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経営課題解決シンポジウム 製造業編 Review シンクロン・ジャパン

シンクロン・ジャパン

リーマンショックで脚光浴びた
保守部品事業をITがサポート

リーマンショック以降、一部の製造業では、売上の落ち込みが小さく収益性が高い保守部品事業に力を入れてきている。スウェーデンに本社を置くシンクロンは、この保守部品ビジネス(アフターマーケット)に的を絞り、部品の在庫管理、価格管理、オーダー管理などをSaaSベースで提供している。

落合 克人 氏
シンクロン・ジャパン株式会社
代表取締役社長
落合 克人

 リーマンショック以降、一部の製造業ではビジネスのあり方が変わってきている。一般的な売り上げをみると約85%は製品であり、アフターサービス系のビジネスである保守部品の売り上げは15%程度である。保守部品関連へのIT投資額も、その売り上げに準じて小さかった。

 「リーマンショック後の不況で、それまで脇役だったアフターサービス系ビジネスに光が当たることになりました。これまでも保守部品の利益率の高さは認識がありましたが、ここにきて、改めて収益の柱として期待が高まったのです」(シンクロン・ジャパン社長 落合克人氏)

 アフターサービスに力を入れると、顧客が逃げずにリピートしてくれる。ビジネスに継続性を持たせるにはアフターサービスがカギになると、メーカーはこの分野の取り組みを強化している。

 こうした環境変化を受け、IT投資についても見直されてきている。これまで、アフタービジネス系事業へのIT投資は絞っていた企業が多い。しかし、その状況ですら、これだけの収益が出ている。しかも不況が来たときにも強い。ならばこの分野にIT投資を積極的に行って効率化すれば、さらに収益を上げられるのではないか――という考えだ。

 ようやく、保守部品ビジネスが正当に評価される時代が到来したのである。

 売り上げを増大させコストを下げれば、収益は向上する。保守部品ビジネスにおいて売り上げを向上させるには、部品単価を上げるか機会喪失を防いで販売個数を増やすかだ。コスト削減には、仕入れ単価や加工単価、部品在庫の圧縮、労働生産性向上などが、非常に重要なポイントになる。

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 「保守部品分野でのIT投資額は小さく、市販表計算ソフトを使っているようなケースが多い。本来システムに任せられる作業にマンパワーを取られていて、販売戦略のような本来的な仕事に注力できない状態です」(落合氏)

顧客心理に従った
値決めのポイントとは

 保守部品の課題を、QCD(クオリティー・コスト・デリバリー)の面から見てみよう。

 クオリティーという点では、部品の価格品質という問題がある。顧客はメーカーの純正部品だけではなく、インターネットを駆使してあらゆる互換部品を探して価格を比較している。純正部品が高いと顧客に思われた瞬間、価格に対する信頼性は失われる。

 即納率も、クオリティーの大きな要素になる。顧客が部品納入を求めるときは、製品の部品が破損したり、部品の在庫がなくなったりという状態になっている。納入スピードは、顧客のビジネスに直結するのだ。

 コストの点では、メーカーにとって部品在庫が大きな問題になる。いかにして圧縮するかに加え、物流コストも問題だ。できるだけ物流コストのかからない在庫と配置を考えないといけない。労働コストに関しては、従業員ができるだけ効率的に仕事ができる環境を作ることが重要だ。

「デリバリータイムというと即納率にばかり関心が行きがちですが、情報の流れ、情報の伝わる時間が大切。タイムイズマネーなのです。たくさんのデータベースが林立して相互間の連携ができていなければ、必要の情報を必要なときに取り出せません。つまり、マネーを浪費しているのです」(落合氏)

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 価格の信頼性の問題について、さらに考えてみよう。

 たとえば乾電池の価格は、サイズで単1>単2>単3、内容的には二次電池>アルカリ電池>マンガン電池になっている。購買時にこの順序から外れた値付けがされていれば、消費者は価格設定に不信感を抱く。それと同じことで、メーカーの顧客は、それぞれの部品についての価値観をもっており、その価値に対価を支払っている。この顧客心理を理解した上で部品の価格を決定しなければならない。

 現在、価格を決定するとき多くの企業で原価積み上げ方式が採用されている。現実にはこれが顧客心理と合わないようなことが起こるのだ。

 油空圧機器の作動流体の漏れ防止などに使われる、Oリングというゴム製の部品がある。これを一例に考えてみよう。

 仮に、直径70mmのOリングが顧客に大量に売れているのでロットが大きくなり、原価が安くなったとしよう。原価積み上げ方式で価格付けをした場合、70mmのOリングは60mmや50mmの製品よりも低価格になる。小径Oリングを購買する顧客は、70mmの値付けを見て、自分は不当に高い製品を買わされていると不信感を抱くことになる。大径Oリングを買う顧客にとっても、70mmの製品より高いのはいいが、いくらなんでも高すぎると不満が高まる。

 販売現場ではこうしたクレームに対処するために、70mm以外を値下げして販売しなければならなくなる。原価積み上げ法により70mmを安く売ったばかりに、大きな逸失利益が生まれてしまう。

 つまり、この価格設定は間違っていたわけである。顧客心理に寄り添い、乾電池のように他条件が同じなら、リング径が大きくなるほど価格も高くなっていくように設定すればいい。そうすれば大量に売れる70mmの価格を原価比で高くでき、利益率向上にも大きく貢献する。

 「こうした逸失利益をなくすには、顧客の価値判断に沿い、不公平感が生じない値決めをする必要があります。膨大な数の部品についてこうした分析と値決めを行うため、シンクロンのグローバル価格管理ソリューションが使われています」と、落合氏は語る。

 たとえば日立建機を考えてみよう。売り上げの75%が海外で、厳しい環境下で使用され、部品供給に対する要求は厳しい。さらに中国製の互換部品も出回っている。こうした状況下でグローバル価格管理を導入して部品価格見直しを世界同時に行い、収益向上を実現している。

部品在庫を最適化する
ITソリューション

 一方、部品在庫を増やせば即納率が上がる。しかし在庫増はコスト増を意味する。即納率を上げながら在庫を圧縮するという二律背反の取り組みが、企業にとっては重要だ。そのために必要なのは、全部品に対する正確な需要予測と、それに従った最適な在庫配置計画である。

 需要予測としては、ライフサイクル概念の導入が有効だ。部品の売り出し黎明期、売り上げ伸長時、鈍化時、下降期、断続的にしか売れない期間、売り上げがなくなるときといった具合にライフサイクルのパターンを分けて見極め、それぞれのパターンを当てはめることで予測精度を上げていくのだ。

 在庫配置については、従来は中央倉庫にどの部品をどれだけ置くかという考え方のメーカーが多かった。現在はインターネットを使って各倉庫や代理店とつないで在庫状況をリアルタイムで確認できるので、だぶついた在庫を在庫不足の拠点に回すなど、柔軟な対応が即時に可能になる。

 マツダ・ヨーロッパでは、シンクロンの在庫管理システムを使うことで、欧州中央倉庫の部品在庫管理だけでなく、欧州各国の倉庫や代理店の部品在庫まで最適化し、サプライチェーン全体での部品だぶつき大幅減を実現している。

 「シンクロンのソリューション製品では、メーカーの保守部品分野という、ニッチだが収益を左右する分野の在庫管理、価格管理、オーダー管理に特化したシステムを提供しています」(落合氏)。このシステムは既存のERP(統合基幹業務システム)上に構築するので、既存の情報投資を捨てるのではなく有効活用できる特徴がある。システムに手を加える必要がそれほどないので、立ち上がりも早い。実際、同社では、100万部品を包括するシステムを、半年で立ち上げ稼動させているケースが一般的なようだ。

 保守部品ビジネス(アフターマーケット)分野は、IT投資におけるホワイトスペースであり、顧客企業にとっては、投資に対する大きな回収を見込める「最後のフロンティア」とも言えるだろう。

お問い合わせ先
シンクロン・ジャパン株式会社