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中堅企業のICT担当者がすべき「売る」「減らす」「守る」とは

【解説記事 特別編】
中堅企業のICT担当者がすべき「売る」「減らす」「守る」とは

日本経済の将来を考えた時、重要なのは中堅中小企業の発展だが、社員数が500人を超えた頃が節目になる。次の成長に向けて体制を整えていく際に、ICT(情報通信技術)の利用は不可欠であり、ICT担当者の責任は重い。企業経営の三箇条と言うべき「売る」「減らす」「守る」の取り組みについて、ICT担当者はどう進めていくとよいだろうか。

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)
日経BPビジョナリー経営研究所 上席研究員 兼 日経BPイノベーションICT研究所 上席研究員

1985年から日経コンピュータ誌の記者。日経ウォッチャーIBM版記者、日経ビズテック編集委員を経て、2007年から日経ビジネスオンライン、日経コンピュータ、ITproの編集委員。2009年1月から日経コンピュータ編集長。2013年1月から現職。一貫して経営や事業とITなどの技術の融合に関心を持つ。著書に『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』がある。プロジェクトマネジメント学会員、ドラッカー学会員。

 日本において中堅中小企業の数はもともと多く、各社がしっかり利益を出すことが求められている。一方で起業が期待されているが、生まれたての企業は当然、小企業であり、起業支援は中小企業の支援でもある。

 中堅中小企業の成長を考えると、社員数が500人を超えた辺りに壁があると言われている。創業者の力量や特定の商品に頼ってきた企業は組織運営や商品を見直す必要がある。それをせず従来のやり方を続けていても、さらなる成長はなかなか難しい。

 次の成長に向けて体制を整えていく際にICT(情報通信技術)の利用は不可欠であり、ICT担当者の責任は重大と言える。社員数500人を超える企業であれば専任のICT担当者を置いているはずだが、数十人規模の大きな部署まで設けることは難しく、ICT担当者は少数で数多くの仕事をこなさなければならない。

 これまで本解説記事において、企業経営の三箇条と言うべき「売る」「減らす」「守る」の取り組みについて、ICTを使う効果と利用例を概説してきた。今回は三つの取り組みをICT担当者がどう進めていくとよいか、考えてみたい。

求められる「ICTの棚卸し」

 「ICTの変化は速い」としばしば言われるが、変化の大半は要素技術についてでICT利用の勘所は変わっていない。ICT担当者が進めるべきは「売る」に役立つICT利用である。同時に取り扱う情報を「守る」。しかも一連のICT利用にかかる経費をできる限り抑える。そのために既存のICT費用を「減らす」必要がある。

 『人間でしかできない「売る」仕事をコンピュータで支援できるか』で説明した通り、「売る」ことに貢献するICT利用は一言でまとめれば「情報共有」である。営業現場や製造現場の情報を共有し、素早い活動ができるようにする。現場の一人ひとりに情報を持たせることになるから、情報保全の面から言えばリスクは高まり、セキュリティ対策は不可欠になる。

 ICT担当者としては予算を増やし続けて欲しいところだが、経営者としては応じにくい。このためICT担当者はICTにかけているお金を精査し、削れるものは削り、浮かせたお金を新しい取り組みに回すやりくりを余儀なくされる。

 少人数でこうした舵取りをしていくために、中堅中小企業のICT担当者がまずしなければならないのは「ICTの棚卸し」である。どのような業務処理をどのように行っているのか、自社の全体像を把握しなければいけない。片仮名で書けばアプリケーションポートフォリオとICTプラットフォームの確認である。仕様書や契約書がきちんと保存されていない場合、調べ上げるのは結構な手間になるが、これだけはICT担当者が自分でやるしかない。

 ICTの棚卸しは「減らす」に直結する。即効性があるのは不要なアプリケーションの利用を止めることだ。社員数500人超の企業になると相当量の業務処理アプリケーションソフトを保有している。ところが過去の経緯によって組織の構造や社員の役割が複雑になっており、それらを吟味してみると業務処理が重複していたり、かつては必要だったが今はまったく使っていないアプリケーションが含まれていたりする。

 止める決断は簡単にはできない。事業部門が嫌がるからである。中堅中小企業の小回りの良さを活かしてICT担当者が経営者や管理部門の責任者に相談し、意思決定してもらうことが望まれる。

「ネットワーク利用」をどう進めていくか

 止めることで浮いた費用を使って、「売る」につながる前向きなICT投資をするわけだが、どこに投資をするかを考え決めるためにもICTの棚卸しは不可欠である。

 理想はICTと同時に業務の棚卸しをして、重複する業務を整理あるいは標準化し、棚卸し後の業務を処理する新しいアプリケーションソフトを用意することだ。そのやり方の一つを本サイトで紹介した(『業務を可視化し全員で無駄取り、そのうえでICT利用を』)。

 ただし業務の改革と新アプリケーションの開発ないし購入はハードルが高い。もう少し導入しやすいところから手を付けるやり方もある。本解説記事で「売る」「減らす」「守る」のために挙げてきたICTの具体策をまとめると次のようになる。

【情報連携】
迅速な連絡、顧客情報の活用、拠点間の情報連携、遠隔監視、市場の声を聞く、電子受発注、サプライチェーン管理、ビジネスプロセス管理

【ツール整備】
動画の利用、テレビ会議、モバイル機器利用、情報セキュリティ対策、代替事業所やシステムの準備(バックアップ)

 前者がアプリケーション、後者がICTプラットフォームと大別できるが、要するに「ネットワーク利用」である。何かと何かをネットワークで結び、情報をやり取りできるようにする。

 ICTの世界で「第3のプラットフォーム」という言葉が昨今使われており、モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータを指すと言われている。これら四つは「情報連携」あるいは「ツール整備」のいずれかに入る。個々を見れば今までにない点があるものの、「売る」「減らす」「守る」といった三箇条から見ればさほど新しい話ではない。

 「ネットワーク利用」のなかには、かなりの業務改革を伴うものもあれば、それほどではないものもある。ICT担当者はICTの棚卸しをしたうえで、自社の状況に応じて、どこからどう手を付けるか、方針をまとめて経営者に上申することになる。

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