデータ、SNSなどの基盤はOSSがけん引しており、「OSSファースト」の時代を迎えているといえる。そこで、オープンなクラウドのプラットフォームを支える「OpenStack」や、コンテナ管理ツールとして注目される「Docker」を例にOSSの今と未来を考えてみよう。

Windows Server 2003のサポート終了を契機に自社のビジネス基盤であるIT環境を見直し、次期OSとしてオープンソースソフトウエア(OSS)のLinuxを検討する企業は少なくない。だが、単にLinux上にシステムを置き換えるだけでなく、OSSの持つ大きな可能性に注目したい。今やビジネスに欠かせないクラウドやビッグデータ、SNSなどの基盤はOSSがけん引しており、「OSSファースト」の時代を迎えているといえる。そこで、オープンなクラウドのプラットフォームを支える「OpenStack」や、コンテナ管理ツールとして注目される「Docker」を例にOSSの今と未来を考えてみよう。

新たなビジネス価値を生むためにOSSを活用

レッドハット株式会社
シニアソリューションアーキテクト
クラウドエバンジェリスト
中井 悦司 氏

Googleで検索する。Amazonで買い物やクラウドサービスを利用する。Facebookで情報交換する――。ビジネス、プライベートを問わずこれらのサービスを利用したことがない人はまずいないだろう。クラウドやビッグデータ、SNSなど先進的なIT技術を駆使したサービスを支えているのがOSSである。なぜ、これらの企業はOSSを使っているのか。

例えばGoogleは、ユーザーのリクエストに瞬時に応える巨大な検索エンジンを構築し、広告主から広告料を得るビジネスモデルを確立している。膨大な台数に上るサーバーやOSなどは既存製品だけでは対応できず、製品を購入していてはコスト面でも割に合わない。そこで、「自社で必要なパーツを集めてIAサーバーを作り、その上でLinuxを動かす。OSSなので自分たちでチューニングもできる。つまり、検索エンジンに必要なシステムを構築するのにIAサーバーやLinux、OSSは最適だったのです」とレッドハットの中井悦司氏は説明する。

IAサーバーとOSSのLinuxがシステム構築に最適な理由として、中井氏は「コモディティー化」を挙げる。単にコストが安いだけでなく、特定のベンダーに依存せず、自社に必要なスペックを選んで自由に使えることがコモディティー化の意義だという。「自社のビジネスに必要なシステムを自ら構築する企業にとって、OSSは最優先の選択肢になり、『OSSファースト』が当たり前の状況となっているのです」と付言する。

そして、レッドハットのパートナーである日立ソリューションズの吉田行男氏は次のように指摘する。「クラウドやビッグデータ市場において、単にコストを下げるためにOSSを使うのではありません。OSSでなければできないことがあり、新たなビジネスの価値を生むためにOSSを使っているのです。以前はデータベースにしても、まず製品があり、コストを抑えるためにOSSを開発していました。しかし、今はOSSが先を走り、製品が後追いするというように構図が変わっているのです」。

2010年代から「クラウド&モバイル」がシステムづくりの要諦となっている
[画像のクリックで拡大表示]

さらに俊敏なIT基盤へ。業界が注目するDocker

株式会社 日立ソリューションズ
技術開発本部
オープンソース技術開発センタ
主管技師
吉田 行男 氏

その象徴的な出来事といえるのが、商用ソフトウエアの販売をビジネスとするマイクロソフトがDocker社と提携、次期Windows ServerでOSSのDockerをサポートすると表明したことだ。Dockerは、コンテナ管理技術として注目されるOSSであり、レッドハットは2013年9月にいち早く提携を発表し、その後、GoogleやVMwareもサポートを表明した。

ここで、コンテナの概略について説明しよう。物理サーバー上で複数のアプリケーションが動作するのと同様に、コンテナは一つのOS上に複数のコンテナを設けて目的のアプリケーションを動作させる。仮想マシンごとにゲストOSとアプリケーションを設けるハイパーバイザー型仮想化に比べ、コンテナは起動が速く、集約度が高いといった特徴がある。以前は数日かかっていたサーバーの追加が仮想化によって1時間を切るようになったが、コンテナの追加なら1分以下で可能だ。

Linux標準のコンテナ技術は以前からあったが、「コンテナ内部のネットワークやディスクイメージの環境設定が煩雑で、あまり普及しませんでした」と中井氏は話す。こうした課題を解消するために開発されたのが、環境設定を自動化するDockerである。

Dockerイメージというファイルの中にアプリケーションのコードや実行環境、ネットワーク設定などの情報を盛り込み、コンテナに割り当てる仕組みだ。加えて、Dockerイメージを共有・配布するDocker Hubを用意。Dockerイメージを作成したエンジニアがHub(レジストリー)に登録。他のエンジニアが必要なDockerイメージをダウンロードして再利用することができる。

このDockerの仕組みをシステム開発現場で活用する例が増えている。開発チームの多数のエンジニアに同一の開発環境(Dockerイメージ)を配布するほか、「テスト環境にも同じDockerイメージを配布することで、バージョンなどの違いによるミスを防止できます」と中井氏はメリットを述べる。また、吉田氏は「Dockerイメージを開発環境やテスト環境で共有することにより、開発部門と運用部門が連携してシステム開発を進めるDevOpsが可能です。例えば、システム開発の工程でDockerイメージを利用し、顧客の要件に合っているかどうか確認してもらうといった使い方により、ミスを防ぎ、開発スピードを上げられます」と期待する。

そして、将来的には開発環境、テスト環境で使用したDockerイメージをそのまま本番環境に利用することを目指す。本番環境ではDockerやコンテナ技術の信頼性が重要になる。レッドハットは最新版の「Red Hat Enterprise Linux 7」(RHEL7)でDockerをサポートし、企業の利用を支援している。

Dockerの活用でスムーズなDevOpsが可能となる
[画像のクリックで拡大表示]

オープンなクラウド基盤として広がるOpenStack

OpenStackはクラウド上の仮想マシンやネットワーク、ストレージなどのリソースを効率的に管理するOSSとして注目されている。OpenStackはもともと、米ラックスペースホスティング社と米航空宇宙局(NASA)がスケーラビリティーのあるIaaS(Infrastructure as s Service)基盤を目指して開発を始めたOSSである。2012年に非営利団体「OpenStack Foundation」が発足。レッドハットはその主要メンバーとしてOpenStackの開発を推進している。

「現在はユーザーがマウスをクリックしたり、コマンドを入力することで、仮想環境を自動的に構成する仕組みですが、今後は人手を介さずにリソースの使用状況に応じて自動的に仮想マシンを増やすような、インテリジェントな利用方法も一般的になるでしょう」と中井氏は可能性を述べる。

そして、日立ソリューションズはOpenStackに関心を持つ企業の検証作業を支援している。「OpenStackに限らず、OSSの利点は海外、国内を問わず同じ技術、同じソフトウエアを利用できることです」と吉田氏は強調する。

一般に商用製品は購入先の国でしかサポートを受けられないが、OSSは日本のITベンダーを窓口にサポートを受けることも可能だという。サポート窓口の一元化により、「OpenStackはグローバル展開する企業のクラウドや、複数のクラウドを運用するグループ企業などにマッチしています」(吉田氏)。

日立ソリューションズとレッドハットはオープンなクラウド推進団体「OSCA(Open Standard Cloud Association)」のメンバーとして、OpenStack運用の検証を実施。クラウド基盤はサーバーやストレージ、ネットワークなどのコンポーネントを組み合わせて構築される。そこで、オープンなコンポーネントとOpenStackを組み合わせてきちんと動作するか検証する必要があるという。OSCAではレッドハットの商用OpenStack「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」を用いてプライベートクラウドを構築、運用する際の検証を行っている。

こうした取り組みを含め、OSSには様々なエコシステムが存在する。ビジネスに求められるクラウド環境の構築やOSS活用をエコシステムが支援し、「Windowsからオープンなクラウドへ」の流れを加速させている。

お問い合わせ
  • レッドハット株式会社

    セールスオペレーションセンター SOC
    TEL 0120-266-086
    URL http://www.jp.redhat.com/
    メールでのお問い合わせはこちら

    〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿4-1-18 恵比寿ネオナート