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TOP Interview_オイレス工業 人に優しい免震・制振へ動きの“質”もコントロール

免震・制振装置のリーディングカンパニーであるオイレス工業は、積極的な研究開発を通じて独創的な製品を提供してきた。今後は建物の安全だけでなく、建物の中で生活する人の安心や、機能の維持による企業のBCP(事業継続計画)の実現という一段と高いレベルの技術を目指す。2020年に向けて技術の普及を担うトップの意気込みを聞いた。

――これまでの免震・制振技術に関する取り組みをお聞かせください。

オイレス工業株式会社
代表取締役社長
岡山 俊雄

岡山 当社は、昭和14年(1939年)に無給油の軸受を創業者が開発したのが始まりです。油をささずに物をスムーズに動かす技術は、摩擦・摩耗の研究から生み出されました。この技術は自動車や各種産業機械向けに発展していきましたが、一方で橋梁分野への応用を検討するなかで、動きを抑制することが機能として加えられました。

 気温の変化による部材の伸縮等に伴う緩やかな動きにはスムーズに追従し、地震や突風による急激な動きに対しては動きを抑えるという特徴は、当社の技術のルーツです。摩擦・摩耗に加えた抑制の技術はその後、建物にも応用されて、免震装置の開発に結び付きました。

 当社の免震装置は、一般的なデバイスでも使用されているゴムや鉛に、独自の滑りの技術を組み合わせていることが大きな特徴です。滑りをコントロールして、建物や橋梁ごとに最適な設計ができます。トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑)にダンピング(振動制御)を加えた技術は当社のコア技術です。軸受メーカーとして半世紀以上、研究してきた技術はどこにも負けません。

●オイレス工業の軸受技術が橋梁・建築業界にもたらしたイノベーション
トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑)とダンピング(振動制御)をコア技術として、自動車や産業機器等の機械のすべり軸受からスタートした。技術の発展とともに、橋梁等のインフラや建物の免震(アイソレータ)・制振へと進化している
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「人」を中心に据えた視点で異業種や他分野とも連携

――これからの技術開発はどのように考えていますか。

岡山 免震は当初、地震時に建物が壊れないことを目標としていましたが、建物の中にいる人が感じる恐怖を和らげることや、中の機械や設備を守るという点では、まだ開発途上です。大事なことは、中の機能を守ることです。

 揺れによって感じる恐怖は、加速度が大きな要因と考えられます。大きな揺れが来ても、建物の最初の動きを緩やかにコントロールできれば、恐怖心が和らぐかもしれません。乗っていて快適に感じる「スムーズな自動車の運転」のイメージです。

 これからの技術開発では、「人」を中心に据えた、ヒューマンオリエンテッドな視点が求められています。これまでの大量生産型の考え方では「物」が中心とされ、快適性よりも効率性が求められてきました。今後、社会的な弱者や高齢者の比率が増え、今まで以上に安全・安心が大きな課題となります。技術者は顧客視点を重視した新たなグランドデザインを作る必要があります。技術開発のターゲットを、東京五輪が開催される2020年とすると、1~2年のうちに完成域に達していなければなりません。

――技術者の視点の転換には現状、どのような課題がありますか。

岡山 日本の社会資本や生活を守ることを考えると、デバイスメーカーだけで技術者の視点の転換に取り組むことは難しく、技術の普及にも限界があります。当社が中心となって、異業種や他分野との連携、学会や行政との三位一体の対策を先導していきたい。そのための人材や設備は社内外に整っています。例えば、免震・制振装置の効果や有効性を数値できちんと示す取り組みによって、法規制の緩和や補助金制度の確立につなげて社会への普及をより促進させられるかもしれません。

――技術の普及に向けて、どのような働きかけをしていますか。

岡山 コストダウンをはじめ、レトロフィット(既存の建物への設置)を可能にする施工の簡便化、大小様々な形状の建物を想定した製品規格の多様化に取り組んでいます。

 中小規模の工務店や設計事務所に対して、免震装置を採用する垣根を取り払うことも必要です。免震装置を導入する場合、木造住宅等の四号建築物の確認申請が従来より難しくなったことも、ハードルが高い原因の一つです。当社では、工務店や設計事務所を対象に説明会を開催するとともに、一般のお客様も含め、免震・制振装置の有効性を知っていただけるように、実物大のモデルで効果を正しく理解してもらえる働きかけを進めていきます。制振装置を新築の戸建て住宅で採用した場合、家の揺れを抑えられるだけでなく、壁を減らした自由度の高い間取りの設計が可能になるメリットもあります。

「感応的」な評価基準で動きをチューニング

――街づくりの観点では、どのような取り組みをしていますか。

岡山 地震への対策として、建物が壊れないというだけでは人の生活は成り立ちません。水や電気、ガス、病院、学校等、社会資本全体でいかに備えるか。

 かつての「速く軽く動けばよい」という考え方は過去のものです。技術的に一歩進化して、「機械的」な評価ではなく「感応的」な評価が求められます。感覚を研ぎ澄まし、必要な性能を読み取り、数値化する。例えば、地震の揺れによって人が感じる恐怖感を数値化することで、構造的な「安全」の基準に加えて、心理的な「安心」の基準が得られるかもしれません。人に優しい技術とは、それによって実現される「動きの質のコントロール」だと考えています。建物やインフラごとに動きを「チューニング」することによって、人に優しい社会資本を築くことができます。

――最後にトップリーダーから読者へ、メッセージをお聞かせください。

岡山 我々は免震・制振技術のパイオニアだという自負があります。研究開発費に売り上げの8%程度を投入しており、免震・制振装置の本格的な普及に向けた活動を今後も継続していきます。

 当社の製品は、軸受、免震・制振装置、省エネ機器、建具等、いずれも摩擦・摩耗・潤滑と振動制御の技術に支えられ、人の住環境に対する快適性、安全・安心に対して効果を発揮するという点は、すべてに共通しています。今後も「人に対してどれだけ貢献できるか」ということを常に追究しながら技術や製品の提供を続けることが、パイオニアとしての責務だと思っています。

お問い合わせ

  • オイレス工業株式会社
  • 免制震事業部
  • 〒108-0075 東京都港区港南1-6-34 品川イースト6F
  • TEL.03-5781-0314/03-5781-0315(戸建て住宅用専用)
  • http://www.oiles.co.jp