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経営課題解決シンポジウムReview_グローバル競争に勝ち抜く、IoT_製造業編 【PTCジャパン】

IoTが起こす競争優位性の地殻変動
製造業が勝ち残る秘訣とは?

IoTの進展によって、これまでの競争優位性が過去のものとなり、全ての製造業が変革を迫られることになる――PTCジャパンの成田裕次氏は、このように指摘する。あらゆるモノがインターネットにつながった環境において、製造業が勝ち残っていくための秘訣を同氏が解説した。

新しい競争優位性の尺度

PTCジャパン
ソリューション戦略企画室 執行役員
成田 裕次 氏

 製造業は現在、産業革命以来の大きな転換期に差しかかっている。「IoT(モノのインターネット)」の進展によって、競争優位性の捉え方が大きく変わる可能性があるのだ。

 あらゆるモノがインターネットを介して接続されるIoTの世界では、製品は純粋な物理的なコンポーネントから、CPU(中央演算処理装置)やセンサー、ソフトウエア、デジタル・ユーザー・インタフェースを組み合わせた複雑なシステムへと変貌する。さらに、消費者は製品そのものの性能・機能だけを評価するのではなく、その製品を活用するためのサービスまでを含めて、企業を選別するようになる。

 「IoTが進展すると、製造業にとって価値創造の源泉がハードウエアからソフトウエアに移行することになります。こうした環境へ向けての変革が、全ての製造業に求められているのです」。PTCジャパンの成田裕次氏は、このように説明する。

 欧米の製造業では、既に変革に向けて動き始めているところが多い。北米と欧州の大手企業を対象として、米PTCが実施した調査から、このような状況が浮き彫りになった。IoTに対する投資状況を聞いたところ、大半の企業が既に予算化しているという。

 中堅企業までを含めて製造業の多くがグローバル展開している日本でも、海外企業と伍して戦っていくためには、IoTの進展に向けた変革が必須だといえる。ただし、課題も残る。成田氏は「IoTへの取り組みは始まったばかりで、ROI(投下資本利益率)が見えにくいのが実情です」と指摘。その上で「小さく産んで大きく育てるような姿勢が現実解です」と主張する。

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製造業に変革を迫る7つの力

 それでは、変革に向けて何に取り組めばよいのか。これを明らかにするために、PTCでは製造業に変革をもたらす力を挙げている。具体的には次の7つだ。

(1)デジタル化
 アナログ的な情報によって製品やサービスを表現する時代から、設計・製造・サービスを網羅するバリューチェーン全体にわたり容易に活用できる、完全かつ正確な、バーチャルなデジタルデータの表現に置き換えていくこと。

(2)グローバル化
 IT(情報技術)の活用によって世界が相対的に小さくなり、経済的かつ地理的な差異が減少することに対応した、新しいグローバル市場を開拓していくこと。

(3)規制対応
 各国や地域の規則、非政府団体のポリシー、各産業界における環境、健康、安全、貿易等に関する標準や規制に順守、対応していくこと。

(4)パーソナル化
 個々の地域特性やユーザー個人の好みに順応し、適合した製品やサービスを効率的に作りあげられるようにすること。

(5)ソフトウエアによる製品の高度化
 ハードウエアとソフトウエアがシステム統合され、人と機械のスマートな連携を実現し、サービスデータの収集・診断といった付加価値を訴求し、各種機能を強化すること。

(6)製造業のサービス化
 製品単体での事業展開だけでなく、製品とサービスの組み合わせ型ビジネスに進化させながら、顧客のライフスタイルにしっかりと適応したサービス業の価値を、継続的に提供すること。

(7)接続性
 モバイル環境など、広範囲に広がったネットワーク環境において、組み込みセンサーの技術を駆使しながら、個々の状況をスマートにモニター、制御、通信して、状況を確認すること。

 これらの力を活用するためには、新たにコンピューターシステム上にアプリケーション(応用ソフト)を開発することになる。ERP(統合基幹システム)やCRM(顧客関係管理)などの既存のコンピューターシステム、開発やマーケティング、サプライチェーンなどの既存の業務プロセス、センサーやスマートデバイスから発信されるリアルタイムデータ――を連携させるようなアプリケーションである。「IoT関連のアプリケーションは一度開発したら終わりというわけではなく、新しい価値を創造するために、改修しながら仮説検証を繰り返すことが重要です」(成田氏)。

IoTアプリケーションでは「仮説-検証」のサイクルを実現することが重要
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継続的な変化に対するサポートが必須

 IoTの領域に限らないが、企業の変革には終わりがない。変わり続けられる企業だけが勝ち残っていけるのである。これは、ほとんどの業務がITに依存する現在、アプリケーションの開発・改修にも終わりがないことを意味する。成田氏は「急速に進化するIoTの領域では、環境の変化に追随できるように短期間でアプリケーションを開発・改修してシステムを成熟させていく取り組みが必要になります」と強調する。

 多種多様なアプリケーションを短期間で開発・改修するための最善の方法は、「アプリケーション開発プラットフォーム」(以下、プラットフォーム)と呼ばれるソフトウエアを導入することだ。プラットフォームは、データベース接続やユーザー・インタフェース、既存システム連携などのアプリケーションの基本機能をモジュールとして提供するとともに、アプリケーションの変更管理なども備える開発環境である。

 ただし、IoTアプリケーションの場合は、センサーが発信するリアルタイムデータを収集するなど、従来のアプリケーションとは異なる要件があるので、実際にプラットフォームを選定する場合には注意が必要だ。この点では、PTCが提供する「ThingWorx」は、もともとIoTアプリケーションに特化したプラットフォームなので、このような心配はない。

 PTCの実証実験では、ThingWorxを活用することで、ある特定のモデルの開発で実装期間が10分の1に短縮できたという。同社では、ThingWorxを「10倍のスピードで開発と展開ができるプラットフォーム」と位置づけている。

 実際、ThingWorxを利用して革新的なIoTアプリケーションを稼働させている企業がある。鉱山採掘機器メーカーの米ジョイグローバルは、ThingWorxを利用してIoTアプリケーションを開発。世界15カ所の採掘現場にある1000台の機械を1000個のセンサーから、計測間隔1秒以内でデータを収集するという他に例を見ないシステムを構築している。

 農業関連のクラウド・ファウンディングで資金調達に成功したことで有名な米オンファームも、ThingWorxを導入。農園のセンサーから気温や湿度、風速などのデータを収集するともに、栽培のアドバイスを提示するシステムを構築し、散水量を10%削減するなどの成果を上げている。

 もともと、PLM(製品ライフサイクル・マネジメント)をはじめとする製造業向けのソリューションを主力としていたPTCは近年、IoT関連のソリューション企業を相次いで買収するなど、IoTに大きく注力している。成田氏は、「製品やサービスを選定する際には、そのITベンダーが自社の適用する領域に積極的に投資しているか否かを見極めることが重要です」と指摘する。

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