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経営課題解決シンポジウム 製造業編 Review インターシステムズジャパン

インターシステムズジャパン

ビッグデータ、ERPの前に
それらを生かせる土台作りを

激変する外部環境に即応し、経営に役立つ情報システムが求められている。そのため経営陣はERPだビッグデータだと走りがちになる。しかしその前に、極めて重要なポイントがある。まず従来の資産を生かした上で見通しよく戦略決定できるような「システムのプラットフォーム」を検討することだ。

植松 裕史 氏
インターシステムズジャパン株式会社
代表取締役社長
植松 裕史

 ビッグデータ時代を迎えた昨今、ビジネス自体が大きく変化する中で、アプリケーションの変更がついていかない、データ量の急激な増大、データ信頼性などの課題が噴出してきている。その際の基本的な問題は、企業の中に業務ごとに独立したアプリケーションが存在し、相互に情報を共有できていないことだ。

 企業が市場で勝ち残るには、市場環境の変化とスピードへの対応がキーポイントになる。そのためには、経営に効果のあるITの仕組みをうまく使っていくのが大切だ。

 製造業でITというとすぐに、どこのERP(統合基幹業務システム)がいいとかビッグデータを扱うにはどのツールにすべきという議論になりがちだ。大局的に考えるなら、これは「いきなり各論」のレベル。考慮すべき順序が違う。

 自社のコスト構造にメスを入れるためどういう考え方で挑むのか、どのように実現したらいいのか。そのためのITとはどういうものなのか。大局観をもって状況をとらえて戦略を立ててから各論に進まなければならない。

 経営改善・改革は、突然変異で起こるのではない。場当たり的な作戦と根性論では、たとえV字回復しても後回しにしたツケによりすぐに下落してしまい、さらに悪い状態になる。大局的な判断に基づく戦略によりピンポイントに絞り、地道な努力が大切だ。

 「メーカーのコストの75~85%は、売り上げ原価が占めています。これに比べれば、販管費など残りの率は小さい。つまり経営上の効果を最大限に上げるには、原材料費の類の、売り上げ原価をまず第一に効率化すべき。そのためのITを構築することが重要です」(インターシステムズジャパン代表取締役社長 植松裕史氏)

 したがって製造業の場合、部品やそれを構成するユニットといったレベルの改革を支援するITに注力すべき。つまりPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)をもっと重視したほうがいいというわけだ。

「縦割りIT」の問題点が
経営判断に曇りをもたらす

 部品関連のアプリ、製品関連アプリ、工程関連アプリ、業務プロセス関連アプリなどと、PLMは密接に連携する必要がある。情報システムにおいては、データとアプリが大きな要素だ。使えるシステムであるためには、追加・修正・拡張がスピーディーに行え、可視化、柔軟性、永続性が担保され、ビジネスの変化にデータやアプリが対応できる仕組みが重要になる。

 しかし現状のシステムの多くは、そうなっていない。日本企業は人材が優秀で現場の力が強いため、効率化にも部門ごとの縦割りで取り組みがちだ。結果として、業務や部門ごとのアプリが発達し、それぞれのデータベースが構築された。業務が変更されるたびにプログラムの追加や変更が必要になり、新しいデータベースもどんどん追加されるので、やがて管理しきれなくなってしまう。

 システムが「記録を残す」だけでいい時代には、それでもよかった。しかし今はデータを活用・分析し、情報を見て経営に活用することが求められる時代だ。対応のため「データ構造を見直すこともできないまま、とにかく業務ごと、部門ごとのシステムをつないでいるのが実情」(植松氏)だという。

 こうなると、たとえ一部の更新でも、満足なテストもできないまま見切り発車という事態に陥る。個別に構築されたシステムを無理に接続しているので情報にバラつきが生じ、トラブルが多くなる。拡張が困難で動作が遅く、ユーザーにとって不満だらけのシステムになってしまう。実態と情報の乖離が進むので、経営者は間違った判断を強いられる。最終的には情報に不信感を持ってレポートを見なくなる。――こうした悪循環に陥りがちだ。

 業務・部門の壁を打ち破り、製品のライフサイクル全体での効率化、コスト削減を図り、外部環境の変化に即応して企業を変化させられる仕組みを作らなければならない。

 外部環境の変化という点で今日特筆すべき事項として、製品のコモディティ化(機能、品質に差別化特性がなくなること)の加速が挙げられる。デジタル技術進歩、製品のユニット化により、テレビ、パソコン、スマホなどが急速にコモディティ化している。自動車も電気自動車の登場により、既存の自動車メーカー以外でも製造できる時代が見えてきたとして、新規参入が相次いでいる。

「製品コモディティ化からの脱却は、至上命題です。そのためには、製品のライフサイクル全体を見て、上流工程の研究開発・製品企画、あるいは下流工程の製品に伴うモノとサービスといった付加価値の高い部分に、仕事の重心を移していかなければなりません。日本メーカーは、いかに作るかは熱心ですが、一般的には、何を作るかという戦略に欠けています」と、植松氏は主張する。

 世界の先進メーカーは何を作るかを追求し、大胆な戦略を打ち出している。アップルのiPhoneなどはその典型だ。卓越したデザインと性能の掃除機で脚光を浴びたダイソンは、羽根のない扇風機、明るさと色を長年保つLEDなど、これまで作ってきたものにとらわれず、新しい製品分野に挑んでいる。

IoT時代のITシステムでは
プラットフォーム戦略が最重要

 外部環境変化に即応して高付加価値製品を生み出す企業となるためには、IT基盤を見直す必要がある。現状の数多くの業務・部門のシステムは、やみくもにつないだ「スパゲティ」状態だ。得意先、仕入先それぞれに対して業務が付随している。そのため生産システムにも、得意先、仕入先それぞれに対してアプリ、データベース、何種類かのBOM(部品表)などが存在する混沌とした事態となる。こうしたシステムを、シンプルで誰が見てもわかりやすい状態に移行することがカギとなる。

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 すべてのものがインターネットにつながるIoT(Internet on Things)時代。部品の受発注、情報取り寄せなど、あらゆることがインターネットを介して行われるようになっている。業務プロセスの変化、BOMで扱う部品番号や部品構造の変化も激しくなっている。ビッグデータの分析・活用がしきりに言われるが、そのためには、その前に、まず使いやすいデータベースの整備が必要だ。

「そこで当社は連携基盤を介した接続をすることで、静的データベース、動的データベース、アプリケーション、業務プロセス、グローバルサポート機能(部品のトレーサビリティーをグローバルに確保し見える化しておくことで、品質、顧客満足度を担保)をシンプルにまとめた、IoT連携型システムを提案しています」(植松氏)

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 はじめにERPありきでシステムを作ろうとすると、問題が生じる。ERP自体が欧米企業のビジネスメソッドを元にしているだけに、日本の業務に沿わない面がある。となると自社に合わせて大幅にカスタマイズするか、業務をERPに合わせていくかになる。大幅なカスタマイズを施せば、ERPのバージョン更新のたびに、カスタマイズの対応困難など、問題が生じやすい。

 業務をERPに合わせることに熱心なあまり自社の強みが失われるようなことになっては、元も子もない。ERPをうまく使うには、ERPや業務が変化していっても大丈夫なように、プラットフォーム、つまりビジネスの土台をきっちりITで構築しておかなければならない。

 「現存する資産を捨てるのではなく、そうした資産を生かしながら激しい環境変化に対応できる仕組みを作る。そのためには、現有資産をプラットフォーム上に乗せることです。プラットフォームを介してアプリ間、データ間、データとアプリ間などの連携がやりやすくなる。そのことでERPへの対応も楽になるし、なにより経営陣にとって自社とビジネスが明確に可視化される利点が出てきます」(植松氏)

 そう強調して、植松氏はセッションを終えた。

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