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東京都下水道サービス 下水道技術が明日のビジネスを拓く

もしも下水道が機能不全に陥ったらトイレの利用もままならない。下水道のありがたさは、東日本大震災でも改めて示された。普段は無意識のうちにその利便に預かっているが、今後、首都東京の下水道施設は、本格的な維持管理の時代を迎える。そこで必要になるのが、様々な新しい技術だ。東京都内の下水道施設の維持管理などを手掛ける東京都下水道サービスは、現場に即した新技術を共同開発する民間のパートナーの登場を期待する。

通勤通学、あるいは出張や旅行で、東京都内を歩くとき、私たちは必ずと言っていいほどその“真上”にいる。現代生活に不可欠な「下水道」だ。東京23区には実に1万6000kmもの下水道ネットワークが張り巡らされている。東京とシドニーとを往復する長さだ。しかも、そのネットワークの機能は、人々が生活している限り、24時間365日、止まることが許されない。

小川 健一 氏
東京都下水道サービス株式会社
代表取締役社長
小川 健一

「常に目に見えないところで、当たり前のように機能しているので、その大切さを認識されにくいのが悩みです」。そう言って苦笑するのは、東京都下水道サービス(TGS)代表取締役社長の小川健一氏。同社は、東京都の下水道事業を補完・代行する企業として1984年に設立した。具体的には、下水道管の維持管理や水処理施設の保全管理、汚泥処理施設の包括的管理などの業務を担う。

普段は無意識に利用している下水道だが、維持管理の最前線に立つ同社は、確実に訪れる“次の時代”への備えを本格化させようとしている。今後、東京の下水道網は一気に老朽化し、これまでの「整備の時代」から「維持管理の時代」へと本格的に移行するからだ。「50年とされる耐用年数を経た下水道管は、現在は約1500kmですが、20年後には半分以上へと急増します」と、小川氏は言う。

その維持管理には様々な技術が必要だが、同社が今、期待しているのは、各分野の民間企業が持つ技術だ。

技術紹介01 無翼扇型送風機 ホールエアストリーマ(R)(HAST(R)) 異分野の技術で管路内の安全性・作業性を向上

下水道管の工事では、作業安全性を確保する換気が義務付けられている。従来の主流は、太いダクトで送風する方法だが、作業性や安全性に課題があった。それを解決したのが、長崎県のベンチャー企業、エビスマリンと共同開発したこの装置だ。コンプレッサから送る圧縮空気が、その約100倍の空気を導風することで、ダクトレスで安全な換気を可能にした。エビスマリン社が持つ水質浄化の水流発生装置を発展させたもの。建設業労働災害防止協会 2014年度「顕彰基金による顕彰」作品として、最優秀賞受賞。
TGS、東京ガス・エンジニアリング、イービストレード、エビスマリンの4者による共同特許(技術協力/静岡理工科大学)

参画した民間にも利がある 共同の技術開発をより充実

これまでにも同社は、実用化までのシナリオを描きながら、民間と共同で多数の技術を開発してきた。実績ある企業からベンチャー企業まで、その相手は多様だ。なかには下水道とは無縁だった企業の技術を、共同で下水道向けの新技術に発展させた例もある。

例えば、管路だけでも必要な技術は多岐に渡る。ひと口に管路といっても、太さだけで幾種類もあり、そこに流れる下水の質も違う。そんな多様な管路で必要とされる技術も、点検・診断から設計、補修・再構築の施工まで様々だ。

同社が単独で、そうした開発をするには限界がある。一方の民間も、多様な現場がある下水道関連の技術開発を、実用レベルまで引き上げるのは難しい。そこに、同社と民間がパートナーを組む意義がある。「当社の強みは、現場のニーズに適応した実用的な技術を、実際の下水道施設・設備を実証フィールドとして使いながら開発できる点にあります」と、小川氏は強調する。

袰岩(ほろいわ)滋之 氏
東京都下水道サービス株式会社
技術部長
袰岩(ほろいわ)滋之

下水道の難しさは、良い技術ならばすぐに採用できるわけではない点だ。「どんな技術も、公共調達のルールに則っていることが重要です。そのため、民間との共同開発では、その技術が公的に評価され、他の自治体などでも採用できるレベルまで一緒に取り組んでいくよう努めています」。同社技術部長の袰岩滋之氏は、そう話す。

民間からすると、共同開発に参画しても、東京都の下水道事業だけでは採算が合わない可能性がある。そこで、民間企業が、その技術を用いて他の自治体や海外でも事業を展開できるように協力し、双方がメリットを得られることを重視している。そのため、特許の取得などにも力を入れており、これまでの出願件数は430件を超える。

技術紹介02 SPR工法(R) 道路を掘り返さず、埋設管を内側から再構築

SPR工法(R)は、下水が流れた状態のまま、内側から管を再構築する技術。「プロファイル」と呼ばれる塩ビ製の太いテープ状の材料を、螺旋を描くように、すき間なく管の内側表面に施工していき、新しい管を形成する。地上の作業スペースはマンホール周辺だけなので、道路を掘り返すことなく、通行規制も最小限にできる。この工法は、開発後も現場のニーズに応じて発展を続けており、海外でも採用されている。2013年、第59回大河内賞「大河内記念賞」受賞。
TGS、足立建設工業、積水化学工業の3者による共同特許

企業の事業展開の後押しとして、社会的な評価を得ることにも力を入れる。先ごろ、東京都とメタウォーターとの3者で共同開発した下水道の「新たな高度処理技術」が、2014年(第24回)日経地球環境技術賞優秀賞を受賞したのも、その一例だ。 「社訓に掲げる『創意工夫と技術開発』のさらなる充実に向けて、多くの民間企業の方々と技術開発に臨んでいきたいですね」と、小川氏は期待する。

企業概要

行政経験と民間活力の「ベストミックス」「創意工夫」で
首都の下水道を支える

東京都下水道サービスは、東京都の行政ノウハウと、民間の資金と技術力のベストミックスによって、社会に貢献する株式会社として1984年に設立された。東京23区で総延長が約1万6000kmにもなる下水道の約9割の維持管理のほか、水処理後の汚泥処理など各種の業務を手掛ける。社訓に「創意工夫と技術開発」を掲げる通り、民間の知恵も積極的に採り入れて、維持管理の現場に即した実用的な技術開発を積極的に進めている。

|主な事業|
  • ■ サービス関連事業=管路維持管理、下水道受付センター、排水設備ほか
  • ■ 処理施設関連事業=水処理、汚泥処理、光ファイバーネットワーク施設管理
  • ■ 環境関連事業=再生水、汚泥資源化、建設発生土改良
  • ■ 再構築・改良支援事業=調査、下水道台帳情報システム、管路設計積算、工事監督補助

お問い合わせ先

ロゴ:東京都下水道サービス株式会社

東京都下水道サービス株式会社
〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-2
TEL:03-3241-0402
http://www.tgs-sw.co.jp/