社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 総合トップ

社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 総論

未来につながるイノベーションを!
世界の知恵を集めて社会づくりを議論

会期を通じて日本の成長戦略についての講演が並んだ

人物の写真は左上から順に、
和泉洋人・内閣総理大臣補佐官
柏木孝夫・東京工業大学特命教授
寺島実郎・日本総合研究所理事長
初代国土強靭化担当大臣を務めた古屋圭司氏
日本創成会議の座長を務める増田寛也氏

撮影:中村 宏、清野泰弘、末松正義

 日本国内はもとより、世界中で「安心して、快適に暮らせる社会」を目指した取り組みが活発に進められている。スマートシティづくりは、その代表的なものである。

 「災害時でも安定的に電気が供給される」「安全な食品が過不足なく流通する」「どんな人も希望する場所へ、スムーズに、そして思い通りに移動できる」「災害時にはだれもが素早く避難できる」「若者も超高齢者も充実した暮らしを送れる」など、目指す社会像は多様だが、技術や制度、慣習、費用などのハードルがあって、必ずしも実現してこられなかった点は同じだ。

 そのハードルを乗り越えるべく、社会にイノベーションをもたらすには、従来はなかった新たな発想や技術、パートナリングが欠かせない。

 10月29日から31日にかけて横浜で開催した「社会イノベーション/Smart City Week 2014」は、未来を描こうと考える世界の企業や自治体が集まり、社会的な課題解決に向けて情報を発信・共有し、議論する国際会議・展示会である。アジアの新興国をはじめ、海外からの来場者も数多く、今回は66カ国・地域から約2000人を迎えた。

社会イノベーションが成長を導く

社会イノベーションにつながるアイデアや考え方についての講演もあった

写真左は英スペースシンタックスのティム・ストナー マネージングディレクター。街づくりにおける空間デザインの重要性を訴えた。右は米マターネットのアンドレアス・ラプトポロスCEO

マターネットが開発しているドローンを飛ばしている様子(パプアニューギニア、写真はラプトポロス氏の講演資料から引用)

 国内における社会イノベーションは、国の方針・戦略抜きには語れない。そこで社会イノベーション/Smart City Week 2014の基調講演では、会期を通じて日本の成長戦略に触れることを念頭に置いて講演を依頼した。和泉洋人・内閣総理大臣補佐官、柏木孝夫・東京工業大学特命教授、前国務大臣で初代の国土強靭化担当大臣だった古屋圭司氏、寺島実郎・日本総合研究所理事長という顔ぶれだ。

 和泉氏は、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」について、効果が得られていると説明。「改訂2014」により、今後は、国家戦略特別区域や健康・医療戦略、経協インフラ戦略を推進していくと述べた。

 再興戦略に含まれるエネルギー分野に関しては、「電力改革の経済波及効果が大きい」と柏木教授。「太陽光発電や燃料電池などの分散電源の普及を背景として、多様な電力取引が盛んになれば、キャッシュフローが生まれ、設備投資、そしてサービス開発への循環が生まれる」という。

 古屋氏は、「国土強靭化は従来になかった様々なビジネスを生み、経済成長に結びつく」とする。エネルギー確保のためのメタンハイドレート開発、東京一極集中を改善するためのリニア新幹線開発といったものだ。

 一方、寺島氏は、ものづくり(工業生産力)だけでなく、「目に見えないものの価値」を高めることが重要だと説いた。

自治体に”経営”のイノベーション

展示会場の様子

超小型EVの試乗のほか、社会イノベーション/街づくりに関連する展示が並んだ。ヘルスケア関連はベンチャーを含め多くの企業が出展。会場には、海外からの来場者も多く見られた

 新たな社会づくりに関しては、最近は「地方創生」という言葉がよく使われる。国内の地方都市は、その多くが急激な高齢化と人口流出・減少に伴い、税収減、医療費や資産維持費の増大に悩まされている。これらの課題解決は避けて通れない。こうした中、街の経営という視点を持ち、新たな取り組みを見せている自治体もある。そこで先進的な取り組みで知られる4自治体を招いた。佐賀県武雄市、浜松市、大阪市、北海道帯広市である。

 武雄市からは樋渡啓祐市長が登壇。街づくりの計画から実践、評価に至るまで徹底して数字を用いることが重要だと、”経営”の視点を語った。数字という点では、浜松市の事例も興味深い。同市では「資産がどれだけあり、どの程度の維持コストがかかるか」を把握できるよう、資産データベースを整備。これに基づいて保有資産の総量減を推進している。大阪市は、地域の地権者から一律に負担金を徴収して、その地区のインフラなどを整備、維持、管理するBID(Business Improvement District)制度の導入を進め、資金繰りを改善して街づくりに臨んでいる。異なるアプローチとして、産業振興の例を紹介したのが帯広市。帯広市を中心に19の市町村が連携して、農業と食のシリコンバレーのような産業集積地を形成しようとしている。

 各自治体の講演の後には、日本創成会議の座長を務める増田寛也氏が登壇し、「人口減少社会の設計図」と題して講演した。同氏は、人口減少にもっと危機意識を持つべきとしつつ、「日本が若返るチャンスでもある」「少子化対策と大都市一極集中対策を同時に推し進めることが必要だ」と説いた。加えて、都市機能の高度化とともに、複数のコミュニティをネットワーク化して付加価値を高めていくべきと、コンパクトシティのあるべき姿を示した。