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Cloud Days 2015|Keynote 最先端ICTで変わる企業経営

ICT(情報通信技術)は今や企業経営に不可欠の存在だ。とりわけクラウド環境、ビッグデータ、スマートデバイス、セキュリティ、IoT(Internet of Things)は企業経営を根底から変える可能性を秘めており、活用法や今後の動向に注目する必要がある。日経BP社は2015年3月、それを探るため展示会とセミナーで構成するCloud Days 2015 Spring、BigData EXPO 2015 Spring、Smartphone & Tablet 2015 Spring、Security 2015 Spring、IoT Japan 2015 Springを大阪と東京で開催した。それぞれの分野で最先端を走るユーザー企業やIT企業の第一人者が集結し、ICTの最新動向や活用法について語った。

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最先端ICTで変わる
企業経営

ICT(情報通信技術)は今や企業経営に不可欠の存在だ。とりわけクラウド環境、ビッグデータ、スマートデバイス、セキュリティ、IoT(Internet of Things)は企業経営を根底から変える可能性を秘めており、活用法や今後の動向に注目する必要がある。日経BP社は2015年3月、それを探るため展示会とセミナーで構成するCloud Days 2015 Spring、BigData EXPO 2015 Spring、Smartphone & Tablet 2015 Spring、Security 2015 Spring、IoT Japan 2015 Springを大阪と東京で開催した。それぞれの分野で最先端を走るユーザー企業やIT企業の第一人者が集結し、ICTの最新動向や活用法について語った。

東京会場 会期:2015年3月12日、13日
会場:ザ・プリンス パークタワー東京(東京・芝公園)

他社に先駆けプライベートクラウド活用
経営陣にメリットを分かりやすく説明

日本たばこ産業
株式会社
IT部 次長/工学博士
藪嵜 清 氏

日本たばこ産業(JT)はプライベートクラウドの活用で最先端を走る。導入の検討開始は2009年。クラウド環境を本格的に導入する企業はほとんどなかった。翌2010年4月からプライベートクラウドを運用し、人事や会計、販売管理など約100種類に及ぶ業務システムの移行を始め、現時点では98%の移行が終わっている。

戸建てとマンションで説明

前例が少ないため、経営陣向けの説明資料一つとっても工夫した。クラウド導入のメリットを伝えるため、個別最適化されたシステム構成を一戸建てに、プライベートクラウド環境をマンションにたとえ、共益費の分担によってコストが安くなると説明した。

「個別最適のIT環境では運用コストが年々上昇していました。プライベートクラウドによって運用コストは削減でき、浮いた資金を戦略的なIT投資に回せるようになりました」。JTの藪嵜清氏はこう振り返る。

パブリックとオンプレミスの互換性を維持
単一環境下でのアプリの稼働、管理が重要に

VMware, Inc.
社長兼最高執行責任者
カール・
エッシェンバック 氏

「企業は、俊敏性や柔軟性を高めるためにクラウド環境の導入を進めていますが、オンプレミスとパブリックのクラウドプラットフォーム間の互換性を維持する必要性が生じています」。VMwareのカール・エッシェンバック氏はこう指摘する。同社のOne Cloud(ワンクラウド)のアーキテクチャーでは、既存と新規のあらゆるアプリケーションを共通のプラットフォームで稼働、保護、管理できるようになる。その実現に向けてVMwareが提案しているのがSDDC(Software-Defined Data Center)だ。

セキュリティ確保にも効果

もう一つの重要な要素がモバイル環境だ。従来個別に管理されていたため共通のセキュリティプラットフォームを構築できなかったデバイス、プロバイダー、クラウドデータセンターに対して、VMwareは一貫性のあるセキュリティソリューションを提供している。

成功事例が少なく実行に移せないIoT
クラウド利用でスモールスタートを

株式会社テラスカイ
代表取締役社長
佐藤 秀哉 氏
株式会社ウフル
代表取締役社長
園田 崇 氏
株式会社フレクト
代表取締役
黒川 幸治 氏

今のところIoT(Internet of Things)の事例は少ない。セールスフォース・ドットコムのクラウド環境を活用し顧客のIoTプロジェクトを軌道に乗せたテラスカイ、ウフル、フレクトの3社が成功の条件を語り合った。

テラスカイの佐藤秀哉氏は「ほとんどの企業は構想を練っている段階です。つくり込みには3カ月、長くても半年もかかりません」と話す。

実装作業は2~3カ月

ウフルの園田崇氏は「IoTはやってみないと分からない部分があります。クラウドで短期間に構築・検証してから横展開すべきです」と話す。フレクトの黒川幸治氏は「エネルギー企業のケースでは、企画を練る期間を含め約1カ月で構築できました」と振り返る。成功の条件はクラウド環境を利用したスモールスタートにある。

ロボットはホワイトカラーの仕事を間違いなく奪う
東大は無理だがある程度の大学には合格可能

国立情報学研究所
教授・
社会共有知研究センター長
新井 紀子 氏

「もしロボットが東京大学の試験に合格しなかったとしても、ホワイトカラーの仕事を奪うことは間違いありません」。こう警告するのは「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの責任者の国立情報学研究所(NII)の新井紀子氏。2010年末にコンピュータや人工知能が将来、ホワイトカラーの仕事を奪う可能性があるという認識を広めるため、「コンピュータが仕事を奪う」を上梓したが、話題にならなかった。そこで翌2011年に開始したのが「東ロボプロジェクト」だ。

ある程度の水準の大学には合格

新井氏は2021年までに東大に合格しないが、ある程度の知名度の大学には合格するとみている。「コンピュータがどこまでできるかを明確にしたあとは、人間とコンピュータとが一緒になって問題解決を図る際にどこまで到達できるのかを研究していく方針です」と新井氏は語る。

産業機器×センサー×ビッグデータ分析で
「インダストリアル・インターネット」を実現

日本GE株式会社
代表取締役社長兼CEO
熊谷 昭彦 氏

「ゼネラル・エレクトリック(GE)は、産業機器とセンサー、そこから得られるビッグデータを組み合わせて、お客様に役立つソリューションを導き出す『インダストリアル・インターネット』に取り組んでいます」。日本GEの熊谷昭彦氏はこう話す。主力事業の一つ、航空機エンジンでは、世界の航空会社で使用中のエンジンのデータを分析し、生産性の向上や故障の防止はもちろん、燃料消費を削減できる最適な航路を提案するサービスも提供し、成果を上げる。

トータルソリューションを提供

航空機エンジンに限らない。ガスタービン、風力タービン、オイル・ガス掘削機器、貨物列車、医療用画像診断機器といったGEのあらゆる産業機器に及ぶ。「製造・販売だけでなく、使い方まで含めたトータルソリューションの提供で、当社は未来を切り開いていきます」。熊谷氏はこう抱負を語った。

クラウド環境で変わる企業経営
販促活動の迅速化などに成果

神谷 勇樹 氏
株式会社すかいらーく
マーケティング本部 ディレクター
神谷 勇樹 氏
山下 じゅん子 氏
横河電機株式会社
コーポレート本部 YGSP部
山下 じゅん子 氏

すかいらーくはPOS(販売時点情報管理)のデータ分析と、会員向けモバイルアプリケーションのシステムや分析にアマゾンのクラウドサーバーサービスAWS(Amazon Web Services)を利用する。同社の神谷勇樹氏は「分析結果をメニュー開発に反映させ、販売数が伸びました。モバイルアプリも売り上げの増加に寄与しています」と話す。

顧客対応が迅速に

横河電機の顧客の多くは海外のため、ニーズに応えるために、コンテンツ配信WebサービスAmazonCloudFrontを利用して欧州や米国、アジアからのアクセスを高速化した。「顧客向けサイトではWebのトラッキング情報や様々なログを統合管理してアクセス解析。基幹系システムのデータも活用し、お客様へよりきめ細かいサービスの提供が可能になりました」と、同社の山下じゅん子氏は話す。

社員の多様性を重視する時代が到来
ホワイト企業はそれを受け入れられる

蟹瀬 誠一 氏
国際ジャーナリスト
蟹瀬 誠一 氏
青野 慶久 氏
サイボウズ株式会社
代表取締役社長
青野 慶久 氏

社員が働きやすくするにはどうすべきか。サイボウズが以前ブラック企業だったという国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏の指摘に対し、サイボウズの青野慶久氏は「以前の離職率は28%で、代わりの人材を採用・教育するとコストが合わず、社風の転換を決意しました」と認めた。そのための工夫の一つが男性の育児休暇取得率の向上。社長の青野氏が真っ先に実践した。「企業のトップが率先垂範しないと社内の価値観は変わりません」(青野氏)。

お金を使わなくてもホワイトに

「工場が経済の中心だった時代には均一の労働者が必要とされていましたが、今は優秀な人材を集めて離さない職場環境が大切でしょう」という蟹瀬氏の指摘に対し、青野氏は同意し「社員の多様性を受け入れられる会社がホワイト企業です。お金を使わなくても、ちょっとした気遣いで実現できます」と応じた。

大阪会場 会期:2015年3月5日、6日
会場:グランフロント大阪・ナレッジキャピタル(大阪・うめきた)

IoTで農機の状況などをリアルタイムで収集
故障の事前回避に加え農家の経営支援も

ヤンマー株式会社
経営企画ユニット
ビジネスシステム部
執行役員 部長
矢島 孝應 氏

農機、建設機械などを展開し、ヨット用のエンジンでは世界トップ級のシェアを占めるヤンマー。2012年に創業100周年を迎え、翌2013年からブランド力を高める「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」を開始。その一環としてIoTサービス「SMARTASSIST(スマートアシスト)」による顧客サービス強化を進めた。

全製品を1カ所で集中管理

具体的には、農機の状況などをリアルタイムに収集し、最適な状態で使用可能にするだけでなく、稼働状況や作業内容のデータを管理・活用し、作業改善や栽培計画の合理化・効率化を提案し、農家の経営をサポートする。

今年4月には、分野別だったリモートサポートセンターを一元化。「リモートサポートセンターを通じてヤンマー製品のお客様を支え、環境負荷の低い持続可能な社会づくりを支援していきます」。ヤンマーの矢島孝應氏はこう語る。

クラウド環境で短期、低コストの開発を実現
構築は3カ月で完了、予算は300万~500万円

IoTは製造業や小売業などの事業の進め方を根底から変える。IoT関連で実績を持つ3社が登壇し、事例を紹介した。

テラスカイは、様々な産業機器をインターネットに接続し、データの収集・監視するほか、小売店の電力消費量データを収集・モニタリングするサービスも構築した。構想に1年かかったが、構築は3カ月で完了した。

すぐにプロジェクトを開始

ウフルは、IoT関連では事業企画から実装までの支援、マーケティングサポートを提供する。自動車関連企業からの仕事が目立ち、予算は300万~500万円、サービス構築にかかる期間は2~3カ月だ。

フレクトは検針機器から収集されるデータを使い、消費者にプッシュ通信でエネルギーの使い過ぎを知らせるシステムを構築した。電力会社が検針機器をインターネットに接続していたが、システムとデータをどう活用していけばよいのか分からず、フレクトに依頼があった。

クラウド環境の構築ではSLA重視を
運用効率が上がり新規案件も容易に

大和ハウス工業株式会社
執行役員
情報システム部長
加藤 恭滋 氏

「クラウド環境の構築プロジェクトでは、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)が大切です」。大和ハウス工業の加藤恭滋氏はこう話す。

大和ハウス工業は2008年のデータ保管用共有サーバーのプライベートクラウド化を手始めに、様々なシステムを順次移行し、2014年末に内部統制関連システムをハイブリッドクラウドに切り替え、すべてのシステムをクラウド環境に移した。それによってインフラのコストが低減し、新規案件に着手しやすくなった。

IT部門主導でワークスタイル変革

クラウド環境を整備した現在、IT部門が主導してワークスタイル改革を進めている。対象は社内だけでなく、顧客や協力会社まで及ぶ。「働き方はITの活用で大きく変えられます。IT部門が音頭をとらないと、我々の存在意義はなくなってしまうのではないでしょうか」と加藤氏は訴えて講演を終えた。