日経ビジネスオンライン Special 軽井沢を愛した作家・堀辰雄の終の住まい

軽井沢を愛した作家・堀辰雄の終の住まい

軽井沢で恋に落ち、軽井沢で生涯を閉じた堀辰雄の作品は、ジブリの映画で有名になった「風立ちぬ」をはじめ、軽井沢を舞台にしたものが数多い。妻と人生最後の時を過ごした終の住まいは、堀辰雄文学記念館として公開されている。静かなたたずまいを見学に訪れる人は、今も絶えない。

床の間に川端康成の自筆の書 障子を開ければ浅間山の姿

母屋に近い庭の一角には茶室のような書庫を建てた。蔵書を分類し、ブックカバーを付けて準備したが、完成したのは死の10日前で、堀が使うことはなかった。

堀辰雄が人生の最後のひとときを過ごした「追分の家」は、軽井沢駅の西約9kmの信濃追分駅近くにある。現在は軽井沢町が譲り受け、堀辰雄文学記念館として一般公開している。

この住居は昭和26年夏に完成、堀夫妻は同年7月1日に入居した。

15坪ほどの小さな住居で、床の間をしつらえた四畳半が堀の居室になっている。床の間には川端康成が新築祝いに贈った自筆の書が掛けられている。床の間の脇の障子を開ければ、寝床からでも雄大な浅間山を一望できた。

堀の部屋に隣接した3畳間は、妻・多恵が使った。この部屋には1間半(2.7m)幅の本棚が据えられている。堀が求めた時、すぐに手渡せるようにとの多恵の配慮だったが、自分で好きな時に取り出せるよう、堀の部屋に置けばよかったと後悔したようだ。

この家のもう1つの特徴が、庭に面したサンデッキのような幅広の板の間だ。女優の高峰三枝子が堀に贈ったという籐椅子と机が置かれている。

堀夫妻の養女となった菊池和世さんは、「父の具合が良かった時には、籐椅子に母と私が座り、父は寝床で起きて文机に膳を置き、家族3人で食事をしたものです」と懐かしむ。つらい末期の闘病生活の中での穏やかな団らんが目に浮かぶ。

当初は夏の間だけ過ごす心づもりだったようだ。だが、入居早々の夏の間に多くの来客があったことや病状が重くなっていたことから、越年して過ごせるようにと、その年の秋までに6畳の茶の間と台所、風呂場を増築し、井戸も掘った。

新居で過ごした2年足らずの間は、創作活動も旅行もままならず、知人たちと数十通の手紙をやりとりしたのみだった。しかし、妻や友人に頼んで買い求めた本が次第に増え、前宅に置いたままだった書籍もあったため、夫妻は庭に茶室風の書庫を造ることにした。書棚は5段で書庫の2面を占めている。

この書庫が完成したのは堀が亡くなる10日ほど前だった。堀は寝たまま手鏡で見ただけだったという。

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