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「売る」営業の数はそのままで訪問回数を増やす方法

【コラム】
社長が考える「失敗しないICTの使い方」
「売る」営業の数はそのままで訪問回数を増やす方法

企業経営にICT(情報通信技術)をどう使えばよいのか。失敗しないためにはどこに注意すればよいのか。北海道で問屋を営む現役社長がその勘所をお伝えします。30代の時コンピューター販売会社に出向し、プログラマーとSE(システムエンジニア)を務めました。経営のかたわら、業界団体でEDI(電子データ交換)の推進を長年担当しています。

著者紹介
津川 雅良(つがわ・まさよし)
北海道佐々木商会 代表取締役社長

1977年山田照明入社。1981年北海道佐々木商会入社、店舗配属。1984年メルコムビジネス出向、プログラマに従事。1985年2月7日三菱電機システム設計(オフコンコース)認定取得、1991年までSE(システムエンジニア)に従事。1992年北海道佐々木商会に戻り、現在に至る。業界団体の全日本電設資材卸業協同組合連合会(全日電材連)でEDI(電子データ交換)プロジェクトを担当。日経ビジネスオンラインに『目指せ「社長不要の会社」 会社つなぎ奮戦記』を連載。

 当社は電設資材(電材)の卸業です。電機メーカーから電気資材や電設資材を仕入れ、工事業者などに納めています。社員20数人の中小企業ですが、扱っている商品の点数は100万を超えており、得意先の数も多く、受注業務一つとっても大変煩雑です。

 商品知識が必要ですし、メーカーからも得意先からも、専用伝票や専用端末を使った処理を要求されます。人材採用は簡単ではなく、ベテランと若手がいて、中間が足りない構造です。中小企業とはいえ、営業、配送、経理といった業務ごとの縦割り組織になってしまいがちです。

 こうした状況で、仕事のやり方を工夫し、情報システムを利用し、なんとか生き残ってきました。利益を出すために経営者としてどう考えているか、お伝えしていきます。

 経営資源の三要素として「ヒト・モノ・カネ」が挙げられます。これらを使い切ることも、温存することも許されません。三要素をどのように増やし、使い、蓄えるのか。それを決めるのが経営者の役割です。

 経営資源の三要素を増やし、使い、蓄えるためには、いくつかの基本動作があります。本サイトのテーマになっている「利益を出す三箇条」、すなわち、「売る・減らす・守る」です。今回は「売る」ポイントに着目します。

 売るためにはまず、売り上げ目標を決めなければなりません。「去年いくらだったから今年はこれだけ」といった決め方では駄目です。合理的な裏付けが必要で、そのためには次のようにして目標を立てます。

・前年の何%アップではなく、得意先における自社占有率から算出する
・新規開拓にあたっては、前もって予定企業の信用を調査しておき、無駄な訪問を防ぐ
・3年間にわたって畑起し、種まき、刈り取りをスケジューリングする

 目標通りに売り上げを伸ばすにはどうすればよいでしょうか。訪問回数を増やすのが一番です。ヒトを増やすとカネが減るので、限られた人員で売り上げを増やさなければなりませんから、工夫が不可欠です。工夫せずに訪問回数を増やすと、営業担当者に疲労が溜まり、効率が落ちてしまいます。

営業が得意先を訪問できない理由

 営業担当者が得意先をなかなか訪問できない理由は何でしょうか。一番は、営業担当者とほかの社員とのやり取りに時間がかかることでしょう。得意先が担当者を指名して問い合わせをしてきます。担当者をつかまえないといけません。販売価格の調整を求められました。上司に判断を仰ぎ、決済してもらわないと得意先に回答できません。こういったことが沢山あるのです。

 この解決には、会社の全員が営業担当者に同行しているような仕組みが必要です。すなわち情報共有です。得意先の情報を営業担当者、事務担当者、上司、同僚ができる限り共有しておくことです。

 さらに共有の範囲を仕事のやり方や考え方にまで広げる、つまり業務の標準化が求められています。情報共有と業務標準化を両立できれば、個々人が自己判断することを防いで、お互いの理解と共感を深められます。

 これは、商談から受注、品ぞろえ、納品、請求、回収までの流れを把握して、誰でも、どのような問い合わせにでも速やかに回答できる仕組みを作ることを意味しています。それができれば「売る」ことに時間を集中でき、業績を拡大できるわけです。

 注文をいただいたときに、最初にする仕事が品ぞろえです。お客様の要望に沿わなければ、キャンセルされるかもしれません。受注と品ぞろえを同時にできる、あるいは忙しい時は品ぞろえしたあとに受注を処理できるような柔軟さが必要です。

 電子データ交換(EDI)によって、仕入先と情報連携ができれば、在庫の有無など問い合わせに要する時間を短縮でき、素早い品ぞろえが可能になってきます。これは「売る」に限りませんが、同じ情報を複数回入力したり、問い合わせに手間取るような仕組みは使えません。関係する人々が、常に机を並べて仕事をしているかのような共通の仕組みと情報と共有が求められています。

 情報共有と業務標準化のために、ICTは役立ちます。長年お使いの情報システムは以上のような仕組み作りに貢献しているでしょうか。「操作に慣れている」以外の長所が見当たらなければ、愛着ある中古車を新型車に入れ替える時です。従来の経営手法は通用しない時代に入っています。自社が休んでいる間でも、他社や他国のライバルは活動していますから。

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