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社会・環境報告書/CSRレポート ディレクトリ2014 Part2

これまで、日本企業が海外で実施する発展途上国支援といえば、ODA(政府開発援助)に関連したプロジェクトが多かった。それが最近は、現地のニーズを調査して自社の戦略と照らし合わせ、必要な地域に必要な物や技術を提供する小規模・分散型のプロジェクトが増えている。成功のポイントは、会社が得られるメリットをしっかりと検討し、ビジネスや企業ブランド価値の向上につなげていくところにある。

企業の国際貢献、特に途上国支援の形が変わろうとしている。かつてはODAにひも付く形で、途上国の都市部の環境を改善するためにインフラ整備を行う大型プロジェクトが多かった。だがこうしたケースでは、都市から離れた地方部の貧困地域は恩恵を享受しにくいのが実情だった。

ひと口に「途上国支援」と言っても、国や地域によって必要としているものは異なる。電気が通っていない村であればまず電気が必要だし、水の確保が難しい地域では安全な水を手軽に入手できる方法が求められる。つまり、途上国の、とりわけ貧困層に対する支援は、現地の実情を知り、ニーズを把握したうえで、個別に対応していくことが求められているのである。

企業のCSR活動の意識が変わってきたことも大きい。ただ単に資金を提供するだけではなく、どうすれば企業価値を高められるかをシビアに考えるようになってきた。現地のニーズをきめ細かく把握することによって新製品を開発し、本業の成長につなげようとする試みが広がっている。また、売り上げという数字には表れなくても、企業のイメージアップや社内の活性化、将来の顧客獲得やリクルーティングなど、長期的な視野で会社の利益に結び付けようという動きも目立ってきた。

NPOと協働して現地を調査 本業強化につながる取り組みを

ただし、途上国支援の形が多様化するなか、いくつかの課題も見えてきた。

「大手企業は現地に支店を開設している場合もあるが、そのほとんどは首都圏などの大都市に立地しており、貧困層が住む地域の現状にアプローチするには限界がある。現地のニーズをつかむといっても、ノウハウがなければ難しい」と、NPO法人コペルニクの共同創設者でありCEOを務める中村俊裕氏は実情を語る。

コペルニクは、途上国の生活改善に役立つテクノロジーを持つ企業と、資金を提供する支援者、そして支援先をコーディネートする現地NGO(非政府組織)などとのマッチングを行っている。言ってみれば、企業と途上国の橋渡し役だ。

「企業のニーズと貧困地域のニーズをうまくマッチングさせ、製品やサービスを現地に届ける仕組みをつくりたい。こうした仕組みが各地に生まれてきたことで、昨今は多くの日本企業が途上国に対して、小規模ながら現地のニーズに合った支援を行えるようになってきたと感じている。企業それぞれの戦略をベースに、本業強化へつなげる国際貢献が主流になっていくだろう」。中村氏は、企業の途上国支援の潮流をこのように見ている。

本業とCSRを結び付ける ストーリーづくりが鍵

コペルニクは日本航空(JAL)と協働し、東南アジアで特色ある途上国支援を行っている。

JALは経営破綻から立ち直ったタイミングで、CSRのあり方を一から見直すことにした。そのなかで、自らを日本各地を結ぶ、あるいは日本と世界を結ぶ航空キャリアであり、人と人とをつなげることがミッションであることを再確認したという。その結果、生まれてきたのが「人をつなぐ、世界を結ぶ。プロジェクト」である。

プロジェクトは3本の柱から成る。1本目が「JALテック・キャラバン!」。日本各地の企業や大学を巡り、途上国支援に力を発揮する技術や商品を発掘、紹介していく試みだ。地方には、途上国でのビジネスに興味があり、かつテクノロジーも持っている企業や大学が数多くある。彼らの途上国進出を支援することで、「日本と世界を結ぶJAL」の存在を世間に知らしめようという狙いだ。

2本目の柱は「JALチャリティ・マイル」。JALマイレージバンクの会員にマイレージを寄付してもらい、途上国支援に役立てる。2013年はインドネシアの小学校に浄水器を、今年はフィリピンの電気が通っていない地域の診療所などに太陽光で駆動するソーラーライトを届けた。

さらに3本目の柱として「JALテック・レポーター」の派遣を実施した。これは、公募した学生を「JALチャリティ・マイル」で支援した地域に派遣し、現地の様子をレポートしてもらう取り組みだ。寄付者に向けたフィードバックになると同時に、若者層の途上国への関心を高められる。さらに将来、JALの顧客となる若年層に対して、JALの社会貢献の理念や活動をアピールすることにもなる。

これらのプロジェクトには、事業部の枠を超えて多くの社員が関わっている。CSRを軸に社内の活性化を促していくのも大きな狙いのひとつだ。

大和証券は、途上国の子どもたちにワクチンを提供するワクチン債や、再生可能エネルギーなどの環境投資を促進するエコファンドを販売することで国際貢献を果たしている。2008年に国内初のワクチン債を販売して以来、途上国の女性起業家に対して金融サービスへのアクセスを拡充する「女性の力 応援ボンド」や、45億人の低所得者層を支援する「インクルーシブ・ビジネス・ボンド」など、国際機関や海外の政府機関などが発行する社会貢献型債券を次々に手掛け、同社の個人向けの累計販売額は2014年10月には6000億円を突破した。

小学生に国際貢献を教え 海外事業の拡大にも直結

ある大手通信教育会社は、教育という切り口で途上国を支援している。

同社が運営する通信教育講座では、小学生の受講者が課題プリントを提出するとポイントがたまる仕組みをつくっている。たまったポイントは文房具などの賞品と交換できるため、受講者はがんばって課題を提出するというわけである。それが今回、同社は海外チャリティーにポイントを寄付できる仕組みを用意したところ、多くの寄付が集まった。この寄付金でインドネシアの小学校に顕微鏡を届けることができたという。

同社は少子化によって国内市場に限界を感じ、海外事業を強化する方針を打ち出している。インドネシアは重要なターゲット国のひとつだ。今回の取り組みは、日本の小学生に国際貢献とは何かを教える、すなわち本業を生かしたCSR活動であると同時に、海外の未開拓市場において親近感・信頼感を獲得するという事業への貢献を果たした事例と言えるだろう。

自社ならではの国際貢献を成功させるにはどうすればいいのか。中村氏は次のようにアドバイスする。

「まずは会社としてのCSR戦略を明確にすること。その戦略をベースに、ターゲット地域に詳しく、理解し合えるパートナーを見つけて協働するのが近道だろう。自社の持つ戦略やテクノロジーをうまくストーリーに展開し、支援先との間でWin-Winの関係を築いていくことが大切だ」

会社規模の大小や業種は関係ない。今、多くの企業に国際貢献とビジネスを同軸に乗せるチャンスが開かれている。