「社員の創造力をどれだけ引き出すか」、それが企業の浮沈を決するという意識を持つ経営者が増え、働きやすい環境整備に注目が集まる。その実現のためには、ITが大きなポイントである。多様なユーザーを考えるなら、操作性とセキュリティーのバランスのとれたソリューションが今もっとも求められている。
新日鉄住金ソリューションズでは、顧客の基幹システムをクラウドで動かすシステムを10年近く手がける。これにアプリケーションの運用サービス、エンジニアリングをセットにして商品として提供している。
「2014年あたりからワークスタイル変革を意識する企業が増え、仮想デスクトップサービスに対する引き合いが活発になっています」と、新日鉄住金ソリューションズITインフラソリューション事業本部プロフェッショナルの新堀徹氏は指摘する。
背景にあるのは、景気拡大や人口の減少などにより、労働者人口が減っていく中、優秀な従業員の確保や主婦や高齢者などの潜在労働力の活用など労働力確保。
情報システム部の視点では2つ
ワークススタイル変革による端末管理の増加があり、大変
情報システム部の部員の減少 → 間接部門のスリム化
直接部門への人員のシフト
そのため自社のクライアント管理の負担が減る仮想デスクトップや、その延長線上にあるDaaS(仮想デスクトップのクラウドによるサービス)を使おうという動きが出ているのだ。
わが国のホワイトカラーの生産性は低いと言われている。生産性向上のため、業務を効率的にできる環境を整備したい。そのために仮想デスクトップを利用するというニーズもある。
さらにITの大衆化も大きな要素だ。個人がプライベートでスマートフォンやタブレットを持つ時代であり、個人の端末よりも会社のデバイスのほうが使い勝手が悪いという状態もよく聞く話だ。
仮想デスクトップを使えば、個人にとって使いやすい端末を利用できる。クラウドやコンシューマーITの利用、モバイルデバイス普及、非Windows端末普及といったクライアント環境の変化も、仮想デスクトップの増加を後押ししている。
クライアント環境の変化やワークスタイル変革の前提として、セキュリティーは必須である。使っているアプリのバージョンが古くなって、いつのまにかセキュリティーパッチが出なくなっていたというのも、よくある話だ。さらに情報漏えい防止策として、社内のシステムを社外システムと切り離したい。こうしたセキュリティー問題に対して、仮想デスクトップは有効な解決策となる。
経営者の求める社員の能力が、昔と今とでは大きく変化している。新しいビジネスを生み出したり他社とのコラボレーションで意義ある成果を出すために、これからの社員には創造性・発想力・企画力・思考力・積極性が、より求められる。
そうした状況であるのに、操作性の悪いシステム環境や申請書ばかり書かなければならない硬直したセキュリティー対策が周囲を取り巻いていては、社員はひたすら非効率なガマンを求められるばかりだ。これでは創造性や発想力など出てくるはずもない。
使いづらい環境の中で、仕事のファイルが送信できないなどという事態が起こりうる。そうなるとプライベートの共有ストレージに置いて関係先にビジネスファイルを送るといったシャドーITが横行し、企業のリスクが増大する。仕事のしやすい会社への転職により、人材喪失ということにもなりかねない。
利便性とセキュリティーの両立というのは、重要な問題だ。クライアント環境の新しい形である仮想デスクトップは、自由度、柔軟性、セキュリティーをバランスよくコントロールでき、ひとつの解決策となりうる。「かつて仮想デスクトップは高価でしたが、最近は価格が下がっています」と、新堀氏は仮想デスクトップが使いやすい環境になったことを訴える。
同社の仮想デスクトップサービス『M3Daas@absonne』(エムキューブダース・アット・アブソンヌ)は、ワークスタイル変革を促す多様なソリューションを提供する。
ここで、その導入事例をみてみよう。
ANA(全日本空輸)では、ANAグループに仮想デスクトップサービスを導入している。個人のデバイスを仕事に用いるBYODを実現しており、そのセキュリティー対策としても仮想デスクトップは有効としている。
丸紅では、アプリケーションだけを配信する「アプリケーション仮想化」という仕組みをBYODの環境で使い、セキュリティーを担保している。これにより海外出張を含む外出時でもオフィスにいるのと同様に安心して快適に仕事ができるため、業務効率が向上しているという。
「ワークスタイル変革は、仮想デスクトップさえあれば実現するというものではありません。ユーザーそれぞれの事情、環境を勘案して、システムインテグレーターは必要なものを補完する必要があります」(新堀氏)
たとえば端末管理ではChromebooks for Work、MDM(モバイルデバイス管理)ではXenMobileやMobileIron、ファイルサービスではSharefileなどのソリューションと連携して、オフラインでもある程度業務で使うことができる環境を構築するなど、ユーザーに適した環境をインテグレーターとして提案し導入している。
MDMの一例を挙げると、鉄道会社乗務員が持つiPad管理を、鉄道会社の関連会社へ導入している。個人が勝手にアプリケーションを入れるのを禁止したり、仕事中に見るのが不適切なサイトにつながらないようにしたり、アプリケーションを一斉に配信できるようにといった作業を、MDMで行っている。
「2015年5月に、端末管理ツールとしてGoogleのChromebooks for Workの販売を開始した。仮想デスクトップを導入する場合、入出力以外にたいした機能を持たないシンクライアントが検討の対象になるが、調べてみると意外に高くつくことが多い。かといって機能豊富な(ファット)PCを使っても、ウイルス対策や暗号化でコストがかかる。
Chromebooks for Workは、タブレットにキーボードをつけたイメージのChromebookとそれを集中管理するソフト(Chrome管理コンソール)を組み合わせたソリューションだ。Chrome管理コンソールは、Googleのクラウド上でSaaS型のアプリでインターネット経由で設定でき、効率的だ。端末動作は起動が早く、10秒以内に立ち上がる。セキュリティーについては、OS自体がセキュリティーを担保している。
インターネット経由で設定できるので、Chrome管理コンソールを使って端末に触らずに端末を管理可能だ。これは一種の専用MDMと見なすことができ、専用なので端末とシームレスに動く利点がある。また、Chromeストアのようなところにさまざまなアプリが用意されており、アプリを強制インストールしたり、内蔵Diskへの書き込み制御、USB制御、ユーザーデータ消去などの管理ができる。
仮想デスクトップは、通信事情の悪いところで使うことが難しい。Chromebooks for Workを利用することで、その場合、端末に一時的にデータを貯め込んで使う場合がある。セキュリティー上、使用後はデータを確実に消さなければならないが、Chromebooks for Workではユーザーデータを再起動時に消すといった設定もできる。こうすれば、端末は少なくとも一日一度は再起動するため、消し忘れの危険性は消える。
Chromebooks for Workはイメージ的には拡張したシンクライアントだが、管理コンソールの設定によってシンクライアントっぽくしたり、あるいはPCに近い状態で使うことが可能だ。支店や出張所などの端末として使う場合、インターネット経由で設定できるため、システム担当者が出張して設定するような労力が不要であり、開封すればすぐに使えるためメリットは大きい。
「ワークスタイル変革により働きやすい環境を作ることは、今後の企業競争に打ち勝つために必要なことです。その環境を作るため、私たちはよりよいツールを提供し続けます」(新堀氏)
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